PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33844069/
タイトル:Comparison of the contributions of impaired beta cell function and insulin resistance to the development of type 2 diabetes in a Japanese community: the Hisayama Study
<概要(意訳)>
目的:
久山町研究の被験者データから、「β細胞機能障害(IBF)とインスリン抵抗性」が2型糖尿病の発症にどの程度の寄与をしているかを調査することを目的とした。
方法:
2007年に75gOGTTを含む健康診断を受けた糖尿病既往のない40~79歳の被験者2,094例を対象とした。
これらの被験者をIBF(インスリン産生指数/HOMA-IR≦28.5)とインスリン抵抗性(HOMA-IR≧1.61)の有無に応じて4つのグループに分け、7年間(2007-2014)追跡した。
Cox比例ハザードモデルを使用して、2型糖尿病発症のハザード比[HR(95%CI)]を推定した。
また、IBFとインスリン抵抗性の有無による2型糖尿病発症のPAF(人口寄与割合)を算出した。
結果:
ベースラインにおける被験者の有病率は、「IBF(β細胞機能障害)」で5.4%、「インスリン抵抗性」で24.1%、「IBFとインスリン抵抗性の併発」で9.5%であった。
フォローアップ期間中に、272例が2型糖尿病を発症した。
健常被験者(IBF、インスリン抵抗性がない)と比較した、2型糖尿病発症の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
IBF(β細胞機能障害):6.3(4.3-9.2)
インスリン抵抗性:1.9(1.3-2.7)
IBFとインスリン抵抗性の併発:8.0(5.7-11.4)
となった。
健常被験者(IBF、インスリン抵抗性がない)と比較した、2型糖尿病発症のPAF(人口寄与割合)は、それぞれ、
IBF(β細胞機能障害):13.3(8.7-17.7)%
インスリン抵抗性:10.5(4.0-16.6)%
IBFとインスリン抵抗性の併発:29.3(23.0-35.1)%
となった。
次に、BMI <25.0 kg/m2における、健常被験者(IBF、インスリン抵抗性がない)と比較した、2型糖尿病発症の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
IBF(β細胞機能障害):6.5 (4.3-10.0)
インスリン抵抗性:1.8 (1.2-2.9)
IBFとインスリン抵抗性の併発:7.91(5.1-12.3)
となった。
BMI≧25.0 kg/m2における、健常被験者(IBF、インスリン抵抗性がない)と比較した、2型糖尿病発症の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
IBF(β細胞機能障害):7.3 (2.8-19.1)
インスリン抵抗性:2.3 (1.0-5.0)
IBFとインスリン抵抗性の併発:9.3 (4.4-19.8)
となった。
また、BMI <25.0 kg/m2における、健常被験者(IBF、インスリン抵抗性がない)と比較した、PAF(人口寄与割合)は、それぞれ、
IBF(β細胞機能障害):17.2 (10.6-23.4)%
インスリン抵抗性:8.2 (1.1-14.8)%
IBFとインスリン抵抗性の併発:17.8 (11.2-23.9)%
となった。
また、BMI ≧25.0 kg/m2における、健常被験者(IBF、インスリン抵抗性がない)と比較した、PAF(人口寄与割合)は、それぞれ、
IBF(β細胞機能障害):7.4 (1.7-12.7)%
インスリン抵抗性:16.5 (1.8-28.9)%
IBFとインスリン抵抗性の併発:48.4 (35.7-58.7)%
となった。
Diabetologia. 2021 Aug;64(8):1775-1784.
結論:
久山町研究において、IBF(β細胞機能障害)とインスリン抵抗性を併発することは、新規2型糖尿病の発症に大きく寄与することが示された。
【参考情報】
膵β細胞保護の観点からみたSGLT2阻害薬の有用性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/59/9/59_635/_pdf/-char/ja
SGLT2阻害薬:インスリン抵抗性改善の観点からの有用性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/59/9/59_638/_pdf/-char/ja