非肥満性心不全患者における筋肉量減少の決定要因



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32677311/ 

タイトル:Distinct determinants of muscle wasting in nonobese heart failure patients with and without type 2 diabetes mellitus

<概要(意訳)>

背景:

筋肉量の減少は、慢性心不全(CHF)および糖尿病(DM)患者で頻繁に観察される。

方法:

二重エネルギーX線吸収測定法(DXAまたはDEXA)により、補正四肢筋量(ASMI)を評価した慢性心不全患者185例[71(IQR 61-78)歳、男性64%]を遡及的に調査した。

結果:

185例のCHF患者の内、70例(38%)は、DMを合併していた。

DM合併CHF患者は、DMのない患者と比較して、虚血性心疾患と高血圧の有病率が高く、推算糸球体濾過量(eGFR)とASMI(補正四肢筋量)が低く、血漿レニン活性(PRA)レベルが高かった。

 

慢性心不全(CHF)患者におけるASMI(補正四肢筋量)の独立した説明因子を特定する為に、NYHA分類(心不全重症度の評価)に加えて、筋肉量減少の既知の危険因子を調整して多変量回帰分析を行った。

モデル1[年齢、性別(男性)、NMA-SFスコア、DM有り、eGFR、ヘモグロビン、NYHAⅢ度]およびモデル2[年齢、性別(男性)、NMA-SFスコア、DM有り、eGFR、ヘモグロビン、NT-proBNP]では、「年齢、MNA-SFスコア(簡易栄養状態評価表)、DM有り」がASMIの独立した説明因子となった

 

モデル3[年齢、性別(男性)、NMA-SFスコア、空腹時インスリン、血漿レニン活性(PRA)、コルチゾール]では、「空腹時インスリン、PRA」がASMIの独立した説明因子となった

 

モデル4[年齢、性別(男性)、NMA-SFスコア、空腹時インスリン、血漿レニン活性(PRA)、コルチゾール、ACE阻害薬/ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、ループ利尿薬]においても、「空腹時インスリン、PRA」がASMIの独立した説明因子となった

J Diabetes. 2021 Jan;13(1):7-18.

次に、慢性心不全(CHF)患者におけるASMI(補正四肢筋量)の独立した説明因子を非DMグループとDMグループに分類し調査した。

モデル1[年齢、性別(男性)、NMA-SFスコア、HbA1c、eGFR、ヘモグロビン、NYHAⅢ度]では、「非DMグループおよびDMグループ」において、「MNA-SFスコア(簡易栄養状態評価表)」がASMIの独立した説明因子となった

 

モデル2[年齢、性別(男性)、NMA-SFスコア、空腹時インスリン、PRA、コルチゾール]では、「非DMグループおよびDMグループ」において、「空腹時インスリン」がASMIの独立した説明因子となった

 

一方で、「コルチゾール」は、非DMグループでは、ASMIと独立した説明因子であったが、DMグループ(DM-2 モデル)ではその関連が示されなかった。

対照的に、「PRA(血漿レニン活性)」は、DMグループ(DM-2 モデル)では、ASMIと独立した説明因子であったが、非DMグループではその関連が示されなかった。

PRA(血漿レニン活性)をアップレギュレーションするループ利尿薬の投与割合は、DMグループの方がより高い傾向があったが、DM-2 モデルにループ利尿薬を追加したDM-3モデルにおいても、「PRA(血漿レニン活性)」は、DMグループ(DM-3 モデル)のASMIと独立した説明因子となった

J Diabetes. 2021 Jan;13(1):7-18.

<2型糖尿病合併心不全患者と心不全患者の筋肉量減少における仮説>

アルドステロンとコルチゾールは同等の親和性でMR(鉱質コルチコイド受容体)に結合する。

コルチゾール濃度はアルドステロン濃度の約1,000倍である為、アルドステロンがMRに結合するのは、11β-HSD2(コルチゾールをコーチゾンに不活化する酵素)の活性に依存する。

 

2型糖尿病患者の骨格筋では、11β-HSD2がアップレギュレートされる為、2型糖尿病合併心不全患者では骨格筋に対するコルチゾールの効果が失われることが報告されている。

 

一方で、PRA(血漿レニン活性)は、心不全患者よりも2型糖尿病合併心不全患者の方が高い為、2型糖尿病合併心不全患者では筋肉量減少の促進因子であるレニン-アンジオテンシン系のアップレギュレーションが示唆される。

J Diabetes. 2021 Jan;13(1):7-18.

結論:

2型糖尿病は、心不全患者の筋肉量を減少させる可能性がある。

レニン-アンジオテンシン系の活性化は、栄養失調と空腹時インスリンの減少に加えて、2型糖尿病合併心不全患者の筋肉量減少に関与していることが示唆された。

 

【参考情報】

アルドステロンの作用機構と病態における新たな役割の解明と最新の治療

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscc1971b/33/1/33_45/_pdf/-char/ja 

エネルギー代謝制御における骨格筋グルココルチコイド受容体の役割

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/7/107_1373/_pdf/-char/ja 

コルチゾールとは

http://diet-kotu.com/yougo/cortisol.html 

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