2型糖尿病におけるSGLT2阻害薬の腎機能と腎イベントに対する影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27299675/   

タイトル:Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes

<概要(意訳)>

背景:

糖尿病は、心腎血管イベントのリスクを高める。

EMPA-REG OUTCOME試験では、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンが、心血管イベントのリスクが高い2 型糖尿病患者の心血管イベントのリスクを低下させた。

本研究では、事前に規定した微小血管転帰である長期的な腎臓に対する影響を調査した。

方法:

eGFR≧30 mL/min/1.73m2である2型糖尿病患者をエンパグリフロジン群(10mg/日または25mg/日)、またはプラセボ群のいずれかに無作為に割り付けた。

事前に規定した腎転帰には、腎症の発生または悪化(マクロアルブミン尿への移行、血清クレアチニン値の倍化、腎代替療法の開始、腎疾患による死亡)およびアルブミン尿の発生が含まれていた。

結果:

42ヵ国の590施設で合計7,020例の患者が少なくとも1回の治験薬を投与された。

99%以上の患者は心血管疾患を発症していた。

ベースライン時のeGFR 45-59 mL/min/1.73m2は17.8%、eGFR 30-44 mL/min/1.73m2は7.7%、ミクロアルブミン尿(微量アルブミン尿)は28.7%、マクロアルブミン尿(尿蛋白)は11.0%であった。

ACE阻害薬またはARBは、80.7%が服用していた。

ベースラインのeGFR≧60またはeGFR≦59 mL/min/1.73m2で、患者を2群に分類した。

ベースラインの患者特性は、2群間で類似していた。

試験中に追加投与された心血管保護薬の投与率はプラセボ群でより高かった。

治療期間の中央値は2.6年、観察期間の中央値は3.1年であった。

「腎症の発症または悪化のイベント」は、エンパグリフロジン群の12.7%(525/4,124例)、プラセボ群の18.8%(388/2,061例)で起こり、相対リスク39%の減少が示された[0.61(0.53-0.70); p<0.001]。

エンパグリフロジンの2用量の相対リスクの減少は、それぞれ、

10mg:39%減少[0.61(0.53-0.72); p<0.001]

25mg:39%減少[0.61(0.53-0.71); p<0.001]

となり、2用量で同等の結果が示された。

N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):323-34.

「マクロアルブミン尿への移行」は、エンパグリフロジン群の11.2%(459/4,091例)、プラセボ群の16.2%(330/2,033例)で起こり、相対リスク38%の減少が示された[0.62(0.54-0.72); p<0.001]。

「血清クレアチニン値の倍化」は、エンパグリフロジン群の1.5%(70/4,645例)、プラセボ群の2.6%(60/2,323例)で起こり、相対リスク44%の減少が示された[0.56(0.39-0.79); p<0.001]。

「腎代替療法の開始」は、エンパグリフロジン群の0.3%(13/4,687例)、プラセボ群の0.6%(14/2,333例)で起こり、相対リスク55%の減少が示された[0.45(0.21-0.97); p=0.04]。

「腎疾患による死亡」は、エンパグリフロジン群で0.1%(3例)、プラセボ群では起こらなかった。

「アルブミン尿の発生」は、エンパグリフロジン群の51.5%(1,430/2,779例)、プラセボ群の51.2%(703/1,374例)で起こり、2群間で有意な差はなかった[0.95(0.87-1.04); p=0.25]。

N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):323-34.

CKD-EPI式(体内の老廃物クレアチニンの血中濃度の値をeGFRに変換)を使用して、下記の3期間におけるエンパグリフロジン群とプラセボ群の平均eGFR変化率の違いを定量化した。

「ベースラインから4週目(期間1)」において、

エンパグリフロジン10mgでは、0.62±0.04 mL/min/1.73m2の減少

エンパグリフロジン25mgでは、0.82±0.04 mL/min/1.73m2の減少

プラセボでは、0.01±0.04 mL/min/1.73m2の増加

となり、2群間で有意な平均eGFR変化率が示された(p<0.001)。

「4週目から最終週(期間2)」において、

エンパグリフロジン10mgおよび25㎎では、0.19±0.11 mL/min/1.73m2で安定化

プラセボでは、1.67±0.13 mL/min/1.73m2の減少

となり、2群間で有意な平均eGFR変化率が示された(p<0.001)。

「最終週からフォローアップ期間(期間3)」において、

エンパグリフロジン10mgでは、0.48±0.04 mL/min/1.73m2の増加

エンパグリフロジン25mgでは、0.55±0.04 mL/min/1.73m2の増加

プラセボでは、0.04±0.04 mL/min/1.73m2のわずかな減少

となり、2群間で有意な平均eGFR変化率が示された(p<0.001)。

N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):323-34.

eGFR≧60とeGFR≦59 mL/min/1.73m2におけるエンパグリフロジン群とプラセボ群の有害事象、重篤な有害事象、治験薬の中止につながる有害事象の発生率は同程度であった。

性器感染症の発生率は、プラセボ群よりも、エンパグリフロジン群の方が多かった。

尿路感染症および腎盂腎炎の発生率は、2群間で同程度だった。

低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、血栓塞栓性イベント、骨折、体液量減少の発生率は、2 群間で同程度であった。

急性腎障害を含む急性腎不全および高カリウム血症の発生率は、プラセボ群よりも、エンパグリフロジン群の方が少なかった。

N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):323-34.

結論:

心血管リスクが高い2 型糖尿病患者の標準治療にSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)を追加することは、プラセボよりも腎機能低下および腎イベントを抑制することが示された。

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