実臨床における2型糖尿病患者の心血管転帰比較_SGLT2阻害薬 vs GLP-1受容体作動薬



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32591373/ 

タイトル:Cardiovascular outcomes of type 2 diabetic patients treated with SGLT-2 inhibitors versus GLP-1 receptor agonists in real-life

<概要(意訳)>

背景:

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病(T2DM)患者の心血管イベント抑制効果を示しているが、これらの心血管保護効果を直接比較した試験はない。

本研究では、実臨床データを使用してSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の心血管保護効果を比較した。

方法:

イタリア北東部の約500万人の住民を対象として、後ろ向きに調査した。

2014年~2018年にSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を新規で処方された2型糖尿病患者を特定し、傾向スコアマッチング法を使用して1:1に割り付けた。

主要評価項目は、「全死亡、心筋梗塞、脳卒中(3P-MACE)の複合」とした。

副次的評価項目は、「主要評価項目、心不全(HF)による入院、血行再建術、心血管系の原因による入院、有害事象」の各要素とした。

結果:

ヴェネト州に居住し、医療受益者として少なくとも1年間記録された、5,242,201例のイタリア市民から、糖尿病と診断された330,193例(6.3%)の患者を特定した。

その内、15,530例の患者がSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を新規で処方された。

2014年(イタリアでSGLT2阻害薬が最初の販売承認を受けた)より前に、GLP-1受容体作動薬での治療を開始した患者を除外すると、合計12 996例(SGLT2阻害薬:7,192例、GLP-1受容体作動薬:5,804例)となった。

傾向スコアマッチングにより、2つのグループの患者は各4,298例(追跡期間の中央値13ヶ月)となった。

SGLT2阻害薬の内訳は、「エンパグリフロジン(ジャディアンス)50%、ダパグリフロジン(フォシーガ)40%、カナグリフロジン(カナグル)10%」であった。

GLP-1受容体作動薬の内訳は、「デュラグルチド(トルリシティ)48%、リラグルチド(ビクトーザ)34%、エクセナチド(バイエッタ、ビデュリオン)14%、リキシセナチド(リキスミア)4%」であった。

 

ベースラインの患者特性は、「平均年齢(63歳)、男性(64%)、糖尿病罹病期間(9.5年)、高血圧(82%)、脂質異常症(75%)、CVD有病率(18%)、血糖降下薬(平均2.3剤)、メトホルミン(89%)、インスリン(29%)」であった。

 

GLP-1受容体作動薬と比較したSGLT2阻害薬の「3p-MACE(全死亡・心筋梗塞・脳卒中)」のハザード比は、

HR 0.78(95%CI 0.61-0.99)、p=0.043

GLP-1受容体作動薬と比較したSGLT2阻害薬の「心筋梗塞」のハザード比は、

HR 0.72(95%CI 0.53-0.98)、p=0.035

GLP-1受容体作動薬と比較したSGLT2阻害薬の「脳卒中」のハザード比は、

HR 0.91(95%CI 0.56-1.48)、p=0.707

GLP-1受容体作動薬と比較したSGLT2阻害薬の「全死亡」のハザード比は、

HR 0.74(95%CI 0.43-1.29)、p=0.291

GLP-1受容体作動薬と比較したSGLT2阻害薬の「心不全による入院」のハザード比は、

HR 0.59(95%CI 0.35-0.99)、p=0.048

GLP-1受容体作動薬と比較したSGLT2阻害薬の「血行再建術」のハザード比は、

HR 0.89(95%CI 0.60-1.32)、p=0.557

GLP-1受容体作動薬と比較したSGLT2阻害薬の「心血管系の原因による入院」のハザード比は、

HR 0.82(95%CI 0.69-0.99)、p=0.037

となり、「主要評価項目(3p-MACE(全死亡・心筋梗塞・脳卒中)」のイベントリスクは、SGLT2阻害薬の方がGLP-1受容体作動薬よりも有意に少なかった。

また、「副次評価項目」では、「心筋梗塞、心不全による入院、心血管系の原因による入院」のイベントリスクがSGLT2阻害薬の方がGLP-1受容体作動薬よりも有意に少なかった。

また、CVD(心血管疾患)の既往有無においても一貫した効果が示された。

有害事象は、2つのグループ間で有意な差はなかった。

BMJ Open Diabetes Res Care. 2020 Jun; 8(1): e001451

結論:

実臨床における観察研究では、2型糖尿病患者の心血管アウトカムの改善効果は、GLP-1受容体作動薬よりもSGLT2阻害薬の方が高いことが示唆された。

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