COVID-19の臨床的特徴と転帰に対する心血管疾患の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32536672/ 

タイトル:Impact of Cardiovascular Disease on Clinical Characteristics and Outcomes of Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)

<概要(意訳)>

背景:

心血管疾患(CVD)がグローバルパンデミックのCOVID-19に及ぼす影響を調査する為に、中国武漢市におけるCOVID-19患者のPCR検査データを分析した。

方法:

COVID-19患者の検査データは、医療記録から抽出した。

結果:

2020年2月15日~3月14日の間に、武漢の病院に入院した連続82例のCOVID-19患者の内、診断と医療記録が不完全な20例を除き、62例が調査対象となった。

全体におけるCOVID-19の重症度は、「非重症38例(61.3%)、重症24例(38.7%)」であった。

全体におけるCVD合併の有無は、「CVD合併33例(53.2%)、非CVD29例(46.8%)」であった。

「非重症38例」の内、「CVD合併16例(25.8%)、非CVD22例(35.5%)」であった。

「重症24例」の内、「CVD合併17例(27.4%)、非CVD7例(11.3%)」であった。

「重症割合」は、「非CVD24.1%(17/33例)」と比較して、「CVD合併51.5% (7/29例)」の方が、有意に高かった(p=0.027)。

全体における年齢の中央値は、66.0歳であった。

「非重症」グループ間では、「非CVD(58.0歳)」と比較して、「CVD合併(66.0歳)」の年齢が有意に高かった(p=0.031)が、「重症」グループ間では、年齢の差はなかった。

全体の56.5%(35人)は女性で、CVD合併は33.9%(11人)であった。

最も一般的な症状は、発熱(74.2%)と咳(46.8%)であった。

「非重症」グループ間では、「非CVD(56.2%)」と比較して、「CVD合併(95.5%)」の発熱率が有意に高かった(p=0.005)。

全体におけるCVDの内訳は、高血圧(38.7%)、糖尿病(21.0%)、冠動脈疾患(11.3%)が一般的であった。

「重症」グループでは、「非CVD(0%)」と比較して、「CVD合併(58.8%)」の糖尿病合併率が有意に高かった(p=0.019)。

「CVD合併」における、ACE阻害剤/ARBの服薬率は、「非重症」と「重症」の間に差はなかった(p=0.227)。

Circ J 2020; 84: 1277-1283

有意な差が認められた「重症/非重症」の「CVD合併有無」における入院時の検査データは、下記4項目であった。

「重症」グループでは、「非CVD(32.9))」と比較して、「CVD合併(36.4)」のヘマトクリット(HCT)%が有意に高かった(p=0.007)。

「非重症」グループでは、「非CVD(3.9)」と比較して、「CVD合併(4.5)」の尿素窒素(BUN)mmol/Lが有意に高かった(p=0.016)。

「非重症」グループでは、「非CVD(1.3)」と比較して、「CVD合併(1.4)」のHDL-C mmol/Lが有意に高かった(p=0.044)。

「非重症」グループでは、「非CVD(13.7)」と比較して、「CVD合併(12.9)」のプロトロンビン時間(PT)秒が有意に短かった(p=0.012)。

有意な差が認められた「重症」と「非重症」のグループ間における入院時の検査データは、下記9項目であった。

リンパ球数は、「重症」と比較して、「非重症」の方が有意に高かった(p=0.046)。

高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI) ng/Lは、「非重症」と比較して、「重症」の方が有意に高かった(p=0.002)。

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST )U/Lは、「非重症」と比較して、「重症」の方が有意に高かった(p=0.028)。

クレアチニンμmol/Lは、「非重症」と比較して、「重症」の方が有意に高かった(p=0.025)。

HDL-C mmol/Lは、「非重症」と比較して、「重症」の方が有意に低かった(p=0.042)。

IL-6 pg/mLは、「非重症」と比較して、「重症」の方が有意に高かった(p=0.003)。

CRP mg/Lは、「非重症」と比較して、「重症」の方が有意に高かった(p=0.028)。

プロトロンビン時間(PT)秒は、「非重症」と比較して、「重症」の方が有意に高かった(p=0.032)。

D-ダイマーmg/Lは、「非重症」と比較して、「重症」の方が有意に高かった(p=0.010)。

Circ J 2020; 84: 1277-1283

CVD合併COVID-19患者の内、27例(81.8%)は回復し退院となったが、6例(18.2%)は入院継続となり、2例は(3.2%)は気管挿管と人工呼吸の処置を行った。

CVD合併COVID-19患者の臨床転帰(退院vs 入院継続)で、有意な差が認められた検査データは、高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI) ng/L(2.4 vs 9.0)であった(p=0.047)。

Circ J 2020; 84: 1277-1283

結論:

CVD(心血管疾患)を合併するCOVID-19患者は、重症化するリスクが高いことが示された。

とくに、高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI) ng/Lが高値となった心筋障害は、COVID-19患者の予後を悪化させる可能性がある。

【参考情報】

高感度心筋トロポニンI 基準値

http://www.falco.co.jp/rinsyo/detail/067407.html

D-ダイマー 基準値

http://uwb01.bml.co.jp/kensa/search/detail/3803153

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