日本人高齢2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬のランダム化臨床試験デザイン



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33827843/  

タイトル:Rationale and design of the EMPA-ELDERLY trial: a randomised, double-blind, placebo-controlled, 52-week clinical trial of the efficacy and safety of the sodium-glucose cotransporter-2 inhibitor empagliflozin in elderly Japanese patients with type 2 diabetes

<概要(意訳)>

背景:

糖尿病の世界的な有病率は、ここ数十年で大幅に増加しており、その有病率も年齢とともに増加している。

世界中で推定1億3,560万人の糖尿病患者が 2019 年に 65 歳以上でした (合計 4 億 6,300 万人の患者の 29.3% を占めています)。

そして、この有病率は全ての地域で増加し、2030 年には合計1億9,520万人、2045年には2億7,620万人になると予測されている。

 

ゆえに、高齢患者の糖尿病管理は、世界的により大きな課題となっている。

超高齢化時代の日本では、約2,000万人が糖尿病や糖尿病予備軍となっている。

また、2型糖尿病の入院患者および外来患者の約71%は65歳以上であり、半数以上は75 歳以上であると推定されている。

 

高齢患者の2型糖尿病の管理には、いくつかの重要な考慮事項がある。

日本糖尿病学会、国際糖尿病連合(IDF)、アメリカ糖尿病協会(ADA)のガイドラインによると、高齢の2型糖尿病患者は、若い患者と比較して、慢性腎臓病、血管疾患、心不全などの併存疾患、およびサルコペニア、フレイル、認知障害/認知症などの老年症候群の割合が多い。

 

高齢の2型糖尿病患者は、腎機能低下による血糖降下薬の排泄の減少等、いくつかの理由で低血糖のリスクも高くなる。

低血糖は有害な転帰と関連している為、高齢2型糖尿病患者の治療に関する臨床ガイドラインでは、低血糖を回避することの重要性が強調されている。

 

SGLT2阻害薬は、ろ過されたグルコースの再吸収に関与する腎臓の近位尿細管でSGLT2 を阻害することによって尿糖を誘発することで血糖コントロールを改善するにも関わらず低血糖のリスクは少ない。

おそらく、血漿グルコースレベルの低下が、グルカゴンレベルと肝臓のグルコース産生の増加によって部分的に相殺されるからだろう。

 

SGLT2阻害薬は、尿糖排泄によるカロリー損失により、体重を適度に減少させるが、一般的に、2型糖尿病では望ましい効果である。

この体重減少は、主に脂肪組織の減少に起因すると思われるが、研究間で不均一性が見られ、除脂肪体重(LBM=Lean Body Mass)の減少も伴う可能性がある。

 

日本糖尿病学会SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会は、高齢患者は若年患者に比べて筋肉量が少ないため、サルコペニアなどの老年症候群を有する65歳以上の高齢2型糖尿病患者、および75歳以上の患者に対しては、SGLT2阻害剤を慎重に使用することを推奨している。

 

65歳以上の日本人2型糖尿病患者の約15%は、サルコペニアであると推定されている。

高齢の日本人2型糖尿病患者を対象とした進行中の大規模な市販後観察研究の中間データにおいて、ベースラインの年齢は、65歳以上が2,790例(36.6%)、75歳以上が802例(10.5%)であった。

SGLT2への選択性が高いSGLT2阻害薬のエンパグリフロジンは、一般の臨床診療において重篤な低血糖やサルコペニアを伴わずに血糖コントロールを改善することが示された。

しかしながら、この研究には比較対象がなく、筋肉量と筋力に対する効果は評価されていない。

 

サルコペニアやフレイルになりやすい高齢患者の筋肉量に対する他のSGLT2阻害薬の効果は、高齢の2型糖尿病患者の有病率が高いにも関わらず、我々の知る限り、他国においてもランダム化臨床試験で具体的に評価されていない。

高齢の2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の有効性と安全性、および骨格筋量、筋力、身体能力に対する潜在的な影響を評価することは重要である。

東アジアの患者は欧米の患者よりも体格指数(BMI)が低く、特に筋肉量が減少しやすい可能性があるため、高齢の日本人2型糖尿病患者を対象としたエンパグリフロジンのランダム化臨床試験(EMPA-ELDERLY試験)を設計した。

