HFpEF患者におけるSGLT2阻害薬の心不全悪化イベントに対する効果



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34459213/

タイトル:Effect of Empagliflozin on Worsening Heart Failure Events in Patients With Heart Failure and Preserved Ejection Fraction: EMPEROR-Preserved Trial

<概要(意訳)>

背景:

エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)は、駆出率が保持されている心不全(HFpEF)患者の心血管死または心不全による入院リスクを軽減する。

しかしながら、入院患者と外来患者における心不全イベントの影響については、追加のデータが必要である。

方法:

NYHA分類II度からIV度のHFpEF(LVEF>40%)患者5,988例を、標準治療に加えて、プラセボまたはエンパグリフロジン10mg/日に無作為に割り付けた(中央値26ヶ月)。

心不全の悪化を反映した入院患者と外来患者の心不全イベントを前向きに収集し、個々のエンドポイントと複合エンドポイントで分析することを事前に指定した。

結果:

合計5,988例の被験者を無作為にプラセボ(n=2,991)またはエンパグリフロジン(n=2,997)に割り付けた。

ベースラインの臨床的特徴は、各群で類似していた。

 

「全死亡または心不全による入院」リスクは、

プラセボ群(662例)と比較して、エンパグリフロジン群(581例)の方が

有意に低いことが示された[HR 0.85(95%CI 0.76-0.95); p=0.005]。

 

「全死亡または心血管系による入院」リスクは、

プラセボ群(967例)と比較して、エンパグリフロジン群(888例)の方が

有意に低いことが示された[HR 0.89(95%CI 0.81-0.98); p=0.014]。

 

「全死亡または全ての原因による入院」リスクは、

プラセボ群(1,431例)と比較して、エンパグリフロジン群(1,356例)の方が

有意に低いことが示された[HR 0.92(95%CI 0.85-0.99); p=0.025]。

 

「心血管系による総入院(初回および再発)」リスクは、

プラセボ群(1,333例)と比較して、エンパグリフロジン群(1,145例)の方が

有意に低いことが示された[HR 0.84(95%CI 0.74-0.95); p=0.005]。

「心血管系による総入院(初回および再発)」に対するエンパグリフロジンの効果は、事前に指定されたサブグループのほとんどで一貫していたが、ベースラインでの左室駆出率別(LVEF%:<50、≧50 to <60、≧60)で交互作用が認められ(p=0.02)、ベースラインでLVEF≧60で効果の減弱が示された。

 

「心不全による総入院(初回および再発)」リスクは、

プラセボ群(541例)と比較して、エンパグリフロジン群(407例)の方が

有意に低いことが示された[HR 0.73(95%CI 0.61-0.88); p=0.0009]。

「心不全による総入院(初回および再発)」に対するエンパグリフロジンの効果は、事前に指定されたサブグループのほとんどで一貫していたが、ベースラインでのMRA(鉱質コルチコイド受容体拮抗薬)使用有無と左室駆出率別(LVEF%:<50、≧50 to <60、≧60)で交互作用が認められ(p=0.038とp=0.008)、ベースラインでMRA使用ありとLVEF≧60で効果の減弱が示された。

また、「心不全による総入院(初回および再発)」の平均期間(日)は、プラセボ群[11.5(95%CI 9.6-12.0)]とエンパグリフロジン群[11.5(95%CI 10.0-12.9)]で差はなかった(p=0.50)。

 

「全ての原因による入院」リスクにおいては、

プラセボ群(2,769例)とエンパグリフロジン群(2,566例)で

有意な差は示されなかった[HR 0.93(95%CI 0.85-1.01); p=0.10]。

Circulation. 2021 Oct 19;144(16):1284-1294.

「利尿薬静注を必要とする総入院」リスクは、

プラセボ群(727例)と比較して、エンパグリフロジン群(516例)の方が

有意に低いことが示された[HR 0.67(95%CI 0.57-0.79); p<0.0001]。

 

「昇圧薬静注または陽性変力作用(心収縮力を増強する)薬を必要とする総入院」リスクは、

プラセボ群(140例)と比較して、エンパグリフロジン群(102例)の方が

有意に低いことが示された[HR 0.73(95%CI 0.55-0.97); p=0.03]。

Circulation. 2021 Oct 19;144(16):1284-1294.

非常時または緊急の治療を必要とする心不全悪化を「心血管死、心不全による入院、静注治療を必要とする非常時または緊急の心不全治療」と定義した場合、

プラセボ群で546件、エンパグリフロジン群で432件のイベントが発生し、エンパグリフロジンの方が有意にこれらのリスクが低いことが示された[HR 0.77(95%CI 0.67-0.87); p<0.0001]。

このエンドポイントにおけるエンパグリフロジンの効果は、無作為化後18日で統計的有意性を示し、その後も維持していることが示された。

心不全悪化による利尿薬治療の強化で外来訪問した総数(初発と再発)は、

プラセボ群で838件、エンパグリフロジン群で626件のイベントが発生し、エンパグリフロジンの方が有意にこれらのリスクが低いことが示された[HR 0.73(95%CI 0.65-0.82); p<0.0001]。

Circulation. 2021 Oct 19;144(16):1284-1294.

一般的に、事前に指定した治験施設の訪問日において、プラセボ群よりも低い心不全の重症度(NYHA分類)は、エンパグリフロジン群の方が、20%~50%高かった。

この差は、4週目で有意な傾向(p=0.06)が示され、無作為化後12週から148週までの全ての時点で有意な差が示された。

Circulation. 2021 Oct 19;144(16):1284-1294.

NT-proBNPは、エンパグリフロジン群で無作為化後4週後にわずかな減少を示し、プラセボ群との差は時間経過とともに増加した。

また、無作為化後4週後に、ヘマトクリット値は有意に増加し、尿酸値は有意に減少し、24ヶ月以上維持していた。

体重と収縮期血圧は、早期かつ持続的な低下(約-1kgと約-2mmHg)を示した。

Circulation. 2021 Oct 19;144(16):1284-1294.

結論:

エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)10mg/日で治療された入院および外来のHFpEF患者における心不全悪化イベントと心不全の重症度は、早期から有意に持続的低下することが示された。

 

【参考情報】

号外 HFpEF治療から心不全の次の時代を考える―EMPEROR-Preserved試験にかける期待と恐怖

号外 HFpEF治療から心不全の次の時代を考える―EMPEROR-Preserved試験にかける期待と恐怖 | 臨床ニュース | m3.com

EMPEROR-Preserved試験

EMPEROR-Preserved_循環器トライアルデータベース (ebm-library.jp)

Sponsored Link




この記事を書いた人