心不全で入院した高齢患者の疫学と臨床的特徴



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32434698/ 

タイトル: Epidemiology and Clinical Characteristics of Hospitalized Elderly Patients for Heart Failure With Reduced, Mid-Range and Preserved Ejection Fraction

<概要(意訳)>

背景:

心不全(HF)で入院した高齢患者の死亡率は高く、エビデンスに基づいた治療は必要であるが、80歳以上の患者を含めた研究は少ない。

本研究の目的は、HFで入院した高齢患者の臨床的特徴、治療状況、臨床転帰を評価することである。

方法:

Journey-HF研究はトルコの37施設で実施され、2015年9月~2016年9月の間にHFで入院した1606人の患者が募集された。

左室駆出率(LVEF)による心不全分類(HFrEF、HFmrEF、HFpEF)別に、65〜79歳および80歳以上の患者の評価項目を比較した。

結果:

合計1,034人の高齢患者(65-79歳:71.6%、80歳以上:28.4%)が対象となった。 65〜79歳のLVEF内訳は、「HFrEF:67.4%、HFmrEF:16.2%、HFpEF:16.3%」であった。

80歳以上のLVEF内訳は、「HFrEF:61.6%、HFmrEF:15.6%、HFpEF:22.8%」であった。 80歳以上では、HFpEF患者の平均年齢が最も高かった。

また、DMとCADの有病率はHFmrEF患者の方が高かったが、AFの有病率はHFpEF患者の方が高かった。

65〜79歳のHFrEF患者では、男性と喫煙者が多く、DM、CAD、高脂血症、NYHA分類I〜IIの有病率が高かった。一方で、貧血、AF、NYHA分類III〜IVの有病率は、80歳以上のHFrEF患者より低かった。

HFpEFの高齢患者では、DMの有病率は65〜79歳で高かったが、AFの有病率は80歳以上で高かった。

ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬の使用率は、両年齢層のHFrEF患者で高かった。

利尿剤の使用率は、65〜79歳のHFmrEF(50%)患者と比較して、80歳以上のHFmrEF(73.3%)患者で有意に高く(p=0.04)、β遮断薬の使用率は80歳以上のHFpEF(43.3%)患者と比較して、65〜79歳のHFpEF(60.3%)患者で高かった(p=0.025)。

ジゴキシンの使用率は、80歳以上のHFmrEF(10.9%)患者と比較して、65〜79歳のHFmrEF(25.8%)患者で高かった(p=0.036)。

65~79歳のHFrEF(21.6%)患者は、HFmrEF(19.2%)とHFpEF(11.6%)患者と比較して、ACSは心不全入院の促進因子であった(p=0.043)。

80歳以上のHFrEF(28.9%)患者でも、HFmrEF(26.1%)とHFpEF(13.6%)患者と比較して、ACSは心不全入院の促進因子であった(p=0.049)。

80歳以上の入院期間は、HFrEF(3.9±3.3日)およびHFpEF(4.8±5日)患者と比較して、HFmrEF(4.8±6.5日)患者の方が長かった(p=0.026)。

80歳以上のHFmrEF患者の死亡率は、65〜79歳のHFmrEF患者よりも高かった(7.5% vs 1.7%、p=0.009)。

結論:

心不全で入院した高齢心不全患者は、心不全サブタイプ(HFrEF、HFmrEF、HFpEF)別に固有の臨床特徴があり、ガイドラインで推奨されている薬物治療介入率は低かった。

高い院内死亡率を改善する為にも、より効果的な治療戦略が必要であることが示唆される。

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