心不全患者の併存疾有病率と予後の経時的変化



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32486833/

タイトル:Temporal Trends in Prevalence and Prognostic Implications of Comorbidities Among Patients With Acute Decompensated Heart Failure

<概要(意訳)>

背景:

心不全(HF)患者には、複数の併存症が共存している。

HFpEF(LVEF≧50%)患者とHFrEF(LVEF<50%)患者における併存症と死亡リスクの経時的変化は未だ明らかになっていない。

方法:

HF入院したARIC研究(アテローム性動脈硬化の原因を検討する試験)の被験者を2005年~2009年の前期集団と2010~2013年の後期集団に分類した。

心血管系の併存症(冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢動脈疾患、高血圧、心房細動、脳卒中/TIA、心臓弁膜症、肺高血圧)と非心血管系の併存症(肥満、糖尿病、慢性腎臓病、慢性気管支炎/慢性閉塞性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群、うつ、貧血、甲状腺疾患)を医療記録から抽出した。

HF入院1年間におけるHFpEFとHFrEFの死亡リスクを前期集団と後期集団で比較検討した。

結果:

2005年~2013年にHF入院した被験者の割合は、76%(16,594/21,866人)であった。

内訳は、女性53%、白人68%、HFpEF 47%、HFrEF 53%であった。

HFpEFとHFrEF患者の平均併存疾患数は、女性(5.53 vs 4.94; p<0.0001)と男性(5.20 vs 4.82; p<0.0001)ともに、HFpEF患者で有意に多かった。

HFpEF患者の平均併存疾患数の推移は、女性で5.17(2005–2009)から5.87(2010–2013)、男性で4.94(2005–2009)から5.45(2010–2013)と有意に増加していた。

HFrEF患者の平均併存疾患数の推移は、女性で4.78(2005-2009)から5.14(2010-2013)、男性で4.62(2005-2009)から5.06(2010-2013)と有意に増加していた。

併存症と1年死亡リスクにおいて、心房細動(p=0.003)と睡眠時無呼吸症候群(p=0.03)の併存症はHFpEFの死亡リスクの有意な増加と関連していたが、その他の併存疾患はHFサブタイプ間で同等であった。

HF入院1年後の死亡リスク[ハザード比:95%CI]は、全体集団においてHFrEF[1.10 :1.05〜1.14]よりHFpEF[1.19:1.14〜1.25]の方が高かった(交互p=0.02)。

HFpEFの死亡リスクは、前期集団[1.07:0.99-1.16]より後期集団[1.26:1.19-1.34]の方が高かった(交互p=0.002)。

HFrEFの死亡リスクも、前期集団[1.06:0.99-1.12]より後期集団[1.15:1.09-1.22]の方が高かった(交互p=0.02)。

結論:

HFpEFとHFrEFで入院した患者の併存疾患数は、経時的に増加していることが確認された。

死亡リスクは、HFrEFと比較してHFpEFの方が高く、前期集団よりも後期集団の方がさらに高くなっていた。

併存疾患の長期にわたる最適な管理が、心不全、特にHFpEF患者の予後を改善するかどうかを評価するには、今後の研究が必要だろう。

Circulation.2020 Jul 21;142(3):230-243

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