ここでは、EMPA-ELDERLY試験の研究デザインと方法論を報告する。

 

方法:

EMPA-ELDERLY試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、52 週間の臨床試験で日本の約20施設で実施される。

この試験は、高齢の日本人2型糖尿病患者におけるエンパグリフロジンの長期的な血糖効果と安全性、および体組成、身体活動、生活の質に対する潜在的な影響を調査するように設計されている。

この試験は、ClinicalTrials.gov(NCT04531462)に登録されており、2020年10月5日に開始され、2022年11月21日に終了する予定である。

 

65歳以上の日本人2型糖尿病患者の主な包含基準は、「BMI≧22kg/m2、食事療法および運動療法のみ、または経口血糖降下薬による治療下で血糖コントロール不十分 (7.0%≦HbA1c≦10.0%)」とした。

重度の低血糖のリスクがある血糖降下薬(例:インスリン基礎分泌を促進するスルホニル尿素薬、追加分泌を促進するグリニド薬)を服用している場合は、糖尿病診療ガイドラインの推奨に基づき、75歳未満はHbA1c≧7.5%、75歳以上はHbA1c≧8.0%を血糖コントロール目標値とした。

 

一方で、主な除外基準は、「コントロールされていない高血糖 (空腹時血糖値>200 mg/dL)、

インフォームド・コンセント12週間以内のSGLT2阻害薬、インスリン、GLP-1受容体作動薬による治療、治験責任医師がMMSE-J(精神状態短時間検査改定日本版)によってスクリーニング時に認知機能障害を確認、インフォームド・コンセント12週間以内の急性冠症候群、脳卒中または一過性脳虚血発作、eGFR<45 mL/分/1.73mの腎機能障害、および糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の既往、アジアにおけるサルコペニアワーキンググループ(AWGS 2019)のサルコペニア診断基準に基づき、男性の握力<28kg、女性の握力<18kg」とした。

 

詳細な包含基準を以下に示す。

-インフォームド・コンセント前に2型糖尿病と診断された日本人(の両親を持つ)患者

-スクリーニング時の血糖値が7.0%≦HbA1c≦10.0%インフォームド・コンセントある経口糖尿病治療薬 (SU薬、グリニド薬等)による治療を受けている場合は下記のHbA1c目標値を適用する

・65歳以上75歳未満の目標値は、7.5%≦HbA1c≦10.0%

・75歳以上の目標値は、8.0%≦HbA1c≦10.0%

-食事療法および運動療法を受けている患者で、インフォームド・コンセント前12週間以上、抗糖尿病による治療を受けていない、またはGLP-1受容体作動薬およびSGLT2阻害薬を除く経口糖尿病治療薬で治療されている患者

ただし、抗糖尿病治療は、無作為化前12週間以上は変更されていない必要がある [チアゾリジン薬(TZD薬)TZD 療法は、インフォームド・コンセント前18週間以上前に変更されていなければならない]

-インフォームド・コンセントに同意した65歳以上の患者

-スクリーニング時のBMI≧22 kg/m2

-男性または閉経後の女性患者

-治験前に書面によるインフォームド・コンセントに署名し、日付を記入した患者

BMJ Open. 2021 Apr 7;11(4):e045844.

詳細な除外基準を以下に示す。

-導入期間中の空腹時血糖値>200 mg/dL(>11.1 mmol/L)の高血糖

-インフォームド・コンセント前12週間以内のインスリン治療

-認知症スクリーニング検査のMMSE-J(≤23と定義)に、認知機能障害の疑い

-インフォームド・コンセント前12週間以内の急性冠症候群[ST上昇型心筋梗塞 (STEMI)、非ST上昇型心筋梗塞 (NSTEMI) および不安定狭心症)、脳卒中または一過性脳虚血発作を発症した患者

-スクリーニングおよび慣らし期間中のALT(SGPT)、AST(SGOT)、ALPが正常値上限 (ULN)の3倍を超える肝障害

-スクリーニングおよび慣らし期間中のeGFR<45 mL/分/1.73m2の患者

-低握力の患者(男性<28 kg、女性<18 kgの握力と定義)

-スクリーニング時の細いふくらはぎ周囲径(男性<34 cm、女性<33cmと定義)

