利尿薬の服用有無におけるHFrEF患者の臨床転帰



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35654526/ 

タイトル:Clinical Outcomes Related to Background Diuretic Use and New Diuretic Initiation in Patients With HFrEF

<概要(意訳)>

背景:

HFrEF患者を対象にした大規模臨床試験では、ベースラインで利尿薬の未服用割合は20%程度であったが、その被験者の臨床転帰は殆ど知られていない。

本研究では、ベースラインで利尿薬を未服用、および途中で利尿薬の服用を開始したHFrEF患者の臨床転帰を調査した。

方法:

ATMOSPHERE試験[レニン阻害薬(アリスキレン)の試験、主要評価項目は「心血管死または心不全による初回入院」]、およびPARADIGM-HF試験[アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)の試験、主要評価項目は「心血管死または心不全による入院」]において、ベースラインで利尿薬の服用患者と未服用患者の特徴と臨床転帰を比較した。

また、ベースラインで利尿薬の未服用患者で利尿薬の服用を開始した患者とフォローアップ期間中も利尿薬を服用しなかった患者における臨床転帰の比較も実施した。

 

臨床転帰は、「大規模臨床試験の主要評価項目、心不全による入院、全死亡、心血管死、突然死、心不全による死亡」を比較した。

その他、「症状(カンザスシティ心筋症質問票のKCCQ-CSSスコア)、心不全の悪化による入院、全死亡、腎機能(eGFR)」等を調査した。

結果:

ベースラインで利尿薬を服用していない患者(20%:3,079/15,415人)は、利尿薬を服用している患者と比較して、心不全プロファイル(左室駆出率、重症度、症状、罹病期間、入院歴等)がマイルドで、神経体液性因子活性が少なく、腎機能が良好であった。

 

ベースラインで利尿薬の服用患者と比較した、未服用患者における各臨床転帰の調整ハザード比は、それぞれ、

主要評価項目:0.77 (0.74-0.80); p<0.001

心不全による入院:0.66 (0.57-0.76); p<0.001

全死亡:0.86 (0.75-0.98); p=0.025

心血管死:0.87 (0.76-0.98); p=0.026

突然死:0.95 (0.81-1.11); p=0.510

心不全による死亡:0.70 (0.50-0.98); p=0.037

となり、突然死を除く臨床転帰の調整ハザード比が有意に低いことが示された。

JACC Heart Fail. 2022 Jun;10(6):415-427.

ベースラインからフォローアップ期間中も利尿薬の未服用患者(n=2,004[65.1%])と比較した、フォローアップ期間中に利尿薬の服用を開始した患者(n=1,075[34.9%])の各臨床転帰の調整ハザード比は、それぞれ、

全死亡:2.04 (2.00-2.08); p<0.001

心血管死:1.94 (1.88-2.01); p<0.001

突然死:1.25 (1.01-1.53); p=0.036

心不全による死亡:4.34 (1.78-10.61); p=0.001

となり、すべての臨床転帰の調整ハザード比が有意に高いことが示された。

また、臨床特徴として、利尿薬の服用を開始した患者の方が、症状(KCCQ-CSS)の悪化と腎機能(eGFR)の悪化等が認められた。

フォローアップ期間中に(初めて)利尿薬の服用を開始した患者における5つの独立した予測因子は、「NT-proBNPの増加、BMIの増加、糖尿病の罹病歴、年齢の上昇、症状(KCCQ-CSS)の悪化」であった。

JACC Heart Fail. 2022 Jun;10(6):415-427.

結論:

HFrEF患者を対象とした大規模臨床試験において、ベースラインからフォローアップ期間中に利尿薬を服用しなかった患者は、ベースラインで利尿薬を服用していた患者およびフォローアップ期間中に利尿薬の服用を開始した患者と比較して、良好な臨床転帰を示していた。

JACC Heart Fail. 2022 Jun;10(6):415-427.

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