PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30852236/
タイトル:Prevalence and Prognostic Implications of Longitudinal Ejection Fraction Change in Heart Failure
<概要(意訳)>
背景:
駆出率(EF)は、心不全(HF)の治療法を決定するが、EFが経時的に変化する発生率、決定要因、予後に関する情報はほとんどない。
本研究では、HF患者におけるEFの経時的変化の発生率、予測因子、アウトカムとの関連を評価した。
方法:
スウェーデンの心不全レジストリで、少なとも2回以上EFが測定された患者を登録し、心不全のサブタイプ、HFpEF(EF≥50%)、HFmrEF(EF 40%〜49%)、HFrEF(EF <40%)の3つに分類した。
EF減少の定義は、「HFpEF→HFmrEF、HFpEF→HFrEF、HFmrEF→HFrEF」への遷移とした。
EF増加の定義は、「HFrEF→HFmrEF、HFrEF→HFpEF、HFmrEF→HFpEF」の遷移とした。
EF不変の定義は、「EFカテゴリ間で変化がない」こととした。
主要評価項目は、「全て原因による死亡(全死亡)とHFによる入院の複合」とした。
EFカテゴリ間での変化が記録され、EF経時的変化、予測因子、全死亡および/またはHFによる入院との関連をロジスティック回帰およびCox回帰を使用して分析した。
結果:
2000年5月11日から2012年12月31日の間に、少なくとも2回連続してEFを測定[EF測定間の中央値1.4年(IQR):0.5〜3.0年]された4,942例(平均年齢72±12歳、女性31%)が分析対象となった。
全体として、EF増加は1,027例(21%)、EF低下は689例(14%)、EF不変は3,226例(65%)であった。
具体的には、ベースラインのHFpEF患者の21%と18%は、それぞれ、HFmrEFとHFrEFに移行した。
ベースラインのHFmrEF患者の37%と25%は、それぞれ、HFrEFとHFpEFに移行した。
ベースラインのHFrEF患者の16%と10%は、それぞれ、HFmrEFとHFpEFに移行した。
JACC Heart Fail. 2019 Apr;7(4):306-317.
多変量ロジスティック回帰分析による、EF増加の予測因子(1<調整オッズ比)には、「女性、併存疾患(高血圧、貧血、心房細動、COPD)、軽症心不全(NYHA Ⅰ~Ⅱ)」等が含まれていた。
一方、EF低下の予測因子には、「虚血性心疾患、糖尿病、重症心不全」等が含まれていた。
RAS阻害薬の使用は、EFの増加/低下と関連していなかった。
複合転帰(全死亡とHFによる入院の複合)の未調整イベント発生率(100人/年)は、それぞれ、
EF増加患者:18.0(95%CI:16.2〜19.9)
EF不変患者:43.1(95%CI:41.2〜45.1)
EF減少患者:57.8(95%CI:52.6〜63.4)
となった(Log-rank p<0.0001)。
EF不変患者と比較した、複合転帰の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
EF増加患者:0.62(0.55~0.69)
EF低下患者:1.15(1.01~1.30)
となり、EF低下は複合転帰リスクの増加と関連し、EF増加はリスクの低下と関連していることが示された。
JACC Heart Fail. 2019 Apr;7(4):306-317.
次に、EF変化パターンと複合転帰リスクを分析した。
ベースラインでHFpEFの場合、HFpEF→HFpEF(EF不変)と比較した、調整ハザード比は、
HFpEF→HFmrEF(EF低下):1.19(0.96~1.49)
HFpEF→HFrEF(EF低下):1.46(1.15~1.85)
となり、「HFpEFからEFの低下」は、「複合転帰リスクの増加」と関連していた。
ベースラインでHFmrEFの場合、HFmrEF→HFmrEF(EF不変)と比較した、調整ハザード比は、
HFmrEF→HFrEF(EF低下):1.40(1.13~1.75)
HFmrEF→HFpEF(EF増加):1.32(1.03~1.70)
となり、「HFmrEFからEFの増減」は、「複合転帰リスクの増加」と関連していた。
ベースラインでHFrEFの場合、HFrEF→HFrEF(EF不変)と比較した、調整ハザード比は、
HFrEF→HFmrEF(EF増加):0.56(0.47~0.65)
HFrEF→HFpEF(EF増加):0.42(0.33~0.53)
となり、「HFrEFからEFの増加」は、「複合転帰リスクの減少」と関連していた。
フォローアップ期間中にHFpEFとなった場合、HFpEF→HFpEF(EF不変)と比較した、調整ハザード比は、
HFmrEF→HFpEF(EF増加):1.07(0.85~1.35)
HFrEF →HFpEF(EF増加):0.54(0.41~0.73)
となり、「HFrEFからHFpEFへの遷移」は、「複合転帰リスクの減少」と関連していた。
フォローアップ期間中にHFmrEFとなった場合、HFmrEF→HFmrEF(EF不変)と比較した、調整ハザード比は、
HFpEF→HFmrEF(EF減少):1.29(0.99~1.66)
HFrEF →HFmrEF(EF増加):0.76(0.60~0.96)
となり、「HFrEFからHFmrEFへの遷移」は、「複合転帰リスクの減少」と関連していた。
フォローアップ期間中にHFrEFとなった場合、HFrEF→HFrEF(EF不変)と比較した、調整ハザード比は、
HFmrEF→HFrEF(EF減少):1.00(0.86~1.17)
HFpEF →HFrEF(EF減少):1.34(1.09~1.65)
となり、「HFpEFからHFrEFへの遷移」は、「複合転帰リスクの増加」と関連していた。
JACC Heart Fail. 2019 Apr;7(4):306-317.
結論:
本研究では、駆出率の経時的な増加はHFrEF患者とHFmrEF患者の4分の1、駆出率の低下は3分の1以上で観察された。
駆出率の変化は、様々な臨床的および組織的な要因と関連していた。
複合転帰(全死亡/心不全による入院)のリスクは、とくに、HFrEFへの遷移とHFrEFから遷移するEFの変化と独立して関連していることが示された。