日本人心不全サブタイプ別における退院後死亡率と原因



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32379331/ 

タイトル:Mode of Death Among Japanese Adults With Heart Failure With Preserved, Midrange, and Reduced Ejection Fraction

<概要(意訳)>

背景:

急性非代償性心不全(ADHF)で入院した患者は、集中治療を受けたにも関わらず、退院後の死亡リスクは高い。

駆出率が低下した心不全(HFrEF)、駆出率が中等度の心不全(HFmrEF)、駆出率が維持された心不全(HFpEF)のサブタイプ間で、死亡率と死亡原因に関するデータは限られている。

本研究では、急性心不全で入院した心不全患者の退院後死亡率と死亡原因を心不全サブタイプ(HFrEF、HFmrEF、HFpEF)別に調査した。

方法:

急性心不全で入院した4,056例を対象とした前向きコホート研究(KCHFレジストリ)では、2014年10月1日から2016年3月31日までに退院した3,717例(93.3%)のデータを分析した。

フォローアップデータは2017年10月に収集し、データ分析は2019年4月1日から8月31日まで実施した。

主要評価項目は、「心不全サブタイプ別における退院後の全死亡率と死亡原因」とした。

結果:

合計3,717例(平均年齢77.7歳、男性55.1%、平均LVEF46.4%)が、本研究の調査対象となった。

心不全サブタイプの内訳は、HFrEF(LVEF<40%)が1,383例(37.2%)、HFmrEF(LVEF 40%-49%)が703例(18.9%)、HFpEF(LVEF≥50%)が1,631例(43.9%)であった。

追跡期間の中央値は、470日(IQR 357-649日)であり、1年間の追跡率は96%であった。

 

追跡期間中に発生した全体の「全死亡(心血管死523例、非心血管死322例、不明3例)」は848例(22.8%)で、心不全サブタイプ別では、それぞれ、

HFrEF:298例[21.5%(95%CI 19.5-23.8)]

HFmrEF:158例[22.5%(95%CI 19.5-25.7)]

HFpEF:392例[24.0%(95%CI 22.0-26.2)]

となり、サブグループで差はなかった(p=0.26)。

 

追跡期間中に発生した全体の「心血管死(心不全、心臓突然死、血管死、急性冠症候群、脳卒中または頭蓋内出血、その他)」は523例(14.1%)で、心不全サブタイプ別では、それぞれ、

HFrEF:203例[14.7%(95%CI 12.9-16.6)]

HFmrEF:97例[13.8%(95%CI 11.4-16.5)]

HFpEF:223例[13.7%(95%CI 12.1-15.4)]

となり、サブグループで差はなかった(p=0.71)。

 

追跡期間中に発生した全体の「心臓突然死」は98例(2.6%)で、心不全サブタイプ別では、それぞれ、

HFrEF:44例[3.2%(95%CI 2.4-4.2)]

HFmrEF:14例[2.0%(95%CI 1.2-3.3)]

HFpEF:40例[2.5%(95%CI 1.8-3.3)]

となり、サブグループで差はなかった(p=0.23)。

 

追跡期間中に発生した全体の「非心血管死(悪性腫瘍、感染症、致死的出血、胃腸疾患、腎不全、肝不全、呼吸不全、その他)」は332例(8.7%)で、心不全サブタイプ別では、それぞれ、

HFrEF:94例[6.8%]

HFmrEF:61例[8.7%]

HFpEF:167例[10.2%]

となり、サブグループで差が認められた(p=0.004)。

 

ゆえに、急性心不全で入院した心不全患者における退院後の死亡(全死亡、心血管死)率は、心不全サブタイプ間で類似していることが示された。

JAMA Netw Open. 2020 May 1;3(5):e204296.

結論:

本研究では、心血管死と心臓突然死の発生率は心不全のサブタイプ間で同等であることが示された。

β遮断薬とACE阻害薬またはARBの使用は、HFpEFおよびHFmrEF患者における死亡率の低下と関連していた。

HFpEF患者における心臓突然死の発生率が無視できないことを考えると、この集団の高リスクサブセットを特定する為の更なる研究が必要だろう。

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