PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32205326/
タイトル:Conditions, pathogenesis, and progression of diabetic kidney disease and early decliner in Japan
<概要(意訳)>
背景:
糖尿病患者の多くは、アルブミン尿を呈することなく、またはアルブミン尿を呈する前に糸球体濾過率(GFR)が低下する。
ゆえに、アルブミン尿および/または低GFRの糖尿病患者は、DKD(糖尿病性腎臓病)と呼ばれている。
腎機能が早期に低下する患者は、糖尿病患者において一定の割合で存在する。
本研究では、DKDと早期腎機能低下患者の有病率を解明し、それらの危険因子を明らかにすることを目的とした。
方法:
この横断的コホート研究には、病院15施設の2,385例の糖尿病患者が含まれていた。
DKDは、尿中アルブミン/クレアチニン比 (ACR) ≥30 mg/gCr および/またはeGFR (推算糸球体濾過量) < 60 mL/min/1.73 m² と定義した。
蛋白尿の有無とeGFRの高低値から患者を4群に分類し、DKDの危険因子を明らかにした。
また、5施設の1,955例におけるeGFRの連続データを使用して、早期腎機能低下患者の有病率と危険因子を特定した。
結果:
維持透析患者、または登録時のACRまたはeGFRデータが欠落している患者を除き、2,385例の患者が本研究に含まれた。
年齢の中央値は64歳であり、62.8%は男性であった。
血清クレアチニン値の中央値は 0.79 mg/dL (四分位数範囲:0.64–0.96 mg/dL) であった。
1型糖尿病の患者は7.8%、2型糖尿病の患者は91%を占めていた。
すべての患者は、ACR (<30 mg/g または ≥30 mg/g) および eGFR (<60 mL/min/1.73 m² または ≥60 mL/min/1.73 m²) に従って4つのグループに分けられた。
本研究では、DKDの有病率は52%、アルブミン尿(ACR ≥30 mg/g)を呈する患者は40%、低eGFR(<60 mL/min/1.73 m²)の患者は30%であった。
1型糖尿病患者のDKD有病率は28%、2型糖尿病患者のDKD有病率は54%であった。
非DKD患者と比較した、DKDの3分類[低eGFR群(eGFR<60かつACR<30)、アルブミン尿群(eGFR≥60かつACR ≥30)、低GFRおよびアルブミン尿群(eGFR<60かつACR ≥30)]に関連する危険因子を明らかにするために、ロジスティック回帰分析を実施した。
この分析では、1型または2型以外の糖尿病患者は除外した。
BMJ Open Diabetes Res Care. 2020 Mar;8(1):e000902.
非DKD患者と比較した、DKDの3分類[低eGFR群(eGFR<60かつACR<30)、アルブミン尿群(eGFR≥60かつACR ≥30)、低GFRおよびアルブミン尿群(eGFR<60かつACR ≥30)]に関連する危険因子を明らかにするために、ロジスティック回帰分析を実施した。
この分析では、1型または2型以外の糖尿病患者は除外した。
非DKD患者と比較した、低eGFR群の危険因子のオッズ比[OR(95%CI)]は、
年齢(by 10 years):2.69(2.03 to 3.58)
総コレステロール(by 10 mg/dL):0.91(0.83 to 0.997)
尿酸:1.83(1.48 to 2.27)
となり、「高年齢、総コレステロール低値、尿酸」が危険因子であることが示された。
非DKD患者と比較した、アルブミン尿群の危険因子のオッズ比[OR(95%CI)]は、
糖尿病性網膜症:2.17(1.46 to 3.21)
収縮期血圧(by 10 mm Hg):1.32(1.17 to 1.48)
HbA1c(NGSP値):1.29(1.11 to 1.51)
となり、「糖尿病性網膜症、収縮期血圧高値、HbA1c」が危険因子であることが示された。
非DKD患者と比較した、低GFRおよびアルブミン尿群の危険因子のオッズ比[OR(95%CI)]は、
糖尿病性網膜症:3.83(2.44 to 6.03)
尿酸:2.04 (1.68 to 2.48)
性別(女性):1.81(1.11 to 2.95)
年齢(by 10 years):1.77(1.41 to 2.21)
収縮期血圧(by 10 mm Hg):1.2(1.05 to 1.38)
となり、「糖尿病性網膜症、尿酸、女性、高齢、収縮期血圧高値、」が危険因子であることが示された。
BMJ Open Diabetes Res Care. 2020 Mar;8(1):e000902.
早期腎機能低下患者の特徴を判断する為に、縦断的分析を実施した。
フォローアップ期間中に維持透析を開始した患者は、除外した。
eGFRの平均追跡期間は3.0年であった。
eGFRの軌跡によって、急速なeGFR低下を示す患者をグループ1(14%の患者)、中程度の低下を示す患者をグループ2(72%の患者)、徐々に上昇を示す患者をグループ3(14%の患者)に分類した。
グループ1の予測eGFR低下速度は、3.5×T(年)-16 (mL/min/1.73 m²/年)であった。
グループ2の予測eGFR低下速度は、-1.7 (mL/min/1.73 m²/年)であった。
BMJ Open Diabetes Res Care. 2020 Mar;8(1):e000902.
グループ1(急速なeGFR低下)のベースラインにおける危険因子のオッズ比は、
年齢(by 10 years):1.38(1.19 to 1.60)
ACR (by 10 mg/gCr):1.004(1.001 to 1.008)
eGFR (by 10 mL/min/1.73 m²):1.86(1.65 to 2.11)
となり、「高齢、eGFR高値、ACR高値」が危険因子であることが示された。
また、グループ3では、逆の傾向が見られた。
結論:
本研究におけるDKD(糖尿病性腎臓病)の有病率は、これまでの報告よりも多かった。
毎年 eGFR(推算糸球体濾過量)を検査し、糖尿病の初期段階の危険因子を特定することで、末期腎疾患の発症リスクが高い患者を特定できるだろう。