PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34895860/
タイトル:A Systematic Review and Network Meta-Analysis of Pharmacological Treatment of Heart Failure With Reduced Ejection Fraction
<概要(意訳)>
背景:
現代の心不全に対する薬物療法は、組み合わせることによっての推定治療効果は十分に特徴づけられていない。
本研究は、HFrEF患者に対する薬物療法の総合的な治療効果を推定および比較することを目的とした。
方法:
「MEDLINE / EMBASEとコクランライブラリー(CENTRAL)」を使用して、1987年1月~2020年1月の間に発表されたランダム化比較試験について、体系的にネットワークメタアナリシスを実施した。
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体遮断薬)、β遮断薬、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、ジゴキシン、BiDil(ヒドララジンと二硝酸イソソルビド)、HCNチャネル阻害薬(イバブラジン)、ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、SGLT2阻害薬、sGC刺激薬(ベルイシグアト)、omecamtiv-mecarbil[参考:筋のミオシン-アクチンの結合を強化することで心筋の収縮力、収縮時間を改善させる新しいクラスの薬剤]を含めた。
主な評価項目は、「全ての原因による死亡(全死亡)」とした。
加えて、「心血管死または(初発の)心不全による入院」、「心血管死」を評価した。
また、BIOSTAT-CHF試験(参考:プロトコールにより、β遮断薬、ACE阻害薬、ARBの投与開始または漸増が推奨される心不全患者を対象とした前向き観察研究)およびASIAN-HF試験(参考:アジアの11地域が参加した前向き観察研究)で得られた寿命を推定した。
結果:
最終的に、75試験(被験者95,444例)を特定した。
全ての原因による死亡(全死亡)イベントは、17,684件であった。
プラセボと比較した、各心不全治療薬の「全死亡」のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
ARNI:0.75(95% CI: 0.66-0.85)
MRA:0.76(95% CI: 0.67-0.85)
β遮断薬:0.78(95% CI:0.72-0.84)
ACE阻害薬:0.89(95% CI: 0.82-0.96)
SGLT2阻害薬:0.88(95% CI: 0.78-0.99)
ARB:0.95(95% CI: 0.88-1.02)
sGC刺激薬:0.94(95% CI:0.79-1.11)
omecamtiv-mecarbil:1.00(95% CI:0.92-1.09)
となった。
心不全治療薬の組み合わせ(24通り)で、プラセボと比較した「全死亡」の相対リスク減少効果が大きかった上位5つの組み合わせは、
ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬:61% [HR 0.39(95%CI 0.31-0.49)]
ARNI+β遮断薬+MRA+sGC刺激薬:59% [HR 0.41(95%CI 0.32-0.53)]
ARNI+β遮断薬+MRA+omecamtiv-mecarbil:56% [HR 0.44(95%CI 0.36-0.55)]
ARNI+β遮断薬+MRA:56% [HR 0.44(95%CI 0.37-0.54)]
ACE阻害薬+β遮断薬+ジゴキシン+BiDil:54% [HR 0.46(95%CI 0.35-0.61)]
となり、「ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬」の組み合わせが、「全死亡リスクが最も低い組み合わせ」となった。
JACC Heart Fail. 2022 Feb;10(2):73-84.
心不全治療薬の組み合わせ(24通り)で、プラセボと比較した「心血管死または心不全による入院」の相対リスク減少効果が大きかった上位5つの組み合わせは、
ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬:64% [HR 0.36(95%CI 0.29-0.46)]
ARNI+β遮断薬+MRA+sGC刺激薬:57% [HR 0.43(95%CI 0.34-0.55)]
ARNI+β遮断薬+MRA+omecamtiv-mecarbil:56% [HR 0.44(95%CI 0.35-0.56)]
ARNI+β遮断薬+MRA:53% [HR 0.47(95%CI 0.38-0.58)]
ACE阻害薬+β遮断薬+HCNチャネル阻害薬:51% [HR 0.49(95%CI 0.39-0.61)]
となり、「ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬」の組み合わせが、「心血管死または心不全による入院リスクが最も低い組み合わせ」となった。
心不全治療薬の組み合わせ(24通り)で、プラセボと比較した「心血管死」の相対リスク減少効果が大きかった上位5つの組み合わせは、
ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬:67% [HR 0.33(95%CI 0.26-0.43)]
ARNI+β遮断薬+MRA+sGC刺激薬:65% [HR 0.35(95%CI 0.26-0.47)]
ARNI+β遮断薬+MRA+omecamtiv-mecarbil:64% [HR 0.36(95%CI 0.27-0.46)]
ARNI+β遮断薬+MRA:62% [HR 0.38(95%CI 0.31-0.47)]
ACE阻害薬+β遮断薬+MRA+HCNチャネル阻害薬:57% [HR 0.43(95%CI 0.35-0.54)]
となり、「ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬」の組み合わせが、「心血管死リスクが最も低い組み合わせ」となった。
JACC Heart Fail. 2022 Feb;10(2):73-84.
また、BIOSTAT-CHF試験およびASIAN-HF試験の2試験において、「ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬」の組み合わせは、無治療と比較して、「50歳のHFrEF患者で7.9年」、「70歳のHFrEF患者で5.0年」の寿命を延伸することが推定された。
JACC Heart Fail. 2022 Feb;10(2):73-84.
結論:
HFrEF患者において、「ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬」の組み合わせは、「全死亡」、「心血管死または心不全による入院」、「心血管死」に対するリスクを最小化することが推定された。
【参考情報】
ベリキューボ(ベルイシグアト)の作用機序【心不全】
https://passmed.co.jp/di/archives/15275
HFrEF患者、降圧薬の至適用量に性差/Lancet