心不全入退院後の塩味感受性変化と転帰の関係



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32416964/ 

タイトル:Salt Taste Sensitivity and Heart Failure Outcomes Following Heart Failure Hospitalization

<概要(意訳)>

背景:

塩味感受性は心不全(HF)入院後に変化する可能性があるが、塩味感受性の変化とHF症状、バイオマーカー、転帰との関係は未だ明らかになっていない。

本研究では、Gourmet-HF pilot 研究のサブ解析として、心不全入院後の塩味感受性変化と転帰の関係を調査した。

方法:

被験者(≧55歳)は、退院後に通常ケア、または4週間のDASH(塩分の排泄を促す、NaCl含有量1500㎎/日)食の摂取を行った。

塩味感受性テストは、心不全の「入院時、退院時、退院後1、4、12週時」の食事後または喫煙後の少なくとも1時間後に実施し、退院後12週間(無作為割り付け4週間、追跡8週間)まで追跡した。

塩味感受性テストは、食塩含浸濾紙のソルセイブを使用した。

食塩含浸濾紙(NaCl含有量0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6 mg/㎠)を被験者の舌に3秒間乗せ、塩味を認識した濾紙を塩味感受性の閾値として記録した。

49例の内、35例は入院時から、14例は退院時から塩味感受性の閾値を記録した。

12週の追跡期間までに、塩味感受性の閾値が低下した被験者(n=25)を「塩味感受性の増加(改善)」群、塩味感受性の閾値が変化又は増加しない被験者(n=24)を「塩味感受性の非増加」群とした。

Am J cardiol. 2020 Jul 15; 127: 58-63.

結果:

ベースラインの患者背景は、「塩味感受性の増加」群と「塩味感受性の非増加」群で差がなかった。

両群間で有意な差が認められた評価項目は、下記2項目であった。

「退院後4週目のBNP[脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド]の平均変化」は、

(1497から)-1035.90 vs (777から)-71.95、p=0.04

となり、「塩味感受性の増加」群の方がBNP(pg/ml)の減少が大きかった。

「退院後12週の間に再入院となった被験者の全ての原因による再入院日数」は、

5.45 vs 11.00、p=0.03

となり、「塩味感受性の増加」群の方が再入院の期間が短かった。

Am J cardiol. 2020 Jul 15; 127: 58-63.

結論:

心不全で入院し退院後12週の間に塩味感受性が増加(改善)した被験者の「全ての原因による再入院日数」は、塩味感受性が変化または増加しなかった被験者よりも、有意に少なかった。

塩味感受性の増加(改善)は、心不全で退院した患者の新しい予後因子となることが示唆された。

 

【参考情報】

食塩含浸濾紙 ソルセイブ

https://www.advantec.co.jp/uploads/service_support/download/catalog/16-02-4_SALSAVE_191200.pdf 

当院透析患者の塩分認知障害と 体重増加に関しての検討

https://enjinkai.com/society/images/%e3%82%bd%e3%83%ab%e3%82%bb%e3%82%a4%e3%83%96(JSDT).pdf 

食塩感受性の成因

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcsc/25/1/25_6/_pdf

塩分過剰摂取に伴う味覚と嗜好性変化

https://www.saltscience.or.jp/general_research/2016/201638.pdf 

DASH食

https://www.kasai-clinic.com/doctor/

GOURMET-HF試験

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02148679 

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