-椅子5回立ち上がりテストを実施できない患者

-AWGS 2019のサルコペニア診断基準に合致する患者

-糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の既往がある患者

-エンパグリフロジンの添付文書の禁忌に該当する患者

-溶血性貧血の患者

-インフォームド・コンセント2年以内の肥満手術、またはその他の胃腸手術が予定されている患者

-癌の既往(切除された非浸潤性基底細胞癌または扁平上皮癌を除く)および/または過去5年以内に癌治療を受けている患者

-インフォームド・コンセント12週間以内の抗肥満薬による治療、またはスクリーニング時

に体重が不安定になる手術、低炭水化物ダイエットなどの食事療法をしている患者

-インフォームド・コンセント時の全身性ステロイド薬(吸入または局所ステロイド薬以外)による治療、またはインフォームド・コンセント6週間以内の甲状腺ホルモン薬の投与量変更、または2型糖尿病を除く他のコントロールされていない内分泌障害のある患者

-治験薬に対する既知または疑いのあるアレルギーまたは過敏症のある患者

-治験への参加を妨げるインフォームド・コンセント前のアルコールまたは薬物の乱用

-スクリーニング30日以内の他に参加している臨床試験の治験薬服用、または別の試験のフォローアップ期間に参加する患者(観察研究への参加は許可されている)

-本研究に参加中に患者の安全性に危険が及ぶ可能性のある臨床状態の患者

BMJ Open. 2021 Apr 7;11(4):e045844.

<無作為化、治験薬投与および盲検化>

スクリーニング後、すべての適格患者は、治験薬のアドヒアランスを評価し、血糖値の自己管理デバイスの訓練ために、2週間のプラセボ治療に割り当てられる。

 

プラセボ導入期間の後、依然として選択基準を満たし、除外基準を満たさない患者は、1:1 の比率で無作為化され、1日1回、エンパグリフロジン10mgまたはプラセボによる52週間の経口治療を受ける(図1)。

 

無作為化では、ウェブベースのインタラクティブな応答システムを使用して患者を無作為化し、HbA1cレベル (<8.5% vs ≥8.5%) および年齢 (<75歳 vs ≥75歳) によって層別化される。

 

エンパグリフロジンは、日本とその他の国で 2 用量 (10mgおよび25 mg) が入手できるが、EMPA-ELDERLY試験では、日本で主に処方されている10 mg/日が使用される。

この用量は、日本でエンパグリフロジンを投与されている高齢2型糖尿病患者の市販後調査と一致している。

10mgで治療を開始したほとんどの患者は、その用量を1年以上にわたり、増量することなく継続した。

BMJ Open. 2021 Apr 7;11(4):e045844.

<エンドポイント>

EMPA-ELDERLY試験の主要評価項目は、エンパグリフロジンまたはプラセボによる治療開始52週間後におけるベースラインからのHbA1cレベルの変化である。

副次的評価項目には、筋肉量、体脂肪量、除脂肪体重、総体水分量、骨ミネラル含有量 (推定骨量) におけるベースラインから52週時の変化である。

これら身体組成のパラメータは、生体電気インピーダンス分析 (BIA) によって測定した。

ベースラインから52週時の骨格筋指数(SMI)の変化も副次的評価項目であり、BIAで測定された四肢筋肉量を身長の2乗で除した値で求められる。

 

追加の副次評価項目は、ベースラインから52週時の握力変化と椅子の5 回立ち上がりテストに要した時間である。

さらなるエンドポイントは、52 週で以下の目標 HbA1c レベルを達成した患者の割合である。

スルホニル尿素(SU)薬またはグリニド薬を使用している65歳以上から75歳未満の目標値はHbA1c<7.5%、75歳以上の場合はHbA1c<8.0%、SU薬またはグリニドを使用していない場合の目標値はHbA1c<7.0%とする。

 

追加のエンドポイントには、ベースラインから 52 週までの次のパラメータの変化を含めている。

生活の質[EuroQoL 5-dimension 5-level (EQ-5D-5L:移動の程度、身の回りの管理、ふだんの活動、痛み/不快感、不安/ふさぎ込みの5問が含まれる) および The Older Persons and Informal Caregivers Survey-Short Form (TOPICS-SF:一般的な健康状態、痛み、認知機能、気分、日常生活動作、社会活動に関する質問が含まれている) 2017により評価]、日常生活の身体活動[身体活動モニターで測定]、カロリー摂取量[食物摂取頻度調査票(FFQ)により推定]、認知機能[MMSE-Jにより評価]。

