HFpEFの異なる表現型における特徴・予後・治療反応



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32860842/ 

タイトル:Characteristics, prognosis and treatment response in distinct phenogroups of heart failure with preserved ejection fraction

<概要(意訳)>

背景:

HFpEF(収縮機能が保たれた心不全、拡張不全)は、不均一な症候群である。

機械学習を使用して、HFpEFの臨床表現型グループを導き出し、「臨床的特徴、有害転帰、治療効果」を比較することを目的とした。

方法:

モデルベースクラスタリングにより、970例のHFpEF患者から収集された11の臨床変数と実験変数に適用した。

追加で290例のHFpEF患者を検証コホートとして登録した。

5年間の追跡期間では、「全死亡率」を主要評価項目とし、「複合エンドポイント(全死亡またはHFによる入院率)」を副次評価項目とした。

結果:

2007年1月~2012年12月の間に、研究基準とインフォームドコンセントを得た970例が研究の対象となった。

全体のベースライン特性は、「平均年齢70.0±6.5歳、女性42.2%、平均eGFR60.6±9.2 mL/min/1.73m2、2型糖尿病33.7%、高血圧73.9%、心房細動38.9%」であった。

HFpEFの臨床表現型の数は、3つであった。

臨床表現型①は、NYHA≧Ⅲ(44.9%)の割合が少なく、腎機能(eGFR:61.8±8.9 mL/min/1.73m2)が高く、2型糖尿病(30%)と虚血性心疾患(33.6%)の有病率が低く、ヘモグロビン(12.0±1.3 g/dL)が高く、心エコーの左室重量係数(LVMI:116.4±10.6 g/ m2)と臓拡張機能(E / e ‘:12.9±1.8)は低いという特徴があった。

臨床表現型②は、高齢(70.9±6.7歳)と女性(50.0%)の割合が高く、心房細動(46.7%)の有病率が高いという特徴があった。

臨床表現型③は、年齢(70.3 + 6.1歳)は中間に位置し、BMI(25.0±2.5)が高く、虚血性心疾患(47.6%)と2型糖尿病(39.4%)の有病率が高く、NYHA≧3(55.0%)の割合が高いという特徴があった。

BNPレベルは、臨床表現型③で最も高く、臨床表現型①で最も低かった。

β遮断薬、スピロノラクトン(カリウム保持性利尿薬)での治療割合は、臨床表現型の3群間で同程度であった。

ACE阻害薬/ARBでの治療割合は、臨床表現型③(71.7%)で最も多かった。

Int J Cardiol. 2021 Jan 15; 323: 148-154.

HFpEFの臨床表現型①~③を構成する970例の内、340例(35.1%)の「全死亡」と594例(61.2%)の「全死亡またはHFによる入院の複合イベント」があった。

5年の追跡期間における有害イベントと臨床表現型の間には、明確な関連パターンが示された。

追跡期間における「全死亡の累積発症率」は、臨床表現型③(40.4%)>②(35.8%)>①(30.7%)の順に高かった(p=0.025)。

カプランマイヤー曲線による「全死亡の非発症率」のログランク検定p=0.017となり、3群間で有意な差が示された(臨床表現型①>②>③)。

同様に、「全死亡またはHFによる入院の非発症率」のログランク検定p<0.001となり、3群間で有意な差が示された(臨床表現型①>②>③)。

Int J Cardiol. 2021 Jan 15; 323: 148-154.

コホート全体におけるACE阻害薬/ARB、β遮断薬、スピロノラクトンの治療効果は、追跡期間の「全死亡」と「全死亡とHFによる入院の複合イベント」のリスク低下とは関連していなかった。

しかしながら、臨床表現型の層別化分析で、臨床表現型③におけるβ遮断薬の治療効果は、

「全死亡」と「全死亡とHFによる入院の複合イベント」の有意なリスク低下が示された(それぞれ、log rank p=0.001、p=0.017)。

また、臨床表現型③におけるACE阻害薬/ARBの治療効果は、「HFによる入院の複合イベント」の有意なリスク低下が示された(log rank p=0.029)。

Int J Cardiol. 2021 Jan 15; 323: 148-154.

これらの臨床表現型の結果を検証するために、2013年1月~2014年12月の間に追加で290例のHFpEF患者を前向きに登録した。

追加の290例のコホートと元の970例のコホートのベースライン特性は、同等であった。

290例の内、臨床表現型①は117例(40.3%)、臨床表現型②は88例(30.3%)、臨床表現型③は85例(29.3%)に該当していた。

290例のコホートにおける5年追跡期間の「全死亡率」は(元のコホートと同様に)、臨床表現型③(38.8%)>②(35.2%)>①(26.5%)の順に高かった(p=0.154)。

290例のコホートにおける5年追跡期間の「全死亡またはHFによる入院率」は(元のコホートと同様に)、臨床表現型③(70.6%)>②(60.2%)>①(48.7%)の順に高かった(p=0.007)。

元のコホートにおけるHFpEFの臨床表現型①~③グループ分類は、追加の290例の前向き検証コホートでも一貫した結果を示した。

結論:

機械学習によるクラスタリングにより、患者特性と予後が異なる3つのHFpEFの表現型を特定した。

β遮断薬とACE阻害薬/ARBによる治療効果は、臨床表現型③における有害転帰のリスク低下との関連が示された。

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