メトホルミン単剤療法に追加したSU薬・DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬の効果比較



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31957254/ 

タイトル:Comparative effects of sulphonylureas, dipeptidyl peptidase‐4 inhibitors and sodium‐glucose co‐transporter‐2 inhibitors added to metformin monotherapy: a propensity‐score matched cohort study in UK primary care

<概要(意訳)>

背景:

イギリスの診療報酬制度にある業績払いは「Quality and Outcomes Framework(QOF)」、と呼ばれ、国が決める疾患の診療目標などの達成度に基づいて支給されている。

診療目標の達成度の結果は「Quality And Outcomes Framework」というホームページで公開される。

その為、動機付けされる2型糖尿病患者の血糖値、心血管リスク、腎機能に関するデータはプライマリケア医によって定期的に記録されている。

本研究では、傾向スコアマッチングにより、メトホルミン単剤の強化療法としてSU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の新規追加治療による心血管と腎リスクに与える影響を評価した。

方法:

イギリス臨床診療研究データリンク(CPRD)から、メトホルミンに新規追加されたSU薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の10,631人のプライマリケアデータを抽出して、傾向スコアが一致するコホートを作成し、線形混合モデルを使用して、HbA1c(IFCC値)、推算糸球体濾過量(eGFR)、収縮期血圧(SBP)、ボディマス指数(BMI)の各コホートにおける96週間の変化を記録した。

Diabetes Obes Metab. 2020 May;22(5):847-856.

結果:

メトホルミン単剤療法に追加したSU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の研究集団(N=10,631)の40%は女性であり、平均の年齢、BMI、eGFR、収縮期血圧は、それぞれ、60歳、33 kg/m2、89 mL/min/1.73m2、133mmHgであった。

全体の研究集団をeGFR(N=5,067)、HbA1c(N=5,392)、BMI(N=6,587)、SBP(N=7,958)の4つのサブコホートに分類した。

<HBA1c(IFCC値)の変化>

ベースラインの血糖値は、76~77mmol/mol(NGSP値:9.1~9.2%)であり、96週間を通じてメトホルミン単剤に追加した3剤の低下が認められたが、SGLT2阻害薬の血糖降下作用が一番大きかった。

12週における平均の血糖低下は、SGLT2阻害薬、SU薬、DPP-4阻害薬のそれぞれで、-5.2 mmol/mol、-14.3 mmol/mol、-11.9 mmol/molであった。

60週における平均の血糖低下は、3剤間で同等であった。

96週におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬との平均の血糖低下は、-5.4mmol/molであり、SGLT2阻害薬とSU薬との平均の血糖低下は、–1.7mmol/molであった。

<SBPの変化>

ベースラインのSBPは、134〜135mmHgであり、96週間を通じて低下が認められたのは、SGLT2阻害薬のみであった。

12週における平均のSBP低下は、SGLT2阻害薬、SU薬、DPP-4阻害薬のそれぞれで、-2.3 mmHg、-0.8 mmHg 、̠-0.9 mmHgであった。

60週における平均のSBP低下は、DPP-4阻害薬とSU薬では認められなかった。

96週におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬との平均のSBP低下は、-1.82 mmHgであり、SGLT2阻害薬とSU薬との平均のSBP低下は、-3.06 mmHgであった。

<BMIの変化>

ベースラインの平均BMIは、36〜37 kg/m2であり、96週間を通じてSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬での低下が認められた。

12週における平均のBMI低下は、SGLT2阻害薬、SU薬、DPP-4阻害薬のそれぞれで、-0.7 kg/m2、0.0 kg/m2、−0.3 kg/m2であった。

60週におけるBMIは、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬はベースラインからの低下が維持されていた。

96週におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬との平均のBMI低下は、-0.92 kg/m2であり、SGLT2阻害薬とSU薬との平均のSBP低下は、-1.67 kg/m2であった。

<eGFRの変化>

ベースラインのeGFRは、95 mL/min/1.73m2であり、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬は12週でのeGFR低下が認められた。

12週における平均のeGFR低下は、SGLT2阻害薬、SU薬、DPP-4阻害薬のそれぞれで、-3.1 mL/min/1.73m2、+0.5 mL/min/1.73m2 、-1.0 mL/min/1.73m2であった。

60週におけるeGFR低下は、各薬剤で、〜2 mL/min/1.73m2であった。

96週におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬との平均のeGFR低下は、-0.03 mL/min/1.73m2であり、SGLT2阻害薬とSU薬との平均のeGFR低下は、-0.78 mL/min/1.73m2であった。

Diabetes Obes Metab. 2020 May;22(5):847-856.

結論:

プライマリーケアの実臨床において、メトホルミン単剤の強化療法としてSU薬を追加するより、SGLT2阻害薬を追加する方が、「血糖値、体重、血圧などの心血管代謝リスク因子」に対する好影響が示された。

【参考情報】

イギリスの医療制度

http://famedkms.blogspot.com/2015/04/leeds1.html

HbA1cのJDS 値、NGSP値、IFCC値の換算表

https://www.nankodo.co.jp/download/S9784524262625_2.pdf 

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