PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31556147/
タイトル:Both hypo‐ and hyperglycaemia are associated with increased fracture risk in Japanese people with type 2 diabetes: the Fukuoka Diabetes Registry
<概要(意訳)>
背景:
骨折リスクに対する血糖コントロールの影響については議論の余地があるが、低血糖が骨折リスクに影響を与えている可能性がある。
本研究(福岡県糖尿病患者データベース研究)では、2型糖尿病患者の骨折リスクに対する「重症の低血糖」と「血糖コントロールレベル」の影響を個別に調査した。
方法:
平均年齢66歳の日本人2型糖尿病患者4,706人(男性:2,755人、閉経後女性:1,951人)を前向きに追跡(中央値5.3年、追跡率97.6%)し、「重症の低血糖」と「血糖コントロールレベル」によって層別化した。
本研究の1次転帰を「全ての骨折」、2次転帰を「股関節および脊椎の骨折」とした。
結果:
5.3%年(中央値)の追跡期間中、「全ての骨折」は、662人(男性:249人、女性:413人)に発症した。
「全体、男性、閉経後の女性」の3グループにおける「重症の低血糖」と「血糖コントロールレベル」に応じた、「全ての骨折(年齢と性別で調整)」の発症率は、
複数(2回以上)の「重症の低血糖」を起こした患者が最も高く、HbA1c <53 mmol/mol(<7%)の患者が最も低い
という結果が、3グループ間で一貫していた。
Diabet Med.2020 May;37(5):838-847.
2次転帰の「股関節および脊椎の骨折」は、198人(男性:67人、女性:131人)に発症した。
「全体、男性、閉経後の女性」の3グループにおける「重症の低血糖」と「血糖コントロールレベル」に応じた、「股関節および脊椎の骨折(年齢と性別で調整)」の発症率では、
複数(2回以上)の「重症の低血糖」を起こした患者が最も高い
という結果が、3グループ間で一貫していた。
Diabet Med.2020 May;37(5):838-847.
「重症の低血糖」と「重症の低血糖がないHbA1c≧75 mmol/mol(≧9%)」のリスクに対する交互作用は、年齢(70歳未満/以上)、性別(男性/閉経後の女性)、糖尿病の期間(15年未満/以上)、肥満(BMI 25 kg/m2未満/以上)と「定期的な運動、糖尿病網膜症のレーザー光凝固術、慢性腎臓病(CKD)、心血管疾患(CVD)、チアゾリジン薬、インスリン療法」の有無で示されなかった。
「重症の低血糖」と「血糖コントロールレベル」を複合した「全ての骨折(年齢と性別で調整)」の発症リスクを「重症低血糖なし&HbA1c<9%」と比較した場合、
「重症低血糖なし&HbA1c≧9%」の調整ハザード比は、HR 1.36(95%CI 1.04-1.82)、
「重症低血糖あり&HbA1c<9%」の調整ハザード比は、HR 1.92(95%CI 1.50-2.46)、
「重症低血糖あり&HbA1c≧9%」の調整ハザード比は、HR 2.22(95%CI 1.15-4.28)となった。
Diabet Med.2020 May;37(5):838-847.
結論:
日本人2型糖尿病患者の骨折リスクの増加は、「重症の低血糖」と「血糖コントロール不良」の両方において有意な関連が認められた。
さらに、骨折に与える影響は、「重症の低血糖」と「血糖コントロール不良」は独立していることが示唆された。
骨折予防の血糖コントロール目標は、HbA1c <75 mmol /mol(<9%)の可能性が示唆されるが、より重要なことは、「重症の低血糖」、特にその再発を避けることである。
【参考情報】
福岡県糖尿病患者データベース研究