CKD合併糖尿病患者に対する新規抗糖尿病薬の心腎保護(AHA科学的ステートメント)



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32981345/

タイトル:Cardiorenal Protection With the Newer Antidiabetic Agents in Patients With Diabetes and Chronic Kidney Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association

<概要(意訳)>

“心腎イベントハイリスクのCKD合併糖尿病患者における学際的ケアモデル”

1)腎イベントリスクの高いT2D患者を特定する

・eGFRとアルブミン尿の測定

・個々のリスクスコアを考慮する

 Heart failure risk stratification(Circulation. 2019; 140: 1569–1577.) 

 the WATCH-DM Risk Score(Diabetes Care. 2019; 42: 2298–2306.)

・レニン・アンジオテンシン系阻害薬の使用有無

 

2)SGLT2阻害薬(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン)を選択する

補足:現時点では、重度のCKD(透析を除くステージ4と5 )に対するGLP-1 受容体作動薬の安全性と有効性を考慮して、CKDの初期段階ではSGLT2阻害薬を優先的に使用し、重度のCKD(eGFR30未満)の段階でGLP-1 受容体作動薬に移行する層別アプローチを検討する。 ただし、進行中であるSGLT2阻害薬の腎アウトカムRCTの結果により、治療法が変更となる可能性も十分にありうる。

 

3)併用薬の調整

・収縮期血圧が平均2-4mmHg低下することを考慮する

・うっ血の兆候/症状を注意深く観察しながら、利尿薬の減量を検討する

・とくに、インスリンとSU薬の併用時は低血糖に注意する

補足:EMPA-REG試験の事後分析では、低血糖は、HF(心不全)とMI(心筋梗塞)のリスク上昇と関連していた。

ただし、エンパグリフロジンは低血糖のリスクを増加させず、心血管系のベネフィットは低血糖の有無によって減弱しなかった。

今後は、SGLT2阻害薬の開始に伴う低血糖リスクが高い患者を特定するための研究が必要だろう。

 

4)患者カウンセリング

・SGLT2阻害薬の正常血糖ケトアシドーシスのリスクと症状を説明し、シックデイ、手術の際は投与を中断する

・過度な飲酒とケトン食療法を避ける

・体液量減少と起立性低血圧に注意する

・会陰部の衛生と定期的なフットケアを奨励する

 

5)フォローアップ

・学際的なコミュニケーションを図る

・定期的に腎機能を測定し、場合によって用量調節する

・有害事象とアドヒアランスを確認する

Circulation.2020 Sep 28; CIR0000000000000920

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