貧血合併HFpEF患者の運動能力と入院リスク



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32307089/ 

タイトル:Clinical, Demographic, and Imaging Correlates of Anemia in Heart Failure With Preserved Ejection Fraction (from the RELAX Trial)

<概要(意訳)>

背景:

貧血は、HFpEF患者の一般的な併存症だが、HFpEFにおける貧血の「心血管疾患の表現型」に関するデータは限られている。

HFpEFの貧血の表現型と病態生理を解明するために、HFpEF患者の臨床的特徴、運動能力、転帰を調査した。

方法:

RELAX(拡張性心不全における臨床症状と運動能力を改善する為のホスホジエステラーゼ-5阻害薬)試験に登録された被験者の事後解析を実施した。

貧血は、男性で13 g/dL未満、女性で12 g/dL未満と定義した。

多変量モデルを用いた調整解析により、貧血合併HFpEF群と貧血非合併HFpEF群における最大酸素摂取量(peak VO2)の違いを評価した。

結果:

貧血合併HFpEF患者は、高齢、男性、心臓弁膜症の割合がより高く、腎機能とヘモグロビンがより低下していた(p <0.05、全て)。

バイオマーカーは、「Ⅰ型コラーゲンC末端 テロペプチド(ⅠCTP:骨吸収量を反映する指標)、クレアチニン、シスタチンC、ガレクチン3(心筋の線維化マーカーとして注目されている)、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、トロポニンI、N末端プロコラーゲンペプチド(P-III-P:肝線維化進展の指標)、尿酸」の値は、貧血性HFpEF患者の方が有意に高かった(<p <0.05、全て)。

Am J Cardiol. 2020 Jun 15; 125(12):1870-1878.

運動能力の指標とした、6分間歩行距離では差はなかった(p=0.15)が、最大酸素摂取量(peak VO2)は、貧血性HFpEF患者の方が有意に低かった(p =0.004)。

Am J Cardiol. 2020 Jun 15; 125(12):1870-1878.

RELAX試験に登録12ヶ月前の心不全入院(1回以上)率は、

貧血合併HFpEF vs 貧血非合併HFpEF:47.4% vs 30.2%(p=0.04)となった。

 

6ヶ月のRELAX試験期間中の「心臓または腎臓による入院(1回以上)」率は、

貧血合併HFpEF vs 貧血非合併HFpEF:19.7% vs. 9.4%(p=0.06)となった。

また、Cox比例ハザードモデルによる調整ハザード比は、

心臓または腎臓による入院リスク:[HR 2.0(95%CI 0.9-4.3)]であった。

Am J Cardiol. 2020 Jun 15; 125(12):1870-1878.

結論:

貧血を合併したHFpEF患者は、運動能力が低下し、入院リスクが高くなることが示された。

HFpEF患者の生理学的表現型をよりよく理解することは、HFpEF患者の個別化医療につながり、予後を改善できる可能性があるだろう。

Am J Cardiol. 2020 Jun 15; 125(12):1870-1878.

【参考情報】

RELAX試験

https://www.ebm-library.jp/circ/trial/doc/c2005084.html

N末端プロコラーゲンペプチド(P-III-P)

http://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/011951002 

Ⅰ型コラーゲンC末端 テロペプチド(ⅠCTP)

https://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/011921902 

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