PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34385344/
タイトル:Serum Magnesium Is Inversely Associated With Heart Failure, Atrial Fibrillation, and Microvascular Complications in Type 2 Diabetes
<概要(意訳)>
目的:
2型糖尿病(T2D)における血清マグネシウム(Mg2+)と「大血管または細小血管の合併症」の関連と血糖コントロール(HbA1c)の媒介効果を調査した。
方法:
4,348例の被験者を対象に、血清Mg2+と「大血管疾患(急性心筋梗塞[AMI]、冠動脈疾患[CHD]、心不全[HF]、脳血管障害[CVA]、末梢動脈疾患[PAD]、心房細動[AF])および死亡率と細小血管合併症(慢性腎臓病[CKD]、糖尿病性網膜症、糖尿病性足病変)」との関連をCox回帰分析により推定した。
血清Mg2+(mmol/L)は、四分位[Q1:<0.75、Q2:0.75–0.80、Q3:0.80–0.85、Q4:≧0.80]に分類した。
また、これらの関連におけるHbA1cの媒介効果を検定した。
結果:
被験者(平均年齢65±11、糖尿病罹病期間7±6、男性56%)のベースライン平均血清Mg2+濃度は、0.80±0.08 mmol/L[参考:血清マグネシウム基準値:0.75~1.05 mmol/L(1.8~2.6 mg/dL)]であった。
6.1年の追跡期間中における血清Mg2+と大血管疾患の関連(Model 2)は、それぞれ、
大血管疾患(AMI、CHD、HF、CVA、PAD):HR 0.87(95%CI 0.76-1.00)、p=0.054
AMI(急性心筋梗塞):HR 0.89(95%CI 0.68-1.17)、p=0.402
CHD(冠動脈疾患):HR 0.97(95%CI 0.79-1.18)、p=0.733
HF(心不全):HR 0.76(95%CI 0.62-0.93)、p=0.008
CVA(脳血管障害):HR 0.83(95%CI 0.66-1.04)、p=0.105
PAD(抹消動脈疾患):HR 1.02(95%CI 0.80-1.30)、p=0.880
AF(心房細動):HR 0.59(95%CI 0.49-0.72)、p<0.001
となり、血清Mg2+は「HF、AF」と逆相関することが示された。
5.1年の追跡期間中における血清Mg2+と細小血管合併症の関連(Model 2)は、それぞれ、
細小血管障害(CKD、糖尿病性神経障害、糖尿病性足病変):HR 0.85(95%CI 0.78-0.91)、p<0.001
CKD(慢性腎臓病):HR 0.89(95%CI 0.82-0.96)、p=0.003
糖尿病性神経障害:HR 0.77(95%CI 0.61-0.98)、p=0.031
糖尿病性足病変:HR 0.85(95%CI 0.78-0.92)、p<0.001
となり、血清Mg2+は「細小血管障害(全体)、CKD、糖尿病性神経障害、糖尿病性足病変」と逆相関することが示された。
また、HbA1c(per 5 mmol/L)は、血清Mg2+と「HF、細小血管障害(全体)、糖尿病性網膜症、糖尿病性足病変」との関連に媒介効果があることが示された。
Diabetes Care. 2021 Aug;44(8):1757-1765.
結論:
血清Mg2+濃度は、2型糖尿病における「心不全、心房細動、CKD、糖尿病性網膜症、糖尿病性足病変」の発症リスクと逆相関することが示された。
血糖コントロールは、血清Mg2+濃度と「心不全および細小血管合併症(CKD、糖尿病性網膜症、糖尿病性足病変)」との関連に媒介効果があることが示された。
【参考情報】
血清マグネシウム基準値
媒介分析・マルチレベル媒介分析