SGLT2阻害薬かDPP-4阻害薬かの薬剤選択に対する判断材料



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32396236/ 

タイトル:Should Baseline Hemoglobin A1c or Dose of SGLT‐2i Guide Treatment With SGLT‐2i Versus DPP‐4i in People With Type 2 Diabetes? A Meta‐Analysis and Systematic Review

<概要(意訳)>

目的:

ベースラインのHbA1c、または選択するSGLT2阻害薬の用量が、DPP-4阻害薬に対する血糖低下作用の有効性を予測できるかどうかをメタ解析により調査した。

方法:

MEDLINE(1996-2019)、Cochrane Central Register of Control試験(CENTRAL)、EMBASE(1947-2019)、Web of Science、CINAHLのデータベースから、2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬を直接比較した無作為化試験を検索した。

最初の検索は2018年9月27日に完了し、2019年5月20日に更新した。

子供、腎障害患者(eGFR <60 mL/min/1.73m²)、試験中に用量の漸増を計画したSGLT2阻害薬、最大用量でないDPP-4阻害薬を含まれている試験は除外した。 また、レビュー記事、後ろ向き研究、編集者への手紙、会議の要約も除外した。

このメタ解析の主要評価項目は、「最大用量のDPP-4阻害薬と比較した、ベースラインのHbA1c別におけるFDA承認用量のSGLT2阻害薬との平均血糖低下の差」と「最高用量のDPP-4阻害薬と比較した、投与期間別におけるSGLT2阻害薬との平均血糖低下の差」とした。

FDAが承認した少量(通常用量)/高用量のSGLT2阻害薬は、「エンパグリフロジン10㎎/25㎎、カナグリフロジン100㎎/300㎎、ダパグリフロジン5㎎/10㎎、エルツグリフロジン5㎎/15㎎」である。

最大用量のDPP-4阻害薬は、「シタグリプチン100 mg、リナグリプチン5 mg、サキサグリプチン5 mg、アログリプチン25 mg」である。

結果:

ベースラインのHbA1c <8.5%のサブグループでは、低用量と高用量の組み合わせたSGLT2阻害薬[平均HbA1c低下-0.53%]と最大用量のDPP-4阻害薬[-0.57%]の血糖低下作用に、有意な差はなかった [平均差0.04%(95%CI:- 0.09%〜0.17%)];I²= 46%;図2)。

ベースラインのHbA1c≥8.5%のサブグループでは、最大用量のDPP-4阻害薬[平均HbA1c低下-1.24%]と比較して低用量と高用量を組み合わせたSGLT2阻害薬[-1.63%]の方が、有意な血糖低下作用があった[平均差-0.36%(95%CI:-0.53%~-0.18%)];I²= 45%;図2)。

ベースラインのHbA1c <8.5%とHbA1c≥8.5%のサブグループ間には、有意な差があった(p=0.0004)。

J Clin Pharmacol.2020 Aug;60(8):980-991.

ベースラインのHbA1cを<8.5%、≧8.5%に層別化した試験に限定した試験の分析では、

<8.5%の場合、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の間に血糖低下作用の有意な差はなかった[平均差-0.07%(95%CI:-0.07%~0.20%)];I²= 36%;図3a)が、

≧8.5%の場合、SGLT2阻害薬の方がDPP-4阻害薬より、有意な血糖低下作用があった[平均差-0.38%(95%CI:-0.56%~0.20%)];I²= 0%;図3a)。

この2グループ間には、有意な差があった(p<0.0001)。

ベースラインのHbA1cを<8.0%、≧8.0%に層別化した試験に限定した試験の分析では、

<8.0%の場合、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の間に血糖低下作用の有意な差はなかった[平均差0.01%(95%CI:-0.30%~0.32%)];I²= 63%;図3b)が、

≧8.0%の場合、SGLT2阻害薬の方がDPP-4阻害薬より、有意な血糖低下作用があった[平均差-0.31%(95%CI:-0.60%~-0.02%)];I²= 78%;図3b)。

この2グループ間には、有意な差はなかった(p=0.13)。

J Clin Pharmacol.2020 Aug;60(8):980-991

ベースラインのHbA1c<8.5%で、低用量(通常用量)のSGLT2阻害薬と最大用量のDPP-4阻害薬を比較した場合、血糖低下作用に有意な差はなかった[平均差0.13%(95%CI:0.01%~0.25%)、p=0.04];I²= 0%;図3c)。

ベースラインのHbA1c<8.5%で、高用量のSGLT2阻害薬と最大用量のDPP-4阻害薬を比較した場合、血糖低下作用に有意な差はなかった[平均差0.00%(95%CI:-0.15%~0.15%)、p=1.00];I²= 51%;図3c)。

ベースラインのHbA1c≧8.5%で、低用量(通常用量)のSGLT2阻害薬と最大用量のDPP-4阻害薬を比較した場合、低用量SGLT2阻害薬の方が有意な血糖低下作用があった[平均差-0.33%(95%CI:-0.49%~-0.16%)、p=0.0001];I²= 0%;図3c)。

ベースラインのHbA1c≧8.5%で、高用量のSGLT2阻害薬と最大用量のDPP-4阻害薬を比較した場合、高用量SGLT2阻害薬の方が有意な血糖低下作用があった[平均差-0.34%(95%CI:-0.58%~-0.10%)、p=0.006];I²=64%;図3c)。

J Clin Pharmacol.2020 Aug;60(8):980-991.

12~26週における、低用量(通常用量)SGLT2阻害薬と最大用量のDPP-4阻害薬を比較した場合、血糖低下作用に有意な差はなかった[平均差0.01%(95%CI:-0.05%~0.07%)、p=0.71];I²= 0%;図4)。

12~26週における、高用量SGLT2阻害薬と最大用量のDPP-4阻害薬を比較した場合、高用量SGLT2阻害薬の方が有意な血糖低下作用があった[平均差-0.11%(95%CI:-0.18%~-0.04%)、p=0.001];I²=40%;図4)。

52~78週における、低用量(通常用量)SGLT2阻害薬と最大用量のDPP-4阻害薬を比較した場合、低用量SGLT2阻害薬の方が有意な血糖低下作用があった[平均差-0.12%(95%CI:-0.23%~-0.02%)、p=0.02];I²=45%;図4)。

52~78週における、高用量SGLT2阻害薬と最大用量のDPP-4阻害薬を比較した場合、高用量SGLT2阻害薬の方が有意な血糖低下作用があった[平均差-0.24%(95%CI:-0.34%~-0.15%)、p<0.00001];I²=49%;図4)。

J Clin Pharmacol.2020 Aug;60(8):980-991.

結論:

SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者の血糖管理に有効な薬剤であるが、ベースラインのHbA1c≧8.0%では、SGLT2阻害薬を優先する方が有効かもしれない。

26週における血糖低下作用は、最大用量のDPP-4阻害薬と比較して、高用量のSGLT2阻害薬の方が有意であった。

52週から78週における血糖低下作用は、最大用量のDPP-4阻害薬と比較して、低用量(通常用量)と高用量ともにSGLT2阻害薬の方が有意であった。

これらの分析結果は、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の選択に対する判断材料として役に立つが、各薬剤のメリット、副作用、コストを含めた要因も考慮する必要があるだろう。

【参考情報】

コクランライブラリー

http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~ebm/cochrane_contents.htm 

研究間の異質性の評価法

https://www.slideshare.net/okumurayasuyuki/meta-analysis-okumura

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