PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34035076/
タイトル:Glycemic Control, Diabetic Complications, and Risk of Dementia in Patients With Diabetes: Results From a Large U.K. Cohort Study
<概要(意訳)>
背景:
2型糖尿病は、認知症のリスク因子であることは既に確立されている。
しかしながら、認知症の発症における「血糖コントロールと糖尿病合併症」の影響は十分に立証されていない。
本研究では、2型糖尿病患者の「認知症リスクとHbA1cレベルおよび糖尿病合併症」との関連を調査した。
方法:
イギリスの臨床実践研究データリンク(CPRD)を使用して、1987年~2018年における50歳以上の糖尿病患者のデータを分析した。
時間依存共変量を使用したCox回帰モデルを使用して、認知症リスクの調整ハザード比を推定した。
結果:
追跡期間(中央値6年)の間に、457,902例の糖尿病患者の内、28,627例(6.3%)に認知症の発症が観察された。
糖尿病合併症と認知症の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
低血糖(n=19,510):1.30 (1.22–1.39)
細小血管合併症(n=111,248):1.10 (1.06–1.14)
網膜症(n=79,543):1.07 (1.03–1.11)
神経障害(n=44,195):1.25 (1.18–1.33)
腎症(n=9229):1.23 (1.13–1.33)
となり、「低血糖イベントまたは細小血管障害」のある糖尿病患者の認知症リスクはより高くなることが示された。
Diabetes Care. 2021 May 25; dc202850.
また、血糖値(HbA1cレベル、平均値、標準偏差)と認知症の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
HbA1c(1%上昇あたり):1.08 (1.07–1.09)
3年間の平均(1%上昇あたり):1.04 (1.02–1.06)
3年間の変動係数(1-SDあたり):1.03 (1.01–1.04)
となり、「血糖値の上昇と変動」のある糖尿病患者の認知症リスクはより高くなることが示された。
Diabetes Care. 2021 May 25; dc202850.
さらに、「3年間の血糖値と変動係数レベル」における認知症の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
HbA1c <6%:0.86(0.83-0.89)、p<0.001
HbA1c 6-7%:1.00
HbA1c 7-8%:1.02(0.98-1.06)、p=0.290
HbA1c 8-9%:1.15(1.09-1.21)、p<0.001
HbA1c 9-10%:1.26(1.17-1.34)、p<0.001
HbA1c ≧10%:1.40(1.32-1.49)、p<0.001
Q1(最下位四分位):1.00
Q2:1.06(1.01-1.11)、p=0.027
Q3:1.12(1.06-1.18)、p<0.001
Q4(最上位四分位):1.13(1.06-1.19)、p<0.001
となり、「血糖値と変動レベルの上昇に伴い」糖尿病患者の認知症リスクはより高くなることが示された。
Diabetes Care. 2021 May 25; dc202850.
結論:
2型糖尿病患者における「HbA1cレベルの上昇または変動、および糖尿病合併症(低血糖、細小血管障害)」は、認知症のリスク増加を関連していることが示された。
血糖値を効果的に管理することは、高齢の糖尿病患者の認知機能を維持する上で重要な役割を果たすことが示唆された。
【参考情報】
ハザード比ってなに?リスク比との違いは?