慢性腎臓病患者におけるSGLT2阻害薬の効果に対する原発性腎疾患の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38061372/  

タイトル:Impact of primary kidney disease on the effects of empagliflozin in patients with chronic kidney disease: secondary analyses of the EMPA-KIDNEY trial

<概要(意訳)>

目的:

SGLT2阻害薬は、当初、2型糖尿病患者の高血糖管理を目的に開発された。

慢性腎臓病(CKD)においては、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジンが、「心血管死または腎臓病の進行」による心腎複合一次アウトカムのリスクを減少させることが、いくつかの大規模なプラセボ対照試験で示されている。

これらの試験および他の大規模なSGLT2阻害薬試験のメタアナリシスでは、無作為化から「ベースラインから50%以上のeGFR持続的低下、末期腎不全(維持透析の開始または腎移植)、eGFR 10 mL/min/1.73m未満、または腎不全による死亡」の相対リスクが37%減少[RR 0.63(95%CI 0.58-0.69)]することが示された。

SGLT2阻害薬の効果は、高血糖がなければ糖尿に対する効果は減弱するにもかかわらず、糖尿病の有無にかかわらず同等であることが示唆された。

このメタ解析に貢献した2つの臨床試験(EMPA-KIDNEY試験およびDAPA-CKD試験)では、非糖尿病性の原発性腎疾患の参加者が含まれていた。

CKDの原因が非糖尿病である患者を対象とした476の「腎臓病の進行アウトカム」を含むこれら2つの試験の解析では、SGLT2阻害薬の相対的効果は、異なる原発性腎疾患の間で類似していることが報告された(異質性p値=0.67)。

このメタアナリシスでは、SGLT2阻害薬の「eGFR勾配、アルブミン尿、血圧、入院、安全性アウトカム、特定のベースライン特性に対する効果」の詳細は示されていない。

これらは、臨床医やガイドライン委員会が、特定の患者にSGLT2阻害薬を投与するタイミングを決定する際の参考情報とするために、しばしば望まれるものである。

EMPA-KIDNEY試験は、CKD患者6,609例を対象にエンパグリフロジンの効果を評価したもので、治験責任医師が報告した非糖尿病性の原発性腎疾患を有する患者の約3分の2を含む。

異なる病態生理を有する患者はSGLT2阻害薬に対する反応が異なる可能性があるため、CKDの異なる原発因子を有する患者間での効果を考慮することは重要である。

そこで我々は、EMPA-KIDNEY試験に参加した患者の内、異なるタイプの腎疾患を有する患者において、eGFR勾配に基づくアウトカムを用いて、腎臓のアウトカムに対するエンパグリフロジンの効果を評価することを本研究の目的とした。

また、その他の収集されたアウトカムで観察された効果に関する情報も提供し、追加分析については別の論文で紹介する。

方法:

EMPA-KIDNEY試験は、8カ国(カナダ、中国、ドイツ、イタリア、日本、マレーシア、英国、米国)の241施設で実施された。

対象は、18歳以上の患者で、人種調整した(CKD-EPI式で算出した)eGFRが20~45mL/分/1.73m未満(uACRのレベルに関係なし)、eGFRが45~90mL/分/1.73m未満で、スクリーニング時の尿中アルブミン/クレアチニン比(uACR)が200mg/g以上の患者も、適応と忍容性があれば、臨床的に適切な用量のRAS阻害薬(単剤)を処方されることを条件とした。

糖尿病はその有無に関わらず対象となり、多発性嚢胞腎は除外された唯一の原発性腎疾患であった。

過去3ヵ月以内にプレドニゾロン1日45mg以上(またはそれに相当するもの)を投与されていた患者、または免疫抑制剤を静脈内投与されていた患者は除外された。

同意の得られたすべての適格患者は、無作為化前の導入(run-in)期間に入り、1日1回投与のプラセボ錠を15週間投与された。

この間に、現地の治験責任医師がスクリーニングデータを検討し、現在のRAS阻害薬の使用を評価し、後の無作為化に参加可能な患者を選定した。

患者が報告した原発性腎疾患は、地元の主任研究者によって確認され、すべての患者は腎生検を受けたかどうかを尋ねられた。

試験期間中、患者に対する臨床責任は地元の医師にあった。

導入期間の終了後、意思のある適格患者は、中央分析と長期保存のために血液と尿の中央サンプルを採取され、最小化アルゴリズムを用いて、エンパグリフロジン群(10mgを1日1回経口投与)またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。

