PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32647915/
タイトル:Fasting blood glucose at admission is an independent predictor for 28-day mortality in patients with COVID-19 without previous diagnosis of diabetes: a multi-centre retrospective study
<概要(意訳)>
背景:
高血糖は、市中肺炎、脳卒中、急性心筋梗塞、外傷、手術等における死亡リスクの上昇と関連している。
本研究では、糖尿病の既往がないCOVID-19患者の空腹時血糖(FBG)と入院28日以内の死亡リスクの関連を調査した。
方法:
2020年1月24日~2月10日までに、中国の武漢に拠点を置く2施設の病院に入院した。
COVID-19患者の入院28日以内の死亡リスクと空腹時血糖値(FBG)を後ろ向きに調査した。
患者背景、検査データ、入院28日以内の臨床転帰、院内合併症、CRB-65スコアを分析した。
CRB-65は、市中肺炎患者の死亡率を推定するスコアで、「人・場所・時間の見当識障害、呼吸数(≧ 30 / min)、収縮期血圧(<90mmHg)または拡張期血圧(≤60mmHg)、年齢(≥65歳)」の4指標に基づいている。
結果:
糖尿病の既往がないCOVID-19患者605例(武漢ユニオンウエスト病院:448例、武漢赤十字病院:157例)が分析対象となった。
年齢の中央値は59.0歳(四分位範囲:47.0-68.0)であり、男性は322例(53.2%)であった。
288例(34.4%)は、1つ以上の基礎疾患があり、高血圧が最も多い併存症であった。
入院時の一般的な症状は、発熱、咳、倦怠感であった。
CRB-65のスコアは、0点:344例(55.2%)、1~2点:261例(43.1%)、3~4点:10例(1.7%)であった。
空腹時血糖(FBG)レベルで、3群に分類[<6.1mmol/l(<109.8 mg/dL):329例(54.4%)、6.1-6.9mmol/l(109.8-124.2 mg/dL):100例(16.5%)、≧7.0mmol/l(126mg/dL):176例(29.1%)]した。
入院28日以内の死亡は114例(18.8%)で、一つ以上の院内合併症は237例(39.2%)であった。
非生存者は、生存者と比較して、高齢(中央値66.0歳vs 56.0歳、p <0.0001)、男性(68.4%vs 49.7%、p=0.0003)、基礎疾患の併発(48.3%vs 31.2%、p=0.0005)の割合が多かった。
また、基礎疾患では脳血管疾患(6.1%vs 1.8%、p=0.0098)が生存者より非生存者の方が有意に多かった。
入院時のCRB-65スコア3〜4点、FBG ≧7.0mmol/lの割合は、生存者より非生存者の方が多かった。
多変量Cox回帰分析により、年齢(HR 1.02 [95%CI 1.00-1.04])、男性(HR 1.75 [95%CI 1.17-2.60])、CRB-65スコア1~2点(HR 2.68 [95%CI 1.56-4.59])、CRB-65スコア3~4点(HR 5.25 [95%CI 2.05-13.43])、FBG≥7.0mmol / l(HR 2.30 [95%CI 1.49-3.55])は、入院28日以内の死亡における独立した予測因子であった。
FBG<6.1mmol/l群と比較して、FBG 6.1~6.9mmol/l群(HR 2.06 [95%CI 1.20-3.54])とFBG≥7.0mmol/ l群(HR 3.54 [95%CI 2.33-5.38])の死亡リスクは高かった。
FBG 6.1〜6.9mmol/l群と比較して、FBG≥7.0mmol/l群(HR 1.72 [95%CI 1.05-2.84])の死亡リスクは高かった。
CRB-65スコア0点と比較して、1~2点(HR 4.35 [95%CI 2.81-6.72])と3〜4点(HR 13.80[95%CI 5.99-31.80])の死亡リスクは高かった。
CRB-65スコア1〜2点と比較して、3~4点(HR 3.18 [95%CI 1.46-6.89])の死亡リスクは高かった。
CRB-65スコア0点のFBGレベルにおける死亡リスクは、FBG<6.1mmol/l群と比較して、FBG 6.1~6.9mmol/l群(HR 3.42 [95%CI 1.51-10.19])とFBG≥7.0mmol/ l群(HR 6.57 [95%CI 2.65-16.27])の死亡リスクは高かったが、FBG 6.1~6.9mmol/l群とFBG≧7.0mmol/l群(HR 1.92 [95%CI 0.74-4.99])の死亡リスクに差はなかった。
CRB-65スコア>0点のFBGレベルにおける死亡リスクは、FBG<6.1mmol/l群と比較して、FBG≥7.0mmol/ l群(HR 1.99 [95%CI 1.24-3.20])の死亡リスクは高かったが、FBG<6.1群とFBG 6.1~6.9mmol/l群(HR 1.44 [95%CI 0.77-2.70])、およびFBG 6.1~6.9mmol/l群とFBG≧7.0mmol/l群(HR 1.38 [95% CI 0.77-2.48])の死亡リスクに差はなかった。
空腹時血糖レベルにおける院内合併症は、FBG <6.1 mmol/l:86例(14.2%)、FBG 6.1–6.9 mmol/l:48例(7.9%)、≥7.0mmol/l:103例(17.0%)であった。
FBG<6.1mmol/l群と比較して、FBG≧7.0mmol/l群(OR 3.99 [95%CI 2.71-5.88])とFBG 6.1-6.9mmol/l群(OR 2.61 [95%CI 1.64-4.41])の院内合併症リスクは高かった。
結論:
入院時のFBG≥7.0mmol/l(≧126mg/dL)は、糖尿病の既往がないCOVID-19患者の入院28日以内の死亡における独立した予測因子であった。
糖代謝異常を起こしやすいCOVID-19患者に対する血糖測定と血糖管理は、糖尿病の既往有無に関わらず、全てのCOVID-19患者にとって重要である。
コロナ禍において、入院時の空腹時血糖レベルは、COVID-19患者の臨床転帰を予測し、早期の血糖コントロールは予後の改善に繋がることが示唆される。
【参考情報】CUB-65のスコア別の死亡率と推奨される対応