高齢2型糖尿病患者における腎障害と臨床特徴



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31544221/ 

タイトル:Renal Status in Elderly Patients With Type 2 Diabetes

<概要(意訳)>

背景:

日本の高齢者における2型糖尿病の罹患率は、著しく増加している。本研究では、高齢2型糖尿病患者における腎機能を横断研究により調査した。

方法:

978人の高齢2型糖尿病患者を3つのグループに分類[グループ1(65歳未満)、グループ2(65-74歳)、グループ3(75歳以上)]した。

推定糸球体濾過量(eGFR)とACR(アルブミン/クレアチニン比)を測定した。

さらに、各グループの腎機能をCKD重症度分類[横軸:ACR、縦軸:eGFR]に当てはめて、3グループ間の違いを分析した。

結果:

2016年1月4日から2016年12月30日まで、診療所で治療を受けていた978人の2型糖尿病患者(男性:618人、女性:360人、平均年齢:66.7±10.8歳)が分析対象となった。

グループ1(65歳未満)は、366人(男性:265人、女性:101人、平均年齢:55.7±7.8歳、平均eGFR:83.3±22.8)が該当した。

グループ2(65–74歳)は、386人(男性:239人、女性:147人、平均年齢:69.2±2.9歳、平均eGFR:72.0±19.4)が該当した。

グループ3(75歳以上)は、226人(男性:114人、女性:112人、平均年齢80.2±4.2歳、平均eGFR:63.2±19.1)が該当した。

グループ1~3をCKD重症度分類のACR(アルブミン/クレアチニン比)により、A1(<30 mg/g Cr:正常)、A2(30–299 mg/g Cr:微量アルブミン尿)、A3(≥300 mg/g Cr:顕性アルブミン尿)に分類すると下記の分布となった。

グループ1(<65歳):A1(67.2%)、A2(23.2%)、A3(9.6%)

グループ2(65-74歳):A1(65.0%)、A2(22.5%)、A3(12.4%)

グループ3(≧75歳):A1(51.8%)、A2(34.5%)、A3(13.7%)

グループ1~3をCKD重症度分類のeGFR(mL/min/1.73 m2)により、G1(≧90)、G2(60-89)、G3a(45-59)、G3b(30-44)、G4(15-29)、G5(<15)に分類すると下記の分布となった。

グループ1(<65歳):G1(34.4%)、G2(53.6%)、G3(6.8%)、G4(3.8%)、G5(1.4%)

グループ2(65-74歳):G1(16.8%)、G2(58.5%)、G3(16.3%)、G4(6.5%)、G5(1.8%)

グループ3(≧75歳):G1(6.6%)、G2(51.3%)、G3(25.2%)、G4(12.8%)、G5(4.0%)

各グループの「A1 + A2(正常+微量アルブミン尿)、およびG3a + G3b + G4の患者」における臨床特徴の違いは、

グループ3の女性は、グループ1よりも有意に多かった(男性/女性の比率:34/38 vs 22/4、p <0.0001)。

グループ3の糖尿病罹病期間は、グループ1と2よりも有意に長かった(15.2±7.1 vs 10.4±4.8、p<0.0001、vs 12.7±6.0、p=0.0330)。

グループ3の網膜症の合併は、グループ2よりも有意に低かった(19.4% vs. 33.9%、p= 0.0041)。

グループ3の冠動脈疾患(CHD)の合併は、グループ1と2よりも有意に高かった(31.9% vs 11.5%、p=0.0256、vs 9.7%、p<0.0001)。

グループ3の脳血管疾患(CVD)と末梢動脈疾患(PAD)の合併は、グループ1よりも有意に高かった(22.2% vs 7.7%、p<0.001、11.1% vs 3.8%、p=0.0482)。

グループ3の大血管障害に該当する「CHD、CVD、およびPAD」の合併は、グループ1と2よりも有意に高かった(65.3% vs 23.1%、p<0.0001、vs 27.4%、p<0.0001)。

各グループの「A3(尿蛋白)、およびG3a + G3b + G4の患者」における臨床特徴の違いは、

グループ3の女性は、グループ1と2よりも有意に多かった(男性/女性の比率:11/12 vs 16/2、p<0.0001、vs 25/8、p=0.0013)。

グループ3の糖尿病罹病期間は、グループ1と2よりも有意に長かった(22.0±8.4 vs 14.9 ±5.9、p=0.0035、vs 12.8±5.7、p=0.0013)。

グループ3の末梢動脈疾患(PAD)の合併は、グループ1よりも有意に低かった(8.7% vs 22.2%、p=0.0417)。

網膜症、脂質異常症、冠動脈疾患(CHD)、脳血管障害(CVD)の合併は、3グループ間で差はなかった。

大血管障害に該当する「CHD、CVD、およびPAD」の合併は、3グループ間で差はなかった。

各グループの「 (A1+A2)+A3、およびG3a + G3b + G4の患者」における臨床特徴の違いは、

収縮期血圧は、グループ1(124.8±14.3 vs 143.0±17.7 mmHg、p < 0.0001)と2(129.4±11.5 vs 134.8±10.9 mmHg、p=0.0130)のA3(顕性アルブミン尿)よりもA1 + A2(正常+微量アルブミン尿)の方が低かった。

グループ3(≧75歳)のA1 + A2とA3の収縮期血圧に差はなかった。

網膜症と高血圧の合併は、全てのグループで、A3よりもA1+A2の方が有意に低かった(網膜症:11.5% vs 100%、33.9% vs 84.8%、19.4% vs 87.0%、p<0.0001、高血圧:57.6% vs 94.4%、66.1% vs 100%、72.2% vs 87.0%、p <0.0001)。

CHD(冠動脈疾患)の合併は、グループ2(65-74歳)のA3(顕性アルブミン尿)よりも、A1 + A2の方が有意に低く(9.7% vs 30.3%、p <0.0001)、

PAD(末梢動脈疾患)の合併は、グループ1(<65歳)と2(65-74歳)のA3よりも、A 1+ A2の方が有意に低かった(3.8% vs 22.2%、p=0.0242、3.2% vs 12.1%、p=0.0319)。

大血管障害に該当する「CHD、CVD、およびPAD」の合併は、グループ1(<65歳)と2(65-74歳)のA3(顕性アルブミン尿)よりも、A1+A2(正常+微量アルブミン尿)の方が有意に低く(23.1% vs 55.6%、27.4% vs 60.6%、p <0.0001)、グループ3(≧75歳)では差はなかった。

インスリン治療は、全てのグループで、A3よりもA1 + A2の方が有意に低かった(11.5%vs 44.4%、p=0.0155、17.7% vs 42.4%、p<0.0001、8.3% vs 39.1%、p<0.0001)。

結論:

日本における高齢2型糖尿病患者の腎障害は、「正常(A1)および微量アルブミン尿(A2)を伴うeGFRの低下(グループ1のA1+A2:90.4%、グループ2のA1+A2:87.5%、グループ3のA1+2:86.3%)を主な特徴としていた。 このグループの合併症は、最小血管障害よりも大血管障害が一般的であった。

タンパク尿(A3)を伴うeGFRが低下(G3a+G3b+G4)した患者は、細小血管障害と大血管障害の罹患率が高かった。

本研究結果は、今後の高齢2型糖尿病患者の治療に役立つだろう。

【参考情報】CKD重症度分類

https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD_evidence2013/gainenn.pdf 

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