追跡調査(フォローアップ)の際、患者は腎臓の状態(透析治療または腎移植の有無)、試験薬のアドヒアランス(中止の理由)、併用薬の詳細に関する情報を提供した。

また、重篤な有害事象(およびプロトコールで指定された非重篤な有害事象)について構造化面接で質問され、血圧と体重の臨床測定を受け、クレアチニン、肝機能、カリウムの安全性評価のために採血され、地元の検査機関で分析された。

血液サンプルと、一部の来院時には尿サンプルも中央検査室に送られ、有効性分析(血清クレアチニンを含む)と保存が行われた。

事前に規定された主要アウトカムは、「腎臓病の進行または心血管死の複合アウトカムにおける初発までの期間」であった。

腎臓病の進行には、「末期腎不全(維持透析の開始または腎移植)、eGFR 10mL/分/1.73m2未満の低下、ベースラインから40%以上のeGFR持続的低下、または腎死(腎臓が原因による死亡)」が含まれた。

持続的の定義は、少なくとも30日の間隔をおいて2回連続して予定されたフォローアップ受診時に測定されたもの、または最後に予定されたフォローアップ受診時または死亡(または同意の撤回、追跡調査不能)前の最後に予定された受診時に測定されたものとした。

CKD-EPI式で算出したeGFRは、中央検査室での血清クレアチニン測定値が使用され、中央検査室での測定結果が欠落している場合は、地方検査室でのクレアチニン測定値が使用された。

「心不全による入院または心血管死、全ての原因による入院、全死亡」は、Hochbergステップアップ法で多重比較検定補正するよう事前に指定された「主要な副次的アウトカム」であった。

「腎臓病の進行」は、「二次アウトカム」であり、eGFRの年間変化率(慢性勾配と全勾配)の解析は「三次アウトカム」であった。

これらのeGFRアウトカムに関するさらなる探索的解析は事前に指定された。

重篤な急性腎障害は報告された有害事象に基づき、判定による確認の対象とした。

結果:

2019年5月15日から2021年4月16日の間に、6,609例の患者が無作為に割り付けられ、中央値2.0年(IQR 1.5-2.4)追跡された。

事前に指定した「原発性腎疾患のサブグループ(4つ)」には、「糖尿病性腎臓病」の2,057例(31.1%)、「高血圧性または再灌流性疾患」の1,445例(21.9%)、「糸球体疾患」の1,669例(25.3%)、「その他または原因不明」の1,438例(21.8%)が含まれていた(表1)。

「糸球体疾患」を有する参加者のうち、817例(49.0%)が「IgA腎症」、195例(11.7%)が「巣状糸球体硬化症」、657例(39.4%)が「その他の糸球体腎症」の糸球体疾患であった。

治験責任医師が確認した原発性腎疾患のより詳細なリストは付録(p11)に記載されている。

糸球体疾患のある患者は、他の腎疾患のある参加者よりも若く(平均年齢53.5歳[SD 13.6])、糖尿病および心血管疾患の罹患割合が低かった(表1;付録p12)。

糸球体疾患を有する患者は、試験全体の平均eGFR 37.3 mL/分/1.73m、uACR中央値329mg/gに比べ、平均eGFR 42.4mL/分/1.73m、uACR中央値700mg/gも高かった。

糸球体疾患の患者1,669例中1312例(78.6%)が腎生検の既往を報告したのに対し、糖尿病性腎疾患の患者2,057例中136例(6.6%)、高血圧性または再灌流性疾患の患者1445例中184例(12.7%)、その他または診断不明の患者1438例中230例(16.0%)であった(表1;付録pp11、14)。

主要複合アウトカムである「腎臓病の進行または心血管死」は、エンパグリフロジン群では3,304例中432例(13.1%)、プラセボ群では3305例中558例(16.9%)に発生し、エンパグリフロジン群で38%の相対リスク減少(HR 0.72 [95%CI 0.64-0.82])が示された。

主要複合アウトカムに対するエンパグリフロジンの効果は、4つの主要な原発性腎疾患のカテゴリーで同様であった(異質性p=0.56)。

また、「末期腎不全、eGFR 10mL/分/1.73m2未満の低下、または腎死(異質性p=0.85)」と「ベースラインから40%以上のeGFR持続的低下(異質性p=0.49)」に対するエンパグリフロジンの効果においても、それぞれ、4つの主要な原発性腎疾患のカテゴリーで同様であった。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2024 Jan;12(1):51-60.

