血糖状態による冠動脈または脳血管疾患リスクと血圧との関連



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34035075/ 

タイトル:Associations of Systolic Blood Pressure and Diastolic Blood Pressure With the Incidence of Coronary Artery Disease or Cerebrovascular Disease According to Glucose Status

<概要(意訳)>

背景:

冠状動脈疾患(CAD)と脳血管疾患(CVD)から成る心血管疾患は、日本を含む全世界の主要な死因である。

高血圧(BP)は、心血管疾患のよく知られた強力な危険因子である。

日本のコホート研究であるNIPPONDATA 80では、収縮期血圧(SBP)レベルと心血管リスクに用量反応関係があることが示された。

しかしながら、その研究では、血糖状態(正常血糖、耐糖能異常、糖尿病)に応じた関係性を調査していなかった。

本研究では、「SBPおよびDBP」と「新規発症したCADまたはCVDリスク」との関係を血糖状態別に調査した。

方法:

全国の医療費データベースを使用して、2008年4月1日~2016年7月31日までに、少なくとも3年間追跡(2019年8月31日迄)した18〜64歳の被験者(ベースラインでCADまたはCVDの既往、1型糖尿病、血液検査を含む健康診断データがない被験者は除外)を対象とした。

Cox比例ハザードモデルを使用して、「SBPおよびDBPレベルの5分位範囲間」で「CADおよびCVDイベントリスク」を特定した。

結果:

CAD / CVDの既往がない被験者589,501 / 593,196例の内、

正常血糖は380,812 / 382,332例、耐糖能異常は172,151 / 173,376例、糖尿病は36,538 / 37,488例であった。

追跡期間中(中央値5.2年)、全体では2,240件のCADイベント、3,207件のCVDイベントが発生した。

CAD / CVDイベントの発生率(1,000人/年)は、正常血糖で0.34 / 0.69、耐糖能異常で0.83 / 1.19、糖尿病で3.52 /2.74であった。

SBPレベルの5分位範囲におけるCAD / CVDイベントの発生率(1,000人/年)は、119mmHg以下で0.27 / 0.48、120〜129mmHgで0.80 / 1.02、130〜139mmHgで1.18 / 1.50、140〜149 mmHgで1.78 /2.26、150mmHg以上で2.49 / 4.04であった。

DBPレベルの5分位範囲におけるCAD / CVDイベントの発生率(1,000人/年)は、74mmHg以下で0.28 / 0.49、75〜79mmHgで0.74 / 0.90、80〜84mmHgで1.02 / 1.26、85〜89 mmHgで1.32 /1.70、90mmHg以上で1.98 / 2.96であった。

Diabetes Care. 2021 Sep;44(9):2124-2131.

「正常血糖」におけるSBP≤119mmHgと比較した、SBPレベル別のCAD / CVDイベント発生率の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

120–129 mmHg:2.10(1.73–2.56)/1.46(1.27–1.68)

130–139 mmHg:2.35(1.89–2.92)/2.22(1.91–2.58)

140–149 mmHg:3.01(2.31–3.93)/2.98(2.46–3.60)

≥150mmHg:3.21(2.37–4.34)/4.76(3.94–5.75)となった。

「耐糖尿異常」の場合は、それぞれ、

120–129 mmHg:1.39(1.14– 1.69)/1.70(1.44–2.10)

130–139 mmHg:1.78(1.45–2.18)/1.89(1.58–2.25)

140–149 mmHg:1.89(1.48–2.43)/2.41(1.95–2.96)

≥150mmHg:2.52(1.95–3.26)/ 4.12(3.38–5.02)となった。

「糖尿病」の場合は、それぞれ、

120–129 mmHg:1.50(1.19–1.90)/1.72(1.31–2.26)

130–139 mmHg:1.46(1.14–1.86)/1.56(1.17–2.07)

140–149 mmHg:1.83(1.41–2.38)/1.99(1.47–2.71)

≥150mmHg:2.52(1.95–3.26)/ 3.54(2.66–4.70)となった。

従って、一般的に、CAD / CVDリスクは、血糖状態に関係なく、SBPレベルの増加に伴い上昇した。

「正常血糖」におけるDBP≤74mmHgと比較した、DBPレベル別のCAD / CVDイベント発生率の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

75–79 mmHg:1.59(1.25–2.01)/1.40(1.19–1.66)

80–84 mmHg:1.91(1.53–2.38)/1.76(1.50–2.06)

85–89 mmHg:2.56(2.02–3.24)/2.49(2.10–2.96)

≥90mmHg:2.99(2.39–3.74)/4.03(3.46–4.69)となった。

「耐糖尿異常」におけるDBP≤74mmHgと比較した、DBPレベル別のCAD / CVDイベント発生率の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

75–79 mmHg:1.30(1.03–1.63)/1.25(1.02–1.54)

80–84 mmHg:1.43(1.15–1.77)/1.80(1.51–2.15)

85–89 mmHg:1.46(1.15–1.85)/2.01(1.66–2.45)

≥90mmHg:2.20(1.79–2.71)/ 3.27(2.76–3.87)となった。

「糖尿病」におけるDBP≤74mmHgと比較した、DBPレベル別のCAD / CVDイベント発生率の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

75–79 mmHg:1.33(1.04–1.71)/1.34(1.02–1.77)

80–84 mmHg:1.38(1.09–1.74)/1.19(0.91–1.55)

85–89 mmHg:1.42(1.10–1.82)/1.35(1.01–1.79)

≥90mmHg:1.79(1.43–2.25)/2.25(1.76–2.86)となった。

従って、一般的に、CAD / CVDリスクは、血糖状態に関係なく、DBPレベルの増加に伴い上昇した。

Diabetes Care. 2021 Sep;44(9):2124-2131.

結論:

本研究では、血糖状態(正常血糖、耐糖尿異常、糖尿病)に関わらず、収縮期血圧および拡張期血圧レベルの増加に伴い、心血管疾患(冠動脈疾患、脳血管疾患)リスクが徐々に増加することが示された。

この結果を臨床診療に適用するには、更なる介入試験が必要だろう。

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