2型糖尿病における血糖治療の薬理学的アプローチ(ADA2021)



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33298420/ 

タイトル:9. Pharmacologic Approaches to Glycemic Treatment: Standards of Medical Care in Diabetes-2021

<概要(意訳)>

☆第一選択の治療は、「メトホルミンと包括的なライフスタイル(体重管理と身体活動を含む)」である。

 

☆しかしながら、「アテローム性動脈硬化症のハイリスク/合併」 、あるいは「CKD/心不全の合併」がある場合は、「ベースラインのHbA1c値/HbA1cの個別目標値/メトホルミンの使用」とは切り離して検討する

「アテローム性動脈硬化症のハイリスク/合併」の具体例は、下記に示す。

・アテローム性動脈硬化症のハイリスク指標

:55歳以上、左室肥大、冠動脈/頸動脈/下肢動脈の狭窄率が50%超

・確立されたアテローム性動脈硬化症

 

『アテローム性動脈硬化症のハイリスク/合併』を有する症例は、

心血管疾患のベネフィットが証明されている“GLP-1受容体作動薬 又は SGLT2阻害薬”

を選択する。

 

次に、「HbA1cが目標値以上で更なる治療強化が必要」の場合、または「GLP-1受容体作動薬/SGLT2阻害薬に対する忍容性が不良である」場合は、

心血管疾患のベネフィット および/または 安全性が証明されている薬剤を下記から選択する。

・GLP-1受容体作動薬を投与している患者には、心血管疾患のベネフィットが証明されているSGLT2阻害薬の追加を検討(その逆も同様である)。

・チアゾリジン薬

・GLP-1受容体作動薬を投与中でなければDPP-4阻害薬を追加する

・基礎インスリン

・SU薬

 

 『心不全(とくに、左室駆出率45%未満のHFrEF患者)』を有する症例は、

心不全のベネフィットが証明されている SGLT2阻害薬を選択する。

 

『糖尿病性腎臓病(DKD)とアルブミン尿』を有する症例は、下記から薬剤を選択する。

・CKDの進行を遅らせる主要エビデンスがあるSGLT2阻害薬

・心血管アウトカム試験でCKDの進行を遅らせるエビデンスがあるSGLT2阻害薬

・心血管疾患のベネフィットが証明されているGLP-1受容体作動薬

 

『糖尿病性腎臓病(DKD)とアルブミン尿がないCKD(eGFR<60mL/min/ 1.73m)合併2型糖尿病』の症例は、下記から薬剤を選択する。

・心血管疾患のベネフィットが証明されているSGLT2阻害薬

・心血管疾患のベネフィットが証明されているGLP-1受容体作動薬

 

「アテローム性動脈硬化症のハイリスク/合併」 、あるいは「CKD/心不全の合併」がなくHbA1cが個別目標値以上で・・・

『低血糖リスクを重視する場合』は、下記の順で薬剤を選択する。

・DPP-4阻害薬でHbA1cが個別目標値以上の場合、SGLT2阻害薬/チアゾリジン薬を追加

・GLP-1受容体作動薬でHbA1cが個別目標値以上の場合、SGLT2阻害薬/チアゾリジン薬を追加

・SGLT2阻害薬でHbA1cが個別目標値以上の場合、GLP-1受容体作動薬/DPP-4阻害薬/チアゾリジン薬を追加

・チアゾリジン薬でHbA1cが個別目標値以上の場合、SGLT2阻害薬/DPP-4阻害薬/GLP-1受容体作動薬を追加

 

上記の薬剤を組み合わせてもHbA1cが個別目標値以上の場合は、下記を検討する。

・低血糖のリスクがより低い、より新しい世代のSU薬を選択

・低血糖のリスクがより低い、基礎インスリンを選択

 

 

『体重増加の抑制、減量を重視する場合』は、下記の順で薬剤を選択する。

・体重減少に良好な有効性を示すGLP-1受容体作動薬を選択し、HbA1cが個別目標値以上の場合は、SGLT2阻害薬を追加する。

・SGLT2阻害薬を選択し、HbA1cが個別目標値以上の場合は、GLP-1受容体作動薬を追加する。

 

上記の薬剤を組み合わせてもHbA1cが個別目標値以上で、4剤併用療法が必要な場合、または、SGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬の忍容性が不良、禁忌である場合は、下記を検討する。

・(GLP-1受容体作動を投与中でなければ)体重に影響を与えないDPP-4阻害薬

・DPP-4阻害薬の忍容性が不良、禁忌であり、GLP-1受容体作動を投与中の場合は、

SU薬、チアゾリジン薬、基礎インスリンから選択

 

 

『薬剤費用を重視する場合』は、下記の順で薬剤を選択する。

・SU薬でHbA1cが個別目標値以上の場合、チアゾリジン薬を追加

・チアゾリジン薬でHbA1cが個別目標値以上の場合、SU薬を追加

 

上記の薬剤を組み合わせてもHbA1cが個別目標値以上の場合、下記を検討する。

・費用が最も安い基礎インスリン

・費用に基づき他の治療法

Diabetes Care. 2021 Jan; 44(Suppl 1): S111-S124.

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