990の「主要複合アウトカム」の内、エンパグリフロジン群では3,304例中384例(11.6%)、プラセボ群では3,305例中504例(15.2%)に「腎疾患の進行アウトカム」が発生し、エンパグリフロジン群で39%の相対リスク減少(HR 0.71 [95%CI 0.62-0.81])が示された。

この「腎疾患の進行アウトカム」に対するエンパグリフロジンの効果は、4つの主要な原発性腎疾患のカテゴリーで同様であった(異質性p=0.62;表2;図1)。

さらに検討した結果、「糸球体疾患のサブタイプ」における異質性は認められなかったが(p=0.25)、巣状糸球体硬化症の患者におけるアウトカムは30例のみであった(図1)。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2024 Jan;12(1):51-60. 

事前に指定された三次アウトカムの「eGFRの年間変化率」は、慢性勾配法(Chronic slope:イニシャルディップの影響を除き、無作為化2ヶ月後から最終フォローアップまでの期間)と全勾配法(Total slope:無作為化後から最終フォローアップまでの期間)を用いて算出し、

「原発性腎疾患のサブグループ(糖尿病性腎臓病、高血圧性または再灌流性疾患、糸球体疾患、その他または原因不明)」と「糸球体疾患(IgA腎症、巣状糸球体硬化症、その他の糸球体腎症)」における影響を検討した。

慢性勾配法で算出した「原発性腎疾患サブグループ」の「eGFRの年間変化率(左にプラセボとの絶対差、右にプラセボとの相対差を示す)」は、それぞれ、

・全体(All participants):1.37 (1.16 to 1.59)、50% (42 to 58)

・糖尿病性腎臓病:1.65 (1.26 to 2.04)、59% (45 to 73)

・高血圧性または再灌流性疾患:1.36 (0.90 to 1.82)、62% (41 to 83)

・糸球体疾患:1.43 (0.99 to 1.87)、40% (28 to 52)

・その他または原因不明:0.95 (0.49 to 1.42)、42% (22 to 63)

となり、全体と原発性腎疾患サブグループ間で異質性は示されなかった(p=0.11)。

同様に、全勾配法を用いて算出した「eGFRの年間変化率」においても全体と原発性腎疾患サブグループ間で異質性は示されなかった(p=0.70)。

慢性勾配法で算出した「糸球体疾患サブグループ」の「eGFRの年間変化率(左にプラセボとの絶対差、右にプラセボとの相対差を示す)」は、それぞれ、

・全体(All participants):1.37 (1.16 to 1.59)、50% (42 to 58)

・IgA腎症:1.78(1.13 to 2.44)、43% (27 to 59)

・巣状糸球体硬化症:0.73 (–0.56 to 2.02)、22% (16 to 60)

・その他の糸球体腎症:1.45 (0.73 to 2.17)、41% (21 to 62)

となり、全体と糸球体疾患サブグループ間で異質性は示されなかった(p=0.58)。

同様に、全勾配法を用いて算出した「eGFRの年間変化率」においても全体と糸球体疾患サブグループ間で異質性は示されなかった(p=0.54)。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2024 Jan;12(1):51-60. 

糖尿病の状態別[1型糖尿病(わずか68名)、2型糖尿病、非糖尿病]で検討した「eGFRの年間変化率(慢性勾配と全勾配)」に対するエンパグリフロジンの影響は、糖尿病状態に関係なく同様であった。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2024 Jan;12(1):51-60. 

原発性腎疾患における平均uACR(尿中アルブミン/クレアチニン比)は、それぞれ、糖尿病性腎臓病の患者で251mg/g、高血圧性または再灌流性疾患の患者で110mg/g、糸球体疾患の患者で577mg/g、その他または原因不明の患者で126mg/gであった。

プラセボと比較したエンパグリフロジンの平均uACRの相対差は、それぞれ、糖尿病性腎臓病の患者で28%(21 to 34)、高血圧性または再灌流性疾患の患者で16%(7 to 25)、糸球体疾患の患者で15%(6 to 24)、その他または原因不明の患者で14%(4 to 23)であり、糖尿病性腎臓病の患者では、エンパグリフロジンの方がuACRをより低下させる傾向が示された(異質性p=0.050)。

プラセボと比較したエンパグリフロジンの平均収縮期血圧(SBP)の相対差は、それぞれ、糖尿病性腎臓病の患者で4.1 mmHg (2.9 to 5.3)、高血圧性または再灌流性疾患の患者で1.7 mmHg (0.2 to 3.1)、糸球体疾患の患者で2.2 mmHg (0.8 to 3.6)、その他または原因不明の患者で1.6 mmHg (0.2 to 3.1)であり、糖尿病性腎臓病の患者では、エンパグリフロジンの方がSBPの低下効果が大きかった(異質性p=0.023)

平均拡張期血圧(DBP)の相対差においては、原発性腎疾患サブグループ間で異質性は示されなかった(p=0.052)。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2024 Jan;12(1):51-60. 

