2型糖尿病患者における抗糖尿病薬の切断リスクと末梢動脈疾患の関連



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33289789/ 

タイトル:The association of amputations and peripheral artery disease in patients with type 2 diabetes mellitus receiving sodium-glucose cotransporter type-2 inhibitors: real-world study

<概要(意訳)>

目的:

本研究では、新旧の抗糖尿病薬(ADD)による2型糖尿病(T2DM)の「切断リスクと末梢動脈疾患(PAD)リスク」を調査することを目的とした。

方法:

米国のCentricity Electronic Medical Recordsを使用して、3,293,983例の2型糖尿病患者(18歳~80歳)を特定した。

169,739例は、SGLT2阻害薬(インクレチン関連薬の暴露なし)を投与されていた。

149,826例は、GLP-1受容体作動薬(SGLT2阻害薬、またはDPP-4阻害薬の暴露なし)を投与されていた。

448,225例は、DPP-4阻害薬(GLP-1受容体作動薬、またはSGLT2阻害薬の暴露なし)を投与されていた。

195,4353例は、他の抗糖尿病薬(ADD)を投与されていた。

結果:

成人1万人あたりの切断イベントの割合は、2000年~2008年では4.7~6.8の範囲にあったが、2017年には12.3にまで大幅に増加した。

 

全体で14,157,332例/年のフォローアップがあり、「SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、その他の抗糖尿病薬(ADD)、およびADDの治療なし」の各群における平均フォローアップ期間は、それぞれ「1.8、3.4、3.3、4.9、4.2」年であった。

 

各(SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、ADDの治療無し)群の「すべての切断」と「下肢切断」の発生率(1000人/年)は、それぞれ、「1.42、1.38、1.56、1.57」と「1.26、1.23、1.42、1.37」となり、同等であった。

しかしながら、「その他のADD」群の「すべての切断」と「下肢切断」の発生率(1000人/年)は、「2.21」と「2.03」となり、有意に高いことが示された。

 

ペアワイズ比較による「すべての切断」リスクの調整ハザード比[HR(95%CI)]は、

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬で、有意な差は示されなかったが、

DPP-4阻害薬と比較したSGLT2阻害薬の調整HRは、0.68(0.59-0.78)

その他のADDと比較したSGLT2阻害薬の調整HRは、0.46(0.40-0.52)

となり、「すべての切断」リスクは、SGLT2阻害薬の方が「DPP-4阻害薬とその他のADD」よりも低いことが示された。

 

また、「下肢切断」リスクの調整ハザード比[HR(95%CI)]は、

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬で、有意な差は示されなかったが、

DPP-4阻害薬と比較したSGLT2阻害薬の調整HRは、0.75(0.56-0.75)

その他のADDと比較したSGLT2阻害薬の調整HRは、0.43(0.37-0.49)

となり、「下肢切断」リスクは、SGLT2阻害薬の方が「DPP-4阻害薬とその他のADD」よりも低いことが示された。

 

各(SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、ADDの治療無し)群の「末梢動脈疾患(PAD)」の発生率(1000人/年)は、それぞれ、「11.63、11.31、11.14」となり、同等であった。

しかしながら、「DPP-4阻害薬」と「その他のADD」群の「PAD」の発生率(1000人/年)は、「15.84」と「17.77」となり、有意に高いことが示された。

 

ペアワイズ比較による「末梢動脈疾患(PAD)」リスクの調整ハザード比[HR(95%CI)]は、

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬で、有意な差は示されなかったが、

DPP-4阻害薬と比較したSGLT2阻害薬の調整HRは、0.90(0.87-0.94)

その他のADDと比較したSGLT2阻害薬の調整HRは、0.75(0.72-0.78)

となり、「PAD」リスクは、SGLT2阻害薬の方が「DPP-4阻害薬とその他のADD」よりも低いことが示された。

Eur Heart J. 2021 May 7;42(18):1728-1738.

下肢切断(LLA)の発症率は、SGLT2阻害薬の「カナグリフロジン、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン」で治療された患者で同等であった。

 

また、末梢動脈疾患(PAD)の患者は、「全ての切断[95%CI 3.4-5.7]と下肢切断(LAA)[95%CI 3.6-6.0]」のハザード比(HR)が4以上となり、大幅なリスク上昇が示された。

結論:

SGLT2阻害薬とインクレチン(GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬)で治療された2型糖尿病患者の切断リスクは、他の抗糖尿病薬と比較して、高くないことが示された。

また、末梢動脈疾患の既往は、切断リスクの最大の要因であることが示された。

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