日本における心不全入院患者の医療資源・心不全悪化・入院期間の関連要因



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32636125/

タイトル:In-hospital resource utilization, worsening heart failure, and factors associated with length of hospital stay in patients with hospitalized heart failure: A Japanese database cohort study

<概要(意訳)>

背景:

日本では、100万人の心不全(HF)患者がいると推定(有病率1%)されており、HFの外来患者数は2030年までに130万人まで増加すると予測されている。

今のところ、入院期間(LOS)に関連する要因を解明したデータベースコホート研究はない。

本研究では、医療資源の利用(特に、フロセミドの用量)に焦点を当て、心不全入院患者の特徴、入院中の心不全悪化、入院期間(LOS)に関連する要因等を調査した。

方法:

2012年4月~2016年3月までに、心不全で入退院した282病院のDPCデータ(20歳未満、外科的処置、および院内死亡した心不全患者は除外)を分析した。

心不全悪化(WHF)は、入院中もしくは退院6日間における、静注のフロセミド、硝酸塩等の漸増と非薬理学的介入を含む8つの項目により定義した。

結果:

91,55例の内、外科手術を受けた症例(n=4,906)、および院内死亡(n=7,692)を除き、78,953例が分析対象となった。

約半数は男性(51.4%)で、平均±SD年齢は79.0±12.0歳、年齢の中央値は81歳(四分位範囲:73–87)歳、80歳以上の症例は57.2%であった。

HHFの59.1%は、循環器科(内科、外科を含む)で診断された。

31.6%は冬の時期に入院し、33.5%は救急車による搬送入院であった。

27.5%はHHFの既往がある患者の再入院で、約60%がNYHAクラスIIIまたはIVに分類された。

入院時のJCSスコア0点(Japan Coma Scale 0点:意識障害なし)の割合は85.5%、ADLスコア100点(日常生活動作に問題なし)の割合は35.6%であった。

一般的な基礎疾患の有病率は、高血圧(76.7%)、心臓細動/粗動(41.6%)、糖尿病(38.3%)であった。

心不全治療で使用された静注薬では、ループ利尿薬(67.0%)が最も多く、フロセミド(66.9%)が大半を占めており、カルペリチド(hANP)は40.0%、硝酸薬は27.2%、変力薬は18.5%の使用割合であった。

非薬理学的介入は、酸素(69.5%)、心臓リハビリテーション(29.8%)、心臓カテーテル検査(17.4%)であった。

非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)は1.1%、ICU入院は7.5%であった。

経口薬の使用割合は、ループ利尿薬(76.3%)、β遮断薬(49.3%)、ACE阻害薬/ARB(47.0%)であった。

他の利尿薬の使用割合は、トルバプタン(18.0%)、サイアザイド系利尿薬(6.5%)、カリウム保持性利尿薬(41.7%)であった。

退院後に使用された薬剤は、フロセミド(43.7%)を含むループ利尿薬(68.8%)、β遮断薬(45.0%)、ACE阻害薬/ARB(43.2%)、カリウム保持性利尿薬(34.3%)であった。

入院中おける静注フロセミドの1日平均±SD 用量/日は、43.3±56.0 mgであり、累積の平均±SD 用量は、215.6±450.6 mg(n=52,810)であった。

経口フロセミドの1日平均±SD 用量/日は44.0±37.3mgであり、累積の平均±SD 用量は、523.3±675.4mg(n=39,987)であった。

非薬理学的介入のNPPV、酸素、心臓リハビリの平均期間は、それぞれ8.1±9.1日(n=884)、8.3±8.1日(n=54,873)、10.6±7.5日(n=23,507)であった。

13項目の臨床検査項目において実施された検査数の平均±SD数は、10.8±2.0であった。

脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、心エコー図、心臓CT検査は、それぞれ67.3%、14.0%、77.9%、46.8%であった。

入院日数(LOS)の平均±SDは19.5±12.5日、中央値(IQR)は17(11–25)日であった。

入院費用の平均±SDは800,448±529,898円、中央値は691,764円であった。

退院時のADLスコア100点(日常生活動作に問題なし)、JCSスコア0点(意識障害なし)の割合は、それぞれ93.0%、55.4%であり、入院時より改善していた。

入院中に心不全悪化となった割合は36.1%で、入院6日目から心不全悪化となった割合は19.3%であった。

心不全悪化の定義(8項目)を満たす項目数は、入院中で1.4±0.7、入院6日目からで1.3±0.6であった。

入院3日目、4日目、5日目における心不全悪化の割合は、それぞれ29.7%(n=23,430)、25.5%(n=20,144)、22.2%(n=17,494)であった。

サブ解析では、80歳未満より80歳以上の方が、入院期間(LOS)が長くなる傾向があり、退院時のADLスコア100点(日常生活動作に問題なし)と入院中の心不全悪化は少ない傾向があった。また、同様の傾向は男性と比較した女性でも観察された。

多変量解析により、入院期間の延長に関連した主な要因は、入院6日目の心不全悪化(OR 1.3514)、肺炎(OR 1.1099)、低ナトリウム血症(OR 1.0997)であった。

結論:

本研究では、入院5日間までを含めた入院期間における静注と経口投与のループ利尿薬(フロセミド)の詳細な使用量、安定期における心不全悪化の発症率、入院期間に関連する要因等を明らかにした。

これらの知見は、将来的な心不全患者の院内転帰と心不全治療戦略を改善する為に役立つだろう。

【参考情報】各種利尿薬の特徴と投与法

https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_32/ch02.html 

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