実臨床におけるCOPD吸入治療薬の有効性比較_Triple vs Dual



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30197512/ 

タイトル:Dual bronchodilation vs triple therapy in the “real-life” COPD DACCORD study

<概要(意訳)>

背景:

実臨床におけるCOPD治療において、dual療法(LABA+LAMA)とtriple療法(LABA+LAMA+ICS)の有効性を評価した観察研究はない。

方法:

DACCORD研究は、維持期のCOPD患者を登録した非介入の観察研究である。

本研究に登録する被験者の投薬内容を維持するか、変更するかは、医師の裁量により決定された。

マッチドペア解析を使用して、dual療法群とtriple療法群(各群n=1,046)のCOPD治療における有効性を評価した。

結果:

dual療法群とtriple療法群のベースライン特性は、非常に似通っていた。

 

dual療法(LABA+LAMA)群では、797例(76%)がLABA+LAMA併用の単一吸入器で治療され、249例(24パーセント)が別々の吸入器で治療されていた。

 

Triple療法(LABA+LAMA+ICS)群では、

770例(74%)がLABA/ICS併用の単一吸入器と個別のLAMA吸入器で治療され、

141例(13%)がLABA/LAMA併用の単一吸入器と個別のICS吸入器で治療され、

135例(13%)がLABA、LAMA、ICSの個別の3つの吸入器で治療されていた。

 

1年間の追跡期間において、急性増悪を起こしたCOPD患者の割合は、triple療法群よりもdual療法群の方が有意に少なかった(15.5% vs 26.6%;p<0.001)。

また、急性増悪率もdual療法群の方が有意に少なかった[0.184(95%CI 0.156-0.216)% vs 0.364(95%CI 0.320-0.414 )%;p<0.001)]。

 

また、ベースラインから12ヶ月後のCATスコア(COPDアセスメントテスト)の改善は、

triple療法群よりもdual療法群の方が有意に少なく(-2.9±5.8 vs -1.4±5.5;p<0.001)、臨床的に意義のある改善を示した割合は、dual療法群の方が有意に高かった(61.8% vs 47.2%;p<0.001)。

 

これらの結果は、dual療法群とtriple療法群のベースライン特性が人口統計学的に一致していたことを考慮すると、意外な結果であった。

この結果をより良く理解する為に、各群における以前の投薬内容も比較した。

 

dual療法群における以前の治療内容は、下記の2つに分類された。

1)以前は単剤で治療されていて、登録時に1剤追加された(n=376)。

この内、16.2%が1年間の追跡期間中に、1回以上の急性増悪を起こし、急性増悪率は0.189%であった。

2)以前からLABA+LAMAで治療されていた(n=201)。

この内、16.9%が1年間の追跡期間中に、1回以上の急性増悪を起こし、急性増悪率は0.196%であった。

 

triple療法群における以前の治療内容は、下記の2つに分類された。

1)以前はLABA+ICSまたはLAMA+ICSで治療されていて、登録時に1剤追加された(n=468)。

この内、25.9%が1年間の追跡期間中に、1回以上の急性増悪を起こし、急性増悪率は0.352%であった。

2)以前からLABA+LAMA+ICSで治療されていた(n=400)。

この内、28.8%が1年間の追跡期間中に、1回以上の急性増悪を起こし、急性増悪率は0.418%であった。

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 Aug 24;13:2557-2568.

また、ベースラインから12ヶ月後のCATスコア(COPDアセスメントテスト)の改善は、

以前は単剤で治療されていて、登録時に1剤追加されたdual療法群(n=376)が最大であった(-3.3±6.0点)。

約3分の2(64.9%)の患者において、臨床的に関連する改善(CATスコア≧平均2点の減少)が認められた。

 

以前からLABA+LAMAで治療されて、登録時以降も継続投与されたdual療法群(n=201)のベースラインからのCATスコアの改善は、臨床的に関連する改善は示されなかった(-1.5±5.5点)が、約半数(49.8%)の患者は、臨床的に関連する改善が認められた。

 

以前はLABA+ICSまたはLAMA+ICSで治療されていて登録時に1剤追加されたtriple療法群(n=468)と以前からLABA+LAMA+ICSで治療されて登録時以降も継続投与されたtriple療法群(n=400)ともに、ベースラインからのCATスコアの改善は、臨床的に関連する改善は認められず(-1.6±5.2点と-0.9±6.0点)、臨床的に関連する悪化(CATスコア≧平均2点の上昇)は、それぞれ、約5分の1(19.0%)と約3分の1(30.5%)の患者に認められた。

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 Aug 24;13:2557-2568.

結論:

本研究におけるCOPD患者のコホートでは、ほとんどが登録時6ヶ月前に急性増悪を起こしていなかった。

COPDの急性増悪、健康関連のQOL(CATスコア)のいずれにおいても、triple療法はdual療法と比較して改善効果を示すわけではなかった。

 

登録時に単剤治療から1剤追加されて、dual療法(LABA+LAMA)で治療された患者が最も大きなベネフィットを受けていた。

登録時以降にtriple療法で治療された患者は、ベースライン特性が一致していたにも関わらず、増悪リスクが高かった。

 

これらの結果は、以前の投薬内容が研究の結果に潜在的な影響を及ぼすことを明確に示している。ゆえに、大規模臨床試験の結果を解釈する際には、その旨を考慮する必要があるだろう。

 

【参考情報】

CAT(COPDアセスメントテスト)とは

http://www.gold-jac.jp/support_contents/cat.html 

COPD assessment test(CAT)を用いた COPD 管理

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/23/2/23_127/_pdf 

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