PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34345973/
タイトル:Diabetes and the risk of hospitalisation for infection: the Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) study
<概要(意訳)>
目的:
糖尿病は、好中球の機能、抗酸化システム、体液性免疫応答を損なうことにより、易感染性になると考えられている。
この仮説と一致して、糖尿病は感染症リスクの増加と関連していることを示すデータがあるが、ほとんどは、小規模集団を対象とし、横断的で、追跡期間が短い研究である。
本研究では、大規模で前向きに糖尿病と一般集団における感染症関連の入院および死亡リスクとの関連を評価した。
方法:
ARIC研究(アテローム性動脈硬化の原因を検討する試験)の前向きコホート分析を実施した。
糖尿病は、「空腹時血糖値≧126mg/dl、非空腹時血糖値≧200㎎/dl、自己報告(医師による糖尿病の診断歴)、糖尿病治療薬の使用」として定義した。
感染症による入院は、退院記録から確認した。
被験者の追跡期間は、1987-1989年から2019年までとした。
結果:
12,379例の被験者(糖尿病 1,485例、非糖尿病 10,894例、平均年齢 54.5歳、黒人 24.7%、女性 54.3%)が本研究の対象となった。
追跡期間(中央値23.8年)の間に発生した「感染症による入院」は、4,229件(15.9/10,00人/年)であった。
潜在的な交絡因子(心血管代謝因子;Model3)の調整後における、非糖尿病と比較した、糖尿病の「感染症による入院」のハザード比は、それぞれ、
「全ての感染症」による入院:HR 1.67(95%CI 1.52-1.83)、p<0.001
「呼吸器感染」による入院:HR 1.49 (95%CI 1.28-1.74)、p<0.001
「尿路感染」による入院:HR 1.58 (95%CI 1.26-1.98)、p<0.001
「足の感染症」による入院:HR 5.99 (95%CI 4.38-8.19)、p<0.001
「胃腸感染症」による入院:HR 1.12 (95%CI 0.75-1.66)、p=0.58
「敗血症」による入院:HR 1.92 (95%CI 1.62-2.28)、p<0.001
「術後感染症」による入院:HR 1.95 (95%CI 1.20-3.15)、p=0.007
となり、糖尿病は非糖尿病と比較して、(胃腸感染症を除く)感染症による入院リスクは高いことが示されたが、足の感染症による入院リスク増は顕著であった。
Diabetologia. 2021 Aug 4;1-8. doi: 10.1007/s00125-021-05522-3.
また、「性別、人種(白人/黒人)、年齢(50歳未満/以上)、社会経済的地位、健康保険、BMI(30未満/以上)」によるサブ解析では、「若年者(55歳未満)[交互p=0.005]と黒人[交互p<0.001]」において、感染症による入院リスクの更なる増加が示され、交互作用が認められた。
Diabetologia. 2021 Aug 4;1-8. doi: 10.1007/s00125-021-05522-3.
全体における感染症による死亡率は低かった(362例)が、潜在的な交絡因子(心血管代謝因子;Model3)の調整後における、非糖尿病と比較した、糖尿病の「感染症による死亡」のハザード比は、HR 1.72 (95%CI 1.28-2.31)となり、有意なリスク増加が示された(p<0.001)。
Diabetologia. 2021 Aug 4;1-8. doi: 10.1007/s00125-021-05522-3.
結論:
糖尿病は、感染に関連した入院リスクを大幅に増加させることが示された。
糖尿病患者の感染症の予防と早期治療の強化は、感染症による入院および死亡リスクを減らすために必要である。