PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32546593/
タイトル:Diabetes and COVID-19: Risks, Management, and Learnings From Other National Disasters
<概要(意訳)>
【糖尿病を罹患したCOVID-19患者の管理】
COVID-19関連のコンセンサスレポートの大半は、メトホルミン、SGLT2阻害薬の中止を推奨している。
入院中のCOVID-19患者には、とくにDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、インスリンの選択が好ましいだろう。
糖尿病のCOVID-19患者に対するACE阻害薬とARBの使用は、予後の悪化に関連しているという議論があったが、有用性を示すデータを考慮して現在は治療の継続を推奨する。
入院時は最初に、「高血圧、糖尿病、肥満、喫煙」の有無を評価する。
一つ以上該当する場合は、ハイリスク患者(肺疾患、冠動脈疾患、心筋梗塞、心不全、不整脈、一過性脳虚血発作/脳卒中、末梢動脈疾患、慢性腎臓病)を同定する。
ハイリスク患者に該当する場合は、「高感度CRP、eGFR<60のクレアチニン、HbA1c>7.5%、高血糖、血液ガス分析、高感度トロポニン、BNP/NT-proBNP、D-ダイマー、フェリチン、クレアチンキナーゼ」のバイオマーカーを評価する。
ICU(集中治療室)に入院しない場合は、
「メトホルミン、SU薬、SGLT2阻害薬、ピオグリタゾン、αグルコシダーゼ阻害薬」の使用を禁忌とし、「DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬インスリン(皮下注)」を血糖コントロールの選択肢とする。CGMで血糖変動を測定する。実験的に使用するヒドロキシクロロキン等の抗COVID-19薬の血糖への影響を考慮する。ACE阻害薬/ARB、スタチンの使用は継続する。適切な抗凝固療法を実施する。
ICU(集中治療室)に入院する場合は、
全ての経口糖尿病治療薬とインスリン(皮下注)を中止し、静注投与のインスリン(シリンジポンプ)で血糖コントロールを行う。CGMで血糖変動を測定する。ACE阻害薬/ARB、スタチンの使用は継続する。適切な抗凝固療法を実施する。
Diabetes Care 2020 Aug;43(8):1695-1703.
【COVID-19禍の糖尿病患者に対するガイダンスと推奨事項】
[入院患者]
糖尿病チームによる血糖と栄養の管理体制の継続と強化、オンライン面談の考慮も必要である。
[外来患者]
1型糖尿病の新規診断、緊急でインスリンを開始する状況(HbA1c>10%、ケトン体の上昇)、血糖モニタリングの方法を教える場合、足の潰瘍、感染症、妊婦等の診察が不可欠な場合は、対面による診察が必要である。
新規診断した1型糖尿病のフォローアップ、虚弱な患者(最近の入院、重度の低血糖の再発、HbA1c>11%、)、高リスク状況での集中的なフォローアップ、対面による診察のメリットよりリスクの方が大きい場合は、オンライン面談(電話、ビデオ、メール等)が推奨される。
[ルーチンケア]
個々のリスク要因と臨床ニーズを考慮して、より広範で長期的な管理に必要な糖尿病ケアを優先順位に基づいて定期的に実施する。
糖尿病が安定している場合、対面式の糖尿病教育、フラッシュグルコースモニタリング(FGM)の開始、予定を延期しても糖尿病ケアが損なわれない場合は、延期するべきである。
[フットケア]
可能であればオンライン面談を考慮し、糖尿病ケアサポートを継続する必要があるが、四肢に重篤な問題を抱えている患者の対面による診察は継続する必要がある。
全ての新規紹介患者は、24時間以内に確認することが理想的である。
[妊婦]
可能であればオンライン面談を考慮し、糖尿病ケアサポートを継続する必要がある。
妊娠中の何回かは、診察、および/または血糖モニタリングの対面指導によるサポートが重要である。
[血液検査]
腎機能の低下、高カリウム血症、低ナトリウム血症等の場合は、血液検査によるモニタリングを継続する必要がある。
[糖尿病網膜症のスクリーニング]
レビューされたガイダンスでは言及されてないが、感染リスクが高いため、中止されている。
【COVID-19後】
COVID-19パンデミックがどのように終結し、その後は何が残るかについては多くの不確実性がある。
国の緊急事態による混乱は、特に社会経済的地位の低い人々やインスリンで治療された人々におけるHbA1cに16か月間、悪影響を与える可能性があるというエビデンスがある。
日常的なヘルスケアへのアクセスの欠如は、災害後の脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病合併症の罹患率、死亡率を上昇させる主な原因となる。
感染リスクを最小限に抑えながら、糖尿病ケアサービスを継続する為に、糖尿病クリニック等は組織を再考する場合があるだろう。