PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33097560/
タイトル:Time in Range in Relation to All-Cause and Cardiovascular Mortality in Patients With Type 2 Diabetes: A Prospective Cohort Study
<概要(意訳)>
背景:
血糖コントロールの新たな評価指標であるTIR[参考情報:70~180mg/dLを治療域(Target Range)とし、この範囲内の測定回数または時間をTIR(Time in Range)、治療域より低値域をTBR(Time Below Range)、高値域をTAR(Time Above Range)と定義し、このTIRが70%である場合、JDSやISPADでも目標値として掲げられているHbA1c 7.0%を達成できる可能性があるとされている]は、糖尿病関連の転帰に関連するエビデンスが増加している。
本研究では、2型糖尿病患者のTIRと死亡率の関連をした。
方法:
2005年1月~2015年12月の間、中国上海にある単一施設における合計6,225例の成人2型糖尿病患者を対象とした。
CGM(持続血糖測定)のセンサーは、入院初日(0日目)に挿入され、72時間後に取り外され、288回/日の記録データが集計された。
3日間のCGM期間中、25 kcal/kg/日の総カロリー摂取量を確保する標準的な食事(カロリーの55%は炭水化物、17%はタンパク質、28%は脂肪)が提供された。
TIRは、24時間における3.9〜10.0 mmol / L(70~180mg/dL)の血糖値範囲の割合(%)として定義された。
CGMで測定されたTIRによって、「> 85%、71–85%、51–70%、≤50%」の4群に階層化された。
Cox比例ハザード回帰モデルを使用して、TIRレベルと全死亡、心血管死との関連を推定した。
結果:
ベースラインの特性は、「年齢61.7歳、男性54.7%、糖尿病の罹病期間9.7年、HbA1c 8.9%(74.0 mmol/mol)であった。
TIRの25パーセンタイル、50パーセンタイル、75パーセンタイルは、それぞれ48.5%、68.5%、84.0%であった。
ベースラインの特性で「BMI」はTIRレベルと正の相関を示し、「年齢、糖尿病の罹病期間、収縮期血圧、総コレステロール、LDL、トリグリセリド、HbA1c、CVDの既往、インスリン、降圧薬、アスピリン、スタチンの使用」は負の相関を示した。
追跡期間(中央値6.9年)の間に、838例の全死亡が確認され、その内287例は心血管死であった。
多変量(年齢、性別、喫煙、糖尿病の罹病期間、BMI、収縮期血圧、トリグリセリド、HDL、LDL、癌、CVDの既往、降圧薬、アスピリン、スタチンの使用)を調整したモデル2において、
TIR>85%を参照群とした場合における「全死亡」のハザード比(HR)は、それぞれ、
TIR 71–85%:1.23(95%CI 0.98–1.55)
TIR 50–70%:1.30(95%CI 1.04–1.63)
TIR ≦50%:1.83(95%CI 1.48–2.28)
となり、傾向p値<0.001であった。
TIR>85%を参照群とした場合における「心血管死」のハザード比(HR)は、それぞれ、
TIR 71–85%:1.35(95%CI 0.90–2.04)
TIR 50–70%:1.47(95%CI 0.99–2.19)
TIR ≦50%:1.85(95%CI 1.25–2.72)
となり、傾向p値=0.015であった。
また、TIR 10%減少するごとに、「全死亡」と「心血管死」のHRは、それぞれ、
1.08(95%CI 1.05–1.12)と1.05(95%CI 1.00–1.11)になった。
交絡因子を調整後の2型糖尿病患者における「全死亡と心血管死のリスク」とベースラインのHbA1cレベルにはJ字型の関連が示された。
HbA1c 6.0〜6.9%の参照群と比較した、HbA1c<6%、HbA1c≧8%の「全死亡リスク」は、それぞれ、HR 1.53(95%CI 1.02-2.31)、HR 1.65(95%CI 1.27-2.13)の増加を示した。
HbA1c 6.0〜6.9%の参照群と比較した、HbA1c<6%、HbA1c≧8%の「心血管死リスク」は、それぞれ、HR 1.91(95%CI 0.97-3.78)、HR 2.32(95%CI 1.47-3.67)の増加を示した。
Diabetes Care. 2021 Feb; 44(2): 549-555.
結論:
2型糖尿病患者の血糖コントロールの指標であるTIRの低下は、全死亡と心血管死のリスク増加との関連が示された。
TIRは、長期的な有害転帰の代理マーカーとして有効であることが示唆された。
【参考情報】
糖尿病治療におけるTime in Range(TIR)の重要性と血糖トレンドの活用
http://dm-rg.net/contents/trend/005.html?pr=dmrg009
傾向検定
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/clinicaljournalclub17.html