日本の非糖尿病健診受診者における貧血有無とHbA1cとの関連性



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31605656/ 

タイトル:Associations of Anemia and Hemoglobin With Hemoglobin A1c Among Non-Diabetic Workers in Japan

<概要(意訳)>

背景:

HbA1cの値は、貧血の種類によって増加、または減少する可能性がある。

過去に様々な研究が報告されているが、非貧血の範囲におけるヘモグロビンとHbA1cの関連は未だ分かっていない。

本研究では、貧血と非貧血の健診受診者におけるヘモグロビンとHbA1cの関連を調査した。

方法:

J‐ECOH研究において、非糖尿病の健診受診者36,422人の2016年度(2016年1~12月、4月~2017年3月)の健康診断データを調査した。

貧血は、世界保健機関(WHO)の基準であるヘモグロビン値<13 g/dL(男性)、<12 g/dL(女性)と定義した。

貧血の被験者は、MCV(平均赤血球容積)値に基づき、<80、80-90、> 90 fLの3群に分けた。

非貧血の被験者は、ヘモグロビン値に基づき、男性は「13.0 to <14.5、14.5 to <16.0、16.0 to<17.5、≥17.5 g/dL」の4群に分け、女性は「12.0 to <13.0、13.0 to <14.0、14.0 to <15.0、 ≥15.0 g/dL」の4群に分けた。

結果:

男性の98.4%は非貧血であり、0.2%はMCV 80<の貧血、0.5%はMCV 80-90の貧血、0.9%はMCV> 90の貧血であった。

女性の84.7%は非貧血であり、6.1%はMCV 80<の貧血、6.4%はMCV 80-90の貧血、2.8%はMCV> 90の貧血であった。

また、アルコール摂取量(非飲酒、軽度飲酒、大量飲酒)別における貧血の有病率には、実質的な差はなく、男性の有病率は、それぞれ1.9%、1.6%、1.5%であり、女性では17.5%、15.2%、10.8%であった。

非貧血の被験者では、現喫煙者、BMIと空腹時血糖値(FPG)の平均値が高い人は、ヘモグロビンレベルが高かった。

年齢、職場、BMI、喫煙、FPGの調整後において、MCV <80、または80–90の貧血の男女のHbA1cの平均値は、非貧血の男女よりも高かった。

この結果は、さらにアルコール摂取量で調整しても同様であった。

全体として、MCV>90の貧血の男女のHbA1cは、非貧血の男女よりも低かった。

MCV>90の貧血の男性と貧血予備軍(ヘモグロビン値13.0 to <14.5)の男性間におけるHbA1c(%)の絶対差は、-0.05(95%CI -0.08、-0.02)であった。

貧血予備軍(ヘモグロビン値12.0 to <13.0)の女性間におけるHbA1c(%)の絶対差は、-0.07(95%CI -0.02、-0.11)であった。

全体として、MCV>90 の貧血の男女のHbA1cは、MCV <80、または80–90の貧血の男女よりも低かった。

MCV> 90の貧血の男性とMCV <80、または80–90の貧血の男性間におけるHbA1c(%)の絶対差は、それぞれ、-0.27(95%CI -0.34、-0.19)、または-0.18(95 %CI -0.23、-0.12)であった。

女性間におけるHbA1c(%)の絶対差は、-0.22 (95% CI -0.27, -0.17)、または-0.19 (95% CI -0.23, -0.14)であった。

全体として、非貧血の男女におけるHbA1c(%)の上昇は、ヘモグロビン値の低下と関連していた。

年齢、職場、BMI、喫煙、FPGの調整後において、男性のHbA1c(%)は、ヘモグロビン値≧17.5の場合、5.36%(5.34 – 5.39)となり、ヘモグロビン値13.0 to <14.5の場合、5.45%(95%CI 5.45 – 5.46)に増加した(trend p< 0.001)。

女性のHbA1c(%)は、ヘモグロビン値≧15.0の場合、5.30%(95%CI 5.26 – 5.34)となり、ヘモグロビン値12.0 to <13.0の場合、5.39%(95%CI 5.37 – 5.41)に増加した(trendp<0.001)。

結論:

本研究では、MCV(平均赤血球容積)<80、または80 – 90 fLの貧血の男女間で、HbA1c値の上昇を観察し、MCV>90の貧血の人々の間では、HbA1c値の低下を観察した。

ゆえに、貧血のタイプ[参考:MCV<80(小球性)、80~100(正球性)、100<(大球性)]が及ぼすHbA1cへの影響は異なることが示唆された。

HbA1cが糖尿病予備軍のカットオフ値である5.7%と糖尿病のカットオフ値である6.5%の貧血の人々のHbA1c値を評価するときは注意が必要だろう。

さらに、ヘモグロビン値が低い非貧血の被験者[ヘモグロビン値13.0 to <14.5(男性)、ヘモグロビン値12.0 to <13.0(女性)]は、HbA1c値が高かった。

将来的には、非貧血の人々におけるHbA1c値を解釈する際には、ヘモグロビンレベルを考慮する必要があるだろう。

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