日本人2型糖尿病患者の遊離脂肪酸とケトン体に対するSGLT2阻害薬の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31444706/ 

タイトル:Effect of Empagliflozin on Free Fatty Acids and Ketone Bodies in Japanese Patients with Type 2 Diabetes Mellitus: A Randomized Controlled Trial

<概要(意訳)>

背景:

日本人2型糖尿病患者の遊離脂肪酸と血中ケトン体に対するSGLT2阻害薬の影響を調査した無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験を報告する。

方法:

スクリーニングされた78例の内、60例の日本人2型糖尿病患者(ベースライン特性:平均HbA1c 7.91±0.80%、BMI 24.3±3.2kg/m2、年齢 20-74歳、eGFR≧60 mL/min/1.73 m)が、通常用量のSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日、20例)、高用量のSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン25㎎/日、19例)、プラセボ(21例)に割り付けられ、28日間投与された。

 

50〜60%の炭水化物、15〜21%のタンパク質、21〜35%の脂質を含む食事が標準体重に基づき(1440、1600、1840 kcal /日)提供された。

食事は1日3回(朝食9時、昼食13時、夕食18時)を治験薬の投与前日(-1日)、当日(1日)、28日目にかけて摂取された。

 

治験薬は、1日目~28日目にかけて、朝食の1時間前(8時)に投与された。

遊離脂肪酸(補足:代替えエネルギー源としてケトン体は主に肝臓で遊離脂肪酸を基質として生成される。腎皮質でも一部生成される)と血中総ケトン体(アセト酢酸、3ヒドロキシ酪酸)は、各食事(9時、13時、18時)の前と食後1、2、3時間後、および翌朝8時(空腹時)に測定された。

 

主要評価項目は、「28日目の朝食3時間後の血糖曲線下面積(AUC1-4h)の変化、食後血糖値変化の追加測定、空腹時血糖、食後インスリンの曲線下面積(AUC)、29日目の空腹時(朝8時)に測定した遊離脂肪酸と総ケトン体の変化」とした。

Adv Ther. 2019 Oct; 36(10): 2769-2782.

結果:

SGLT2阻害薬は、プラセボと比較して、血糖値とインスリンを有意に減少させ、体重も減少させた。

遊離脂肪酸と総ケトン体は、1日目と28日目に増加させた。

 

29日目の空腹時(28日目の治験薬投与24時間後の朝8時)に測定した総ケトン体を

通常用量のSGLT2阻害薬(ジャディアンス10㎎/日)は、プラセボと比較して、

ベースラインから151.7(95%CI 24.4-279.0)μmol/Lの有意な増加を示した(p=0.021)。

 

29日目の空腹時(28日目の治験薬投与24時間後の朝8時)に測定した総ケトン体を

高用量のSGLT2阻害薬(ジャディアンス25㎎/日)は、プラセボと比較して、

ベースラインから420.2(95%CI 293.3-547.2)μmol/Lの有意な増加を示した(p<0.001)。

 

28日目に測定した「24時間における総ケトン体曲線下面積(AUC0-24h)」を

通常用量のSGLT2阻害薬(ジャディアンス10㎎/日)は、プラセボと比較して、

ベースラインから67.1 (95%CI 12.3-121.8) µmol・h / L・hの有意な増加を示した(p=0.017)。

 

28日目に測定した「24時間における総ケトン体曲線下面積(AUC0-24h)」を

高用量のSGLT2阻害薬(ジャディアンス25㎎/日)は、プラセボと比較して、

ベースラインから178.1 (95%CI 123.9-232.2) µmol・h / L・hの有意な増加を示した(p<0.001)。

Adv Ther. 2019 Oct; 36(10): 2769-2782.

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の総ケトン体の上昇トレンドは、「食事前にピークに達し、食事後に減少し、朝食前が最も高いピーク」を示した。

また、空腹時の総ケトン体の増加は、SGLT2阻害薬の用量に依存的であった。

 

総ケトン体の変化は、血糖値(低下)、インスリン(低下)、遊離脂肪酸(増加)の変化に関連していることが示唆された。

 

結論:

SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)は、単回投与と28日間の投与後の遊離脂肪酸と血中ケトン体を適度に増加させた。

ケトン体の増加は、絶食期間と関連しているようで、朝食前(投与24時間後)に顕著な増加を示した。

ケトン体の変化は、よく知られたケトン体産生の代謝決定因子の変化に関連していることが示唆された。

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