 

低血糖を含む有害事象、および検査パラメータの変化も評価し、肝障害、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、腎機能低下、下肢切断の有害事象は、SGLT2阻害薬に関する既存のデータに基づき、特に重要な有害事象として事前に指定されている。

 

<評価とスケジュール>

患者の人口統計学的および臨床的特徴は、病歴、付随する診断、治療と同様にスクリーニング時に記録される。

患者は、無作為化(0週)後の4週、12週、24週、36週、52週時に治験実施施設へ来院することになっている。

二重盲検治験薬は、52週を除くすべての来院時に調剤される。

 

身体検査、体重、バイタルサインの測定は、0週、24週、52週時に実施され、HbA1cの測定と食事・運動指導が行われる。

臨床検査で使用する血液と尿のサンプルは、一晩の断食(水以外の飲食は10時間以上禁止)後、併用血糖降下薬および治験薬の投与前に採取され、24週を除くすべての来院時に収集される。

 

生体電気インピーダンス分析 (BIA)による身体組成のパラメータ計測、握力テスト、椅子立ち上がりテスト、EQ-5D-5LおよびTOPICS-SFによる日常生活の質、日常生活の身体活動、食物摂取頻度調査票(FFQ)によるカロリー摂取量、MMSE-Jによる認知機能に対する評価は、ベースラインと52週時に実施される。

 

有害事象は、すべての来院時および50 週時の電話連絡中に記録される。

治験薬による無作為化治療の間、引き続き、患者は標準治療を受ける。

異なる日に少なくとも2回の測定で空腹時血糖値>200 mg/dL(>11.1mmol/L)を超える患者に対しては、治験責任者が高血糖のレスキュー治療が可能である。

その際に使用する血糖降下薬は、SGLT2阻害薬を除くすべての血糖降下薬が使用できる。

 

ディスカッション:

EMPA-ELDERLY試験は、血糖コントロール、骨格筋量、筋力、身体能力に対する効果を評価するために設計された高齢の2型糖尿病患者における最初のSGLT2阻害薬のランダム化臨床試験である。

2型糖尿病患者を対象としたEMPA-REG OUTCOME試験では、エンパグリフロジンは心血管死、全死亡、心不全による入院、腎症のリスクを低下させるという画期的な結果が示された。

さらに、エンパグリフロジンによる心血管および腎症のリスク低下は、年齢層全体(65歳未満、65歳以上から75歳未満、75歳以上)で一貫しているが、若年者よりも高齢者の方がリスク低下の傾向が見られた。

とくに、若年者より心腎代謝疾患のリスクと死亡率が高い高齢の2型糖尿病患者が増加している日本では、エンパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬はますます処方される可能性が高いため、EMPA-ELDERLY試験の結果は非常に重要である。

 

脂肪組織の減少による体重減少が望ましい2型糖尿病の過体重または肥満患者では、エンパグリフロジンおよび他の SGLT2阻害薬による中等度の体重低下が観察されている。

実際、この体重減少は主に脂肪組織の減少によるものと思われるが、骨格筋と水分含有量に該当する除脂肪体重の減少に関与している可能性もあり、これらの所見はこれまでの研究でバラツキがある(均一でない)。

 

エンパグリフロジンとSU薬のグリメピリドを比較した104週間の臨床試験では、エンパグリフロジンによる体重減少の約90%が脂肪組織の減少によるものであった[Lancet Diabetes Endocrinol 2014;2:691–700.]。

 

日本人患者を対象とした無作為化されていない短期間(<24週間)の臨床研究では、SGLT2阻害薬のイプラグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジンによる治療中に骨格筋量が減少したことが示唆された。

さらに、非盲検の小規模な単群試験では、エンパグリフロジンによる1週間の治療により、日本人2型糖尿病患者(20例)の骨格筋量がわずかではあるが有意に減少する等の影響が見られました[Endocr Connect 2020;9:599–606.]。

 

一方で、ダパグリフロジン(n=54) またはイプラグリフロジン(n=49) を既存の糖尿病治療薬に追加した群と、これらのSGLT2阻害薬のみを使用した群における24週間の無作為化非盲検臨床試験では、日本人2型糖尿病患者の骨格筋量に対する影響は見られなかった。

