PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32416116/
タイトル:Acute kidney injury in patients hospitalized with COVID-19
<概要(意訳)>
背景:
Covid-19で入院した患者の急性腎障害(AKI)の発症率、および臨床転帰はよく分かっていない。
本研究では、Covid-19入院患者におけるAKIの症状、危険因子、臨床転帰について調査した。
方法:
2020年3月1日~4月5日の間に、ニューヨーク州の都市圏にある13施設のノースウェル・ヘルス病院に、Covid-19で入院した全ての患者の電子健康記録をレビューした。
18歳未満の末期腎不全、または腎移植の患者は、分析対象から除外した。
AKIの定義は、KDIGO分類[ステージ①:基準値の1.5~1.9 倍、または≧0.3 mg/dLの増加、ステージ②:基準値の2.0~2.9倍、ステージ③:基準値の3倍、または≧4.0 mg/dL の増加、または腎代替療法(RRT)の開始]に従った。
結果:
分析対象となったCOVID-19患者は、全体で5,449例であった。
入院中のある時点で、人工呼吸器で治療された割合は、21.8%(1190例)であった。
全体の内、888例(16.3%)が死亡し、3,280例(60.2%)が自宅、またはリハビリ施設に退院し、1281例(23.5%)が治療継続中であった。
AKI(急性腎障害)は、1,993例(36.6%)が発症し、KDIGO分類によるステージ①は46.5%、ステージ②は22.4%、ステージ③は31.1%であった。
入院時あるいは入院後24時間以内にAKIを発症した割合は、37.3%であった。
また、入院中のある時点で透析導入が必要となったのは、285例(全体の5.2%、AKI発症の14.3%)であった。
人工呼吸器の装着患者では、非装着患者の21.7%(925/4259例)に対して、89.7%(1068/1190)がAKIを発症した。
ステージ③のAKIの発症[83.6%(518/619例)]、および透析導入[96.8%(276/285例)]の大半は、人工呼吸器の装着患者で占めていた。
RRT(腎代替療法)は、人工呼吸器の非装着患者の0.2%(9/4259例)、装着患者の23.2%(276/1190例)に必要であった。
気管挿管、および人工呼吸の開始時に、AKIを発症する傾向がみられた。
人口呼吸器の装着患者でAKIを発症した患者の52.2%は、気管挿管から24時間以内にAKIを発症した。
AKIの危険因子には、高齢、糖尿病、心血管疾患、黒人、高血圧、人工呼吸器の装着と昇圧薬の使用などがあった。
入院中にAKIを発症した1993例の内、780例(39%)は入院中であり、519例(26%)は退院し、694例(35%)は死亡した。
死亡症例の内、34%がステージ①、64%がステージ②、91%がステージ③であった。
RRT(腎代替療法)を必要とした285例の内、157例が死亡し、9例が退院した。 残る119例の内、108例は未だ入院しRRTを受けていた(90.8%)。
AKIを発症したが退院まで生存した患者における、ピーク時の血清クレアチニン中央値は2.34(四分位範囲:1.42-4.25)mg/dlで、退院時の中央値は1.70(四分位範囲:0.96-3.58)mg/dLであった。
結論:
COVID-19で入院した患者の急性腎障害(AKI)の発症頻度は、36.6%と比較的高いことが分かった。
特に、人工呼吸器の装着患者におけるAKI発症頻度は、89.7%と非常に高く、AKIステージ③の83.6%、透析導入の96.8%を占めており、呼吸不全と転帰不良は強い関連があった。
AKIの発症原因と患者の臨床転帰を改善する為に、さらなる研究が必要である。
【参考情報】AKI(急性腎障害)の分類