心房細動患者の抗凝固療法による出血イベントに対するフレイルの影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33504742/

タイトル:Impact of Frailty on Bleeding Events Related to Anticoagulation Therapy in Patients With Atrial Fibrillation

<概要(意訳)>

背景:

抗凝固療法は、高齢患者を含む心房細動(AF)患者の脳卒中予防の為に重要であるが、虚弱(フレイル)高齢者の抗凝固療法は差し控えられることがある。

しかしながら、脆弱性が出血イベントを増加させるかどうかは未だ分かっていない。

方法:

AFまたはうっ血性心不全の症状で入院した連続120例の非弁膜症性AF(NVAF)患者が本研究の対象となった。

脆弱性は、CHS基準[参考:Friedらの概念(表現型モデル)に基づく評価方法で体重減少、握力低下、疲労、歩行速度の低下、身体活動の低下の5項目から成る]を使用して評価した。

「ISTH基準(2g/dL以上のヘモグロビン減少、 2単位以上の濃縮赤血球輸血等)の大出血イベント」に関連するリスク因子を後ろ向きに分析した。

結果:

追跡期間(中央値518日)の間に、17例(14.2%)で大出血イベントが発生した。

出血イベントの内訳は、8例(44.4%)の消化管出血と2例(13.3%)の頭蓋内出血が含まれていた。

消化管出血の原因は、消化管血管形成異常(4例)、消化管憩室症(2例)、胃潰瘍(1例)、胃癌(1例)であった。

頭蓋内出血の原因は、硬膜下血腫(1例)と脳内出血(1例)であり、転倒によって引き起こされていた。

 

出血イベントの発生群と非発生群のベースライン特性では、出血リスクに関連する「抗血小板薬の併用、透析を必要とする腎疾患、大出血の既往、HAS-BLEDスコアなど」の要因に有意な差はなかった。

 

CHS基準(5項目)で評価した対象患者120例の内訳は、「非フレイル[0項目]:14例(11.7%)、プレフレイル[1-2項目]:72例(60.0%)、フレイル [3-5項目]:34例(28.3%)」であった。

 

Cox比例ハザードモデル(多変量解析)では、CHS基準のフレイル指数が唯一の大出血イベントの要因として特定された。

ROC曲線を使用すると、CHS基準のフレイル指数のカットオフ値は、2.00(感度49.4%、 特異度92.9%)となった[AUC(曲線下面積):0.68(95%CI 0.58-0.79)]。

 

CHS基準のフレイル指数<2[1/49例(2.0%)]を≧2[16/71例(22.5%)]と比較した場合、≧2の大出血イベントは、有意に高かった(p=0.015)。

 

CHS基準のフレイル指数<2と≧2における、2年間の大出血イベント非発生率は、それぞれ、97.6%(95%CI:83.9–99.7)と59.6%(95%CI:27.9–81.0)となり、有意な差が示された(p<0.001)。

 

また、CHS基準のフレイル指数≧2の患者は、<2の患者と比較して、「高齢、低体重、高血圧、冠動脈疾患、慢性腎臓病」の割合が有意に高かった。

 

CHADSスコア、およびCHADS-VAScスコアは、CHS基準のフレイル指数≧2の患者の方が有意に高かったが、2年間の血栓塞栓性イベント非発生率に有意な差はなかった[CHS<2:98.0%(95%CI:86.4–99.7) vs ≧2:96.9%(95%CI:88.3–99.2)、p=0.792]。

 

同様に、2年間の全死亡イベント非発生率にも有意な差はなかった[CHS<2:92.0%(95%CI:76.9–97.4) vs ≧2:75.7%(95%CI:50.0–89.5)、p=0.138]。

Circ J. 2021 Jan 27. doi: 10.1253/circj. CJ-20-0373.

結論:

心房細動で入院したフレイル患者は、抗凝固療法による出血イベントリスクの増加と関連していることが示された。

CHS基準のフレイル指数2以上のフレイル患者の抗凝固療法は、より細心の注意を払う必要があるだろう。

 

【参考情報】

フレイルとは:概念や評価法について

https://healthprom.jadecom.or.jp/wp-content/uploads/2018/04/cmed3204_312-320.pdf 

感度(sensitivity)・特異度(specificity)とは?

https://connect-clinicians.com/others/sensitivity-specificity/

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