しかしながら、これまでのサルコペニアやフレイルの影響を受けやすい高齢患者のデータは、いずれも高齢者のみを対象とした試験でなかったため、依然として限定的な結果である。

 

東アジアの患者は西洋の患者よりBMIが低く、骨格筋量に対する影響を受けやすいため、

EMPA-ELDERLY試験は日本で実施されている。

SGLT2阻害薬の高齢患者の筋肉に対する潜在的な効果を解明するために、本試験は二次エンドポイントとして、握力評価による筋力、椅子5回立ち上がりテストによる身体能力、生体電気インピーダンス分析 (BIA)による体組成への影響を評価することを事前に指定している。

 

握力測定は、高齢者の上肢強度の代理尺度であるが、椅子5回立ち上がりテストは、一般的に下肢機能と身体能力の評価に使用される。

両方の測定値は、アジアにおけるサルコペニアワーキンググループ(AWGS 2019)のサルコペニア診断基準に基づき、アジアのプライマリヘルスケア環境におけるサルコペニアの可能性を評価するために使用される。

EMPA-ELDERLY試験は、これらのガイドラインに基づく最初のSGLT2阻害薬の臨床試験である可能性がある。

 

無作為化されていない研究では、SGLT2阻害薬の治療により、男女における日本人患者の握力が増加したことが示唆された[J Diabetes 2016;8:736–7.]。

この結果は、前述の骨格筋量の減少が示唆された研究結果と矛盾しており、EMPA-ELDERLY試験の必要性を補強する。

 

EMPA-ELDERLY試験は、サルコペニアの可能性がある患者登録を回避するために、低握力の患者を除外しているが、SGLT2阻害薬による治療前後の握力、椅子5回立ち上がりテスト、骨格筋量の評価項目は、サルコペニア患者に対する影響の参考となる可能性がある。

また、EMPA-ELDERLY試験は、食物摂取頻度調査票(FFQ)を使用してカロリー摂取量の変化も評価する。

カロリー摂取量とサルコペニアとの逆相関は、高齢日本人患者の横断研究で見られている。

一方、縦断研究では、エンパグリフロジンとカナグリフロジンによる治療中にカロリー摂取量が増加することが示された。

 

患者の幸福感と生活の質は、糖尿病ケアの重要なアウトカムとしてますます認識されているため、EMPA-ELDERLY試験では、EQ-5D-5LおよびTOPICS-SF 2017機器を使用して、患者から報告された転帰を評価する。

EQ-5D-5Lの健康アンケートは、健康転帰を測定するために広く使用されている手段である。

TOPICS-SF は、高齢者の身体的および精神的健康と生活の質を評価するために設計された新しい手段であり、高齢者ケアにおける患者報告によるアウトカムの評価に使用される。

 

結論として、EMPA-ELDERLY試験は、筋肉量と筋力の両方を評価する高齢2 型糖尿病患者における 最初のSGLT2阻害薬のランダム化臨床試験である。

まだ明らかになっていない高齢者の体組成と骨格筋量へ与える影響を具体的に評価するだけでなく、増加している高齢2型糖尿病患者に対して、今後、このSGLT2阻害薬の処方が増加するかどうかの道標となるだろう。

 

【参考情報】

EMPA-ELDERLY試験

https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04531462 

サルコペニア新診断基準 (AWGS2019)を踏まえた高齢者診療

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/58/2/58_58.175/_pdf 

リハビリテーションにおける体組成評価の重要性

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/53/4/53_137/_pdf/-char/ja

身体組成の評価

https://www.mhlw.go.jp/content/000656488.pdf 

除脂肪体重(LBM)とは

https://nishibeppu.hosp.go.jp/files/000151505.pdf 

高齢化の状況

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/html/zenbun/s1_1_1.html 

日本語版 EuroQol-5Dimention-5Level (EQ-5D-5L)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002mpa7-att/2r9852000002mpe0.pdf 

Microsoft Word – EQ-5D-5L自己記入式ver0.1.docx (jast-hp.org)

The Balance Evaluation Sysytems Test(BESTest) (gunma-pt.com)

TOPICS Short Form

https://topics-mds.eu/topics-short-form/ 

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