心不全患者における気管支喘息の予後への影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31970511/ 

タイトル:Prognostic Role of Bronchial Asthma in Patients With Heart Failure

背景:

気管支喘息(BA)と心不全(HF)の関係を調査した報告は、ほとんどない。 我々は、BAはHF患者の予後に影響を与える可能性があると仮説を立てた。

方法:

2012年8月~2016年12月における連続323人のHF外来患者のうち、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併してない191人のHF患者[BA非合併HF患者は171人(89.5%)、BA合併HF患者は20人(10.5%)、平均BA罹病期間:9.6年]を登録対象とした。

主要評価項目は、「全ての原因による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中、うっ血性HFによる入院の複合」とした。

結果:

年齢、性別、BMI、HF入院歴は、BA合併HF患者とBA非合併HF患者の間で有意な差はなかった。

BA非合併HF患者と比較してBA合併HF患者では、喘息治療薬の使用頻度は高かったが、ループ利尿薬およびβ遮断薬の使用頻度は少なかった。

収縮期血圧(133±22 mmHg vs 120±17 mmHg、p=0.003)と心拍数(83±14 bpm vs 74±15 bpm、p=0.02)は、BA合併HF患者で有意に高かった。

好酸球数に有意な差はなかったが、白血球数(7.3±2.1×10 /μL vs 6.0±1.9×10 /μL、p=0.004)はBA合併HF患者で有意に高かった。

推定糸球体濾過量(56±21 mL/min/1.73m2 vs 51±19 mL min/1.73 m2、p = 0.33)と血中BNP値(142 [86–210] pg/mL vs 212 [105–429] pg/mL、p=0.10)は、各群で同等であった。

左室駆出率(LVEF)は、60±16% vs 51±16%(p=0.03)であり、HFpEF(LVEF≥50%)の有病率は、80.0 % vs 55.6%(p=0.04)で、BA合併HF患者の方がHFpEFの有病率が高かった。

45人(23.6%)の患者が追跡期間中(中央値24ヶ月[四分位範囲15〜35ヶ月])に、主要評価イベント(全ての原因による死亡:9人、うっ血性心不全による入院:32人、非致死的心筋梗塞:0人、非致死的虚血性脳卒中:4人)を発症した。

主要評価イベントの発生率は、BA非合併HF患者と比較してBA合併HF患者で有意に高かった[45%(n=9)vs 21%(n =36)、Log-rank p=0.03]。

単変量[HR:2.23、95% CI:1.07 – 4.63、p=0.03]、および多変量[HR:3.08、95% CI: 1.42 – 6.71、p=0.004,]Cox回帰分析において、BA合併HF患者の主要評価イベント発生率は一貫して有意に高かった。

HFpEF(LVEF≥50%) 患者のサブ解析でも同様に、BA合併HF患者の主要評価イベントの発生率が高かった(Log-rank p=0.03)。

結論:

気管支喘息を合併した心不全患者の多くは、左室駆出率が保たれたHFpEFの有病率が高く、気管支喘息を合併しない心不全患者と比較して、主要評価イベントの発生率は高かった。

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