全体として、エンパグリフロジンは重篤な急性腎障害のリスクに有意な影響を及ぼさず(HR 0.78 [95%CI 0.60-1.00])、原発性腎疾患のサブグループ間で異質性は示されなかった(異質性p=0.28;付録p17)。

ケトアシドーシスは、エンパグリフロジン群で6例(インスリン投与中5例、その内1例は1型糖尿病、1例は非糖尿病)、プラセボ群で1例に発生した。

下肢切断イベントは、エンパグリフロジン群で28件、プラセボ群で19件であった(その内、足指切断はエンパグリフロジ群で20件、プラセボ群で14件)。

これら2つの安全性アウトカムは、主に糖尿病性腎臓病の患者で発生し、それ以外の腎疾患を有する患者における影響については、事象が少なく信頼できる推定はできなかった。

重篤な尿路感染症、高カリウム血症、重篤または症候性脱水、重篤な低血糖(主に糖尿病性腎疾患を有する参加者において)、肝障害および骨折の発生率は、割り付けられた治療群間でほぼ同様であり、原発性腎疾患による所見の変化は認められなかった(付録pp.17-18)。

考察:

このEMPA-KIDNEY試験の二次分析では、進行リスクのあるCKDの非糖尿病患者を多く含んでおり、エンパグリフロジンは腎臓病の進行リスクを減少させ、異なる原発性腎疾患の患者においても全体と同程度の効果を示した。

eGFRの年間変化率を相対尺度で解析することにより、治療効果が異なるかどうかをさらに詳細に検討することが可能となった。

このような解析から、原発性腎疾患に関わらず、エンパグリフロジはeGFR年間低下速度を遅延させることが示唆された。

また、研究対象集団において一般的に安全であり、忍容性も良好であった。

EMPA-KIDNEY試験で観察されたSGLT2阻害薬の腎臓病進行抑制効果に及ぼす影響は、CKD患者を対象とした他のSGLT2阻害薬の大規模プラセボ対照試験で認められたものと同様である。

今回発表された解析では、糸球体疾患患者の2倍以上、IgA腎症患者の約3倍(糸球体疾患患者の約半数はアジア系人種)において、eGFR勾配(相対効果に重点を置いた新たな試み)、心血管アウトカム、入院、血圧、アルブミン尿、安全性に関する情報が含まれ、これまでのDAPA-CKDのデータに大幅な追加がなされた。

この解析には、糖尿病以外の慢性腎臓病、特に高血圧性疾患や再灌流性疾患を有する患者も多数含まれており、重要なことは、これまでSCORED試験のデータと心不全試験の解析に限られていた、uACRが200mg/g未満のCKD患者における利用可能な情報を拡大することである。

エンパグリフロジンの腎臓病進行に対する相対的効果は、原発性腎疾患に関わらず一貫しており、CKD進行の最終的な共通経路の概念を支持している。

SGLT2阻害薬は、求心性動脈緊張を亢進させることによって尿細管糸球体のフィードバックを回復または亢進させ、調節不全に陥った糸球体の血流動態を改善する。

臨床的には、SGLT2阻害薬の投与開始後にeGFRが急性に低下(イニシャルディップ)し、その後長期的にeGFRの低下が緩やかになる。

糸球体内圧の上昇とそれに伴う糸球体濾過量の過多は、ネフロン数が少ない場合を含め、多くの慢性腎臓病に共通する仮説である。

今回の結果は、腎尿細管における病態生理によって駆動される他の共通経路も示しているかもしれない。

SGLT2阻害薬は、グルコースとナトリウムの再吸収の減少を介して尿細管の仕事量と酸素消費量を減少させ、腎尿細管への酸素供給能力を増加させる。

このことは、アルブミン尿に対するより緩やかな効果から予測されるよりも、SGLT2阻害薬が腎臓病の進行に対してより大きな効果を示すことを説明するかもしれない。

この機序はメタアナリシスで観察された急性腎障害に対する有益な効果も説明できるかもしれない。

EMPA-KIDNEY試験のみでは、急性腎障害のリスクに対するエンパグリフロジンの有意な効果は認められなかったが、点推定値は、SGLT2阻害薬の13の大規模臨床試験約90,000例を対象としたメタアナリシスにおけるAKIリスクの23%の相対的低下と完全に一致した。

