心不全入院の既往期間別における心不全患者に対するSGLT2阻害薬の効果



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36872213/

タイトル:Recency of Heart Failure Hospitalization, Outcomes, and the Effect of Empagliflozin: An EMPEROR-Pooled Analysis

<概要(意訳)>

背景:

ひとたび心不全で入院した患者は、再入院と死亡のリスクが高くなります。

早期治療は、患者の転帰に大きな影響を与える可能性がある。

本研究では、以前に心不全で入院したタイミング別に、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10mg/日)の転帰と効果を検討した。

 

方法:

EMPEROR-Reduced試験(追跡期間の中央値16ヶ月)とEMPEROR-Preserved試験(追跡期間の中央値26ヶ月)を組み合わせたEMPEROR-Pooled(追跡期間の中央値21ヶ月)には、9,718例の心不全患者が含まれていた。

以前に心不全で入院したタイミングは、「入院の既往なし、<3ヶ月、3-6ヶ月、6-12ヶ月、>12ヶ月」であった。

主要評価項目は、追跡期間における「心血管死または初発の心不全による入院までの期間」であった。

 

結果:

合計9,718例の患者が、本研究の分析に含まれた。

これらの内、試験登録前に心不全入院の既往がない患者は6,270例、3ヶ月以内に心不全入院した患者は1,050例、3-6ヶ月以内に心不全入院した患者は734例、6-12ヶ月以内に心不全入院した患者は736例(欠損値のある29例を含む)、12ヶ月以上前に心不全入院した患者は928例であった。

登録後30日以内に入院した患者は、275例(2.8%)のみであった。

 

心不全入院後から試験に登録された期間が短い患者は、より若く、男性が多く、アジア人が多く、LVEFが低く、NT-pro BNPが高く、心拍数が高く、血圧が低く、NHYA分類のIII度またはIV度が多く、心房細動と2型糖尿病の既往者が多く、ループ利尿薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)での治療割合が高かった。

一方で、試験登録の12ヶ月以上前に心不全入院した患者は、ACE阻害薬/ARB、およびβ遮断薬での治療割合が最も高かった。

 

プラセボ群における主要評価項目のイベント発生率(100人/年)は、心不全入院後から試験に登録された期間が短い患者ほど、高くなった。

試験登録の3ヶ月以内に入院した患者で26.7、3-6ヶ月以内に入院した患者で18.1、6-12ヶ月以内に入院した患者で13.7、12ヶ月以上前に入院した患者で2.8であった。

また、心不全入院の既往がない患者は、12ヶ月以上前に入院した患者よりもイベント発生率が高かった(10.6 vs 2.8)。

JACC Heart Fail. 2023 Feb 20;S2213-1779(23)00073-2

プラセボ群と比較したエンパグリフロジン群の主要評価項目(心血管死または初発の心不全による入院)イベントの年間絶対リスク減少(aARR:100人/年の差)と相対リスク減少(RR)は、それぞれ

全体:-2.7、0.77(0.70-0.84)

心不全入院の既往なし:-2.4、0.77(0.68-0.87)

試験登録の12ヶ月以上前に入院:-0.6、0.80(0.43-1.48)

試験登録の6-12ヶ月以内に入院:-0.8、0.93(0.68-1.27)

試験登録の3-6ヶ月以内に入院:-5.5、0.67(0.50-0.91)

試験登録の3ヶ月以内に入院:-6.9、0.73(0.59-0.90)

となり、心不全入院後から試験に登録された(最近の心不全入院)期間に関わらず、一貫していた(交互p=0.67)。

JACC Heart Fail. 2023 Feb 20;S2213-1779(23)00073-2

同様の傾向が、主要評価項目、全ての原因による死亡(全死亡)、複合腎イベントの各々で見られました。

薬物治療の中止につながる有害事象も、心不全入院後から試験に登録された期間が短い患者でより顕著であった。

 

結論:

最近、心不全で入院した患者(心不全入院後から試験に登録された期間が短い患者)は、イベントのリスクが高くなる。

SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)は、最近の心不全入院に関係なく、心不全イベントを減少させることが示された。

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