抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の低ナトリウム血症に対するSGLT2阻害薬の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32019783/ 

タイトル:A Randomized Trial of Empagliflozin to Increase Plasma Sodium Levels in Patients with the Syndrome of Inappropriate Antidiuresis

<概要(意訳)>

背景:

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群[SIAD:一般的に、SIADHと記載される]に付随して生じる低ナトリウム血症に対する治療オプション(参考:水分制限、輸液、トルバプタン等)は不十分である。

ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、尿糖排泄を介して浸透圧利尿を促進する為、SAIDの新たな治療選択肢となる可能性がある。

方法:

この二重盲検ランダム化比較試験は、2016年9月~2019年1月の間にスイスのバーゼル大学病院でSIAD誘発性低ナトリウム血症<130 mmol /Lの入院患者88例をリクルートし、標準的な水分制限(<1,000ml/24h)に加えて、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン25㎎/日)またはプラセボを1日1回4日間投与した。

主要評価項目は、「治療開始4日後の血漿量ナトリウム濃度の変化量」とした。

副次評価項目は、「治療反応性と安全性」とした。

結果:

試験を完了した87例の内、43例(49%)はSGLT2阻害薬による治療を受け、44例(51%)はプラセボが投与された。

ベースラインの血漿ナトリウム濃度は、2群間で類似していた(SGLT2阻害薬群の中央値125.5 mmol/L、プラセボグループの中央値126 mmol/L)。

SGLT2阻害薬で治療された患者は、プラセボを投与された患者より、血漿ナトリウム濃度の有意な増加を示しました(それぞれ10 mmol/L vs 7 mmol/L、p=0.04)。

ベースラインにおける重度の低ナトリウム血症(<125 mmol/L)、より低い浸透圧レベルは、SGLT2阻害薬による治療反応性が高かった。

また、SGLT2阻害薬で治療された患者の忍容性は高く、低血糖、低血圧は発生しなかった。

J Am Soc Nephrol. 2020 Mar; 31(3): 615-624.

結論:

水分制限で治療された抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)患者の血漿ナトリウ濃度は、プラセボと比較して、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の方が有意に増加した。

今後、SGLT2阻害薬によるSIADH治療法の更なる研究が必要なことが示唆された。

 

【参考情報】

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH) – 12. ホルモンと代謝の病気 – MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)

低Na血症䛾ガイドライン

http://www.jseptic.com/journal/99.pdf 

血液浸透圧の検査

https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/index.cgi?c=speed_search-2&pk=173 

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