PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32758386/
タイトル: Association of the induction of a self-care management system with 1-year outcomes in patients hospitalized for heart failure
<概要(意訳)>
背景:
心不全(HF)患者のセルフケアを行うために、「1)体重とHF症状のスコアリング(心不全ポイント)、2)患者と医療提供者の双方に対し定義された相談タイミング」を特徴とする新しいHFポイントセルフケアシステムを開発して臨床に導入した。
このセルフケアシステムをHFで入院した患者に導入し、1年間の臨床転帰との関連を調査した。
方法:
心不全治療の為に入院した連続569例を後ろ向きに登録した。
セルフケアシステム導入前の患者は275例(2011年11月~2013年10月)、セルフケアシステム導入後の患者は294例(2015年11月~2017年10月)であった。
1)心不全ポイントは、下記の如く、定義した。
各1点:HFの初期症状(労作時呼吸困難、浮腫、咳、食欲不振)
3点:体重が増えて設定体重を超えた場合
4点:心拍数≧120bpm/分(心房細動の早期検出と治療のため)
5点:安静時の呼吸困難
2)患者と医療提供者の双方に対し定義された相談タイミングは、下記の如く、定義した。
心不全ポイント3点の場合、1週間以内に最寄りのクリニックに外来受診するよう患者に指示した。HFの悪化がなかった場合は、患者の理想体重は医師により再評価された。
ただし、HFの初期症状(各1点)と体重増加(3点)(合計4点)が認められた場合は、HFが悪化する可能性がある為、同日または翌日に医師の診察を受けるよう患者に指示した。
5点以上は、入院が必要になる可能性が高いため、病院の救急科を訪問するよう患者に指示した。
再入院を防ぐため、HF症状が軽度で心不全ポイントが3〜4点の場合は、外来を受診するよう患者に強く指示した。
このシステムを使用できない患者には、「患者の同居者、近くに住む若い家族」、または「少なくとも週に1回は患者の自宅を訪問してHFポイントを確認できる介護者または訪問看護師」にセルフケアシステムを導入した。
J Cardiol. 2021 Jan; 77(1): 48-56.
傾向スコア(PS)マッチングにより、セルフケアシステム導入有無の患者間における臨床転帰を比較した。
主要評価項目は、「全死亡とHFによる入院の複合」とした。
副次評価項目は、「全死亡」と「HFによる入院」とした。
結果:
1年後のフォローアップ率は87%であった。
傾向スコア(PS)マッチングにより、セルフケアシステム導入群の主要評価項目(全死亡とHFによる入院の複合)の1年累積発症率は、未導入群よりも有意に低かった[22% vs 33%、HR 0.62(95%CI 0.40-0.96)、p=0.031]。
また、セルフケアシステム導入群の副次評価項目(全死亡)の1年累積発症率は、未導入群と同等であった[9% vs 10%、HR 0.87(95%CI 0.41-1.83)、p=0.714]。
セルフケアシステム導入群の副次評価項目(HFによる入院)の1年累積発症率は、未導入群よりも有意に低かった[16% vs 28%、HR 0.51(95%CI 0.31-0.84)、p=0.008]。
J Cardiol. 2021 Jan; 77(1): 48-56.
結論:
心不全で入院した患者に対する新しいセルフケアシステムの導入は、1年臨床転帰の改善との関連が示された。
このセルフケアシステムは、心不全患者の効果的なセルフケアに役立つ可能性があるだろう。