心不全患者の健康関連 QOL と死亡率との関連



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33906372/ 

タイトル:Health-Related Quality of Life and Mortality in Heart Failure: The Global Congestive Heart Failure Study of 23,000 Patients from 40 Countries

<概要(意訳)>

背景:

心不全(HF)では、健康関連のQOL(HRQL)が低下することは一般的であるが、欧米諸国以外における心不全患者のHRQLと死亡率に関連するデータは殆どない。

方法:

G-CHF  (グローバルうっ血性心不全)研究において、世界の主要な8つの地理的地域から40カ国(北米、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、東アジア、南アジア、アフリカ、南アメリカ、中東)の心不全患者23,291例にカンザスシティ心筋症質問票-12 [KCCQ-12;4つの領域(身体活動制限、症状、生活の質、社会的制限)] を使用して健康関連QOL(HRQL)を記録した。

標準化(年齢、性別、心不全重症度で調整済み)されたKCCQ-12合計スコア(スコアの範囲は0~100で、スコアが大きいほどHRQLが優れていることを示す)を地域間で比較した。

15の変数を調整した多変量Cox回帰分析を使用して、追跡期間(中央値1.6年)におけるKCCQ-12合計スコアと「全ての原因による死亡(全死亡)、心不全による入院、全死亡または心不全による入院」の関連を評価した。

結果:

被験者のベースライン特性は、平均年齢 65歳、男性 61%、NYHA Ⅲ度/Ⅳ度 40%、40%以上の左室駆出率(LVEF) 46%であった。

 

KCCQ-12合計スコアは、地域間で異なっていた(北米:58.2±0.5、西ヨーロッパ:62.5±0.4、東ヨーロッパ:51.3±0.6、東アジア:54.9±0.6、南アジア:54.9±0.6、アフリカ:39.5±0.3、南アメリカ:56.2±0.5、中東:61.6±0.6)。

 

心不全重症度による、各KCCQ-12合計スコアは、「NYHAⅠ度:77.9±0.5、Ⅱ度:61.1±0.2、Ⅲ度:41.5±0.3、Ⅳ度:29.4±0.5」となった(p<0.0001)。

 

左室駆出率による、各KCCQ-12合計スコアは、「LVEF≧40%:54.6±0.3、LVEF<40%:52.8±0.2」となった(p<0.0001)。

 

全体で「4,460例(19%)の全死亡、3,885例(17%)の心不全による入院、6,949例(30%)の全死亡または心不全による入院」のイベントが発生した。

 

24ヶ月における「全死亡、心不全による入院、全死亡または心不全による入院」のイベント発症率をKCCQ-12合計スコア別(0-24、25-49、50-74、75-100の4群)に分析すると、このスコアの低下に伴い、全てのイベント発症率が上昇することが示された。

Circulation. 2021 Apr 28. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.050850.

これらの関連は全ての地域で観察されたが、南アジアではそれほど顕著ではなく[1.08 (95% CI 1.03-1.14)]、東ヨーロッパでは最も顕著な関連が示された[1.31(95% CI 1.21-1.42)](p<0.0001)。

Circulation. 2021 Apr 28. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.050850.

24ヶ月における「全死亡率」をKCCQ-12合計スコア別(0-24、25-49、50-74、75-100の4群)と心不全重症度別(Ⅰ&Ⅱ度、Ⅲ&Ⅳ度の2群)に分析すると、それぞれ、

0-24:29% vs 39%

25-49:20.2% vs 25.6%

50-74:12.8% vs 20.7%

75-100:8.3% vs 16.1%

となり、このスコアの低下に伴い全死亡率が上昇し、また、心不全重症度が高い群の方が有意な全死亡率の上昇が示された(全てのp<0.0001)。

Circulation. 2021 Apr 28. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.050850.

24ヶ月における「全死亡率」をKCCQ-12合計スコア別(0-24、25-49、50-74、75-100の4群)と左室駆出率別(LVEF<40%、LVEF≧40%の2群)に分析すると、それぞれ、

0-24:36.3% vs 36.8%

25-49:23.7% vs 22.6%

50-74:17.4% vs 11.7%

75-100:11.2% vs 6.8%

となり、このスコアの低下に伴い全死亡率が上昇し、また、スコア50-74と75-100の左室駆出率が低い群の方が有意な全死亡率の上昇が示された(各p<0.0001)。

Circulation. 2021 Apr 28. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.050850.

結論:

8つ全ての地理的地域(北米、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、東アジア、南アジア、アフリカ、南アメリカ、中東)における心不全患者の健康関連QOL(KCCQ-12合計スコア)は、

心不全の重症度と左室駆出率(LVEF)に関わらず、全ての原因による死亡と心不全による入院の独立した予測因子であることが示された。

 

【参考情報】

KCCQ-12

https://cvam.com/wp-content/uploads/2019/07/KCCQ-Questionnaire.pdf 

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