PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32592517/
タイトル:Prognostic impacts of dynamic cardiac structural changes in heart failure patients with preserved left ventricular ejection fraction
<概要(意訳)>
背景:
HFpEF患者(LVEF≧50)の増加は顕著であるが、その病態は複雑であり、未だ有効な治療法は開発されていない。
最近、我々はHFpEF患者では、年数が経過しても LVEF が殆ど変化しないことを明らかにしたが、左室肥大(LVH)や左室拡大(LVE)などの左室構造変化が経年的に変化するのか否かは不明であった。
そこで今回は、左心(LV)構造の経年的変化がHFpEF患者の生命予後に与える影響を調査した。
方法:
CHART-2研究(N=10,219)において、連続2,698例のHFpEF患者(68.9±12.2歳、女性32.1%)をベースライン時の左室肥大(LVH)と左室拡大(LVE)によって3つのグループ[(-)LVH/(-)LVE (N=989)、(+)LVH/(-)LVE (N=1,448)、(+)LVH/(+)LVE (N=261)]に分類した。
8.7年(中央値)の追跡期間における左室(LV)構造の経年的変化とHFpEF患者の予後への影響を調査した。
結果:
ベースライン時の(-)LVH/(-)LVE、(+)LVH/(-)LVEから(+)LVH/(+)LVEまでの主要評価項目(心血管死、または心不全入院の複合)の発生率は有意に増加した。
ベースラインと1年後に心エコー検査を受けた1,808人において、下記のLV構造変化率が認められた。
(-)LVH/(-)LVE から (+)LVH/(-)LVEへのLV変化率は、27%(182/671)となった。
(+)LVH/(-)LVE から (-)LVH/(-)LVEへの変化率は、22% (213/967)となった。
(+)LVH/(-)LVE から (+)LVH/(+)LVEへの変化率は、6% (59/967)となった。
(+)LVH/(+)LVE から (+)LVH/(-)LVEへの変化率は、26% (44/170)となった。
単変量Cox比例ハザードモデルでは、ベールライン時から1年後も(-)LVH /(-)LVEを維持した患者と比較して、
(+)LVH/(-)LVE から (+)LVH/(+)LVEへ変化した患者の予後は不良であった[HR 4.65, 95% CI (3.09‐6.99), P<0.001]。
ベースライン時から1年後も(+)LVH/(+)LVEを継続した患者の予後は不良であった[HR 4.01, 95% CI (2.85‐5.65), P<0.001]。
これらの結果は、ベースラインから1年後のLVEF(左室駆出率)の変化を含めた共変量の調整後も変わらなかった。
結論:
HFpEF患者の左室(LV)構造は経時的に変化し、左室肥大(LVH)と左室拡大(LVE)へ移行した患者の予後は最も悪かった。
よって、LVのリモデリングと逆リモデリングの観点から、左室心筋重量(left ventricular mass)と左室容積(left ventricular volume)の経年的変化に更なる注意を払うことは、HFpEF患者のより良い管理に繋がるだろう。
【参考情報】
心肥大と心拡大の違い
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph91.html#s1
循環器学用語集