SGLT2阻害薬による長期的な腎保護に寄与するこれらのメカニズムおよびその他の提案されたメカニズムについては、本試験で保存された血液および尿サンプルとマルチオミクスアッセイ、腎MRIサブスタディを用いた今後の解析で検討する予定である。

SGLT2阻害薬によってリスクが中等度から大幅に減少したにもかかわらず、残存リスクは依然として残っており、CKDの進行を安全に遅延させることができる新たな介入法を特定し試験することは、依然として研究の優先事項であるため、これらの研究は重要である。

心血管アウトカムの解析は、おそらく低リスク集団の採用や、心血管リスクの低下に向かう経年的傾向のため、イベント数が予想より少なかったために制限された。

これはDAPA-CKD試験の特徴でもあり、糖尿病を伴わないCKD患者におけるSGLT2阻害薬の心血管系への影響には不確実性が残る。

EMPA-KIDNEY試験における収縮期血圧の全体的な群間差は-2.6mmHg(95%CI -3.3~-1.9)であり、CREDENCE試験の群間差-3.3mmHg(-3.9~-2.7)およびDAPA-CKD試験の群間差-2.9mmHg(-3.6~-2.3)と同様であった、

しかし、EMPA-KIDNEY試験では、糖尿病性腎臓病患者の収縮期血圧に対する効果は、他の原発性腎疾患の患者よりも大きい傾向があることが観察された。

エンパグリフロジンは一般的に忍容性が高く、全ての原因による入院のリスクを減少させた。

ケトアシドーシスのリスクは低く、主にベースライン時にインスリン投与を受けていた糖尿病患者においてであった。

下肢切断は、主に糖尿病性腎臓病を有する患者で発生した。

重篤な高カリウム血症に対する効果は、治療群間で有意な差はなかったが、点推定値は以前のメタアナリシスによる高カリウム血症リスクの17%の相対的低下と完全に一致した。

EMPA-KIDNEY試験、DAPA-CKD試験、およびその他の大規模試験から得られたこれらの解析結果は、SGLT2阻害薬が広く使用されることにより、原発性腎疾患に関わらず、腎不全の将来的な世界的負担が大幅に軽減されることを示唆している。

これらの分析結果や他の分析結果の一貫性により、CKD患者の簡単な臨床診療ガイドラインが可能となる。

これらの結果は、RAS阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の臨床試験が完了し、SGLT2阻害薬の重篤な副作用が稀と思われる糖尿病を伴わないCKD患者にとって特に重要である。

SGLT2阻害薬は多くのCKD患者にとっての標準治療薬の一部になるはずである。

EMPA-KIDNEY試験は、所見が広く一般化できるようにデザインされた。

また、進行リスクのあるCKD患者に対するSGLT2阻害薬の使用に関して、現在入手可能な最大の無作為化データを提供するものである。

発表された解析の主な長所は、治療効果を相対的な尺度で評価する新しい解析アプローチを用いた、統計学的に感度の高い様々なアプローチ(eGFR勾配解析)を用いた探索である。

絶対効果に基づく解析では、ベースラインの絶対リスクにおけるサブグループ間の差に加え、試験治療の相対効果における差も混同されるため、この方法により、より信頼性の高いサブグループ比較が可能となった。

報告された知見の一般化可能性(外的妥当性)の限界は、多発性嚢胞腎患者または腎移植患者が除外されていることである。

腎移植患者のデータは、Renal Lifecycle試験(NCT05374291)の結果が報告された時点で入手可能となる。

IgA腎症の患者は特に多かったが、他の特定の糸球体疾患の患者は比較的少なく、1型糖尿病の患者は僅か68例であった。

このため、このようなあまり研究されていないタイプの患者において、治療効果を直接評価するには限界があった。

もう一つの重要な限界は、追跡調査期間の中央値が比較的短いことである。

EMPA-KIDNEY試験に同意した患者は、無作為に割り付けられた試験薬による治療終了後、少なくとも2年間にわたって主要アウトカムを観察する試験終了後のフォローアップ段階に入った。

要約すると、進行リスクのあるCKD患者の幅広い集団において、エンパグリフロジンは腎臓病進行リスクとeGFR低下リスクを安全に減少させ、原発性腎疾患のサブグループ間で、ほぼ同程度の相対的効果を示した。

結論:

進行リスクのある幅広い慢性腎臓病患者において、エンパグリフロジンは腎疾患の進行リスクを減少させた。

相対的な効果量は、原発性腎疾患の原因に関わらず、ほぼ同様であり、SGLT2阻害薬は慢性腎疾患における腎不全リスクを最小化する標準治療薬として妥当な薬剤クラスであることが示唆された。

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