抗凝固療法施行心房細動患者の危険因子が血栓イベントに与える影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32817313/

タイトル:Residual risks of ischaemic stroke and systemic embolism among atrial fibrillation patients with anticoagulation: large-scale real-world data (F-CREATE project)

<概要(意訳)>

背景:

心房細動患者では、効果的に抗凝固療法を行っても、虚血性脳卒中(IS)および全身性塞栓症(SE)のリスクを完全に抑制することは難しい。

本研究では、日本の大規模な実臨床データを使用して、経口抗凝固薬を服用している心房細動患者の修正可能な危険因子におけるIS/SEの残存リスクを調査した。

方法:

2005年1月~2017年6月の間に、保険会社に集積された健康診断と保険金請求データを後ろ向きに分析した。

この研究期間中に、経口抗凝固薬を服用していた心房細動患者は、11,848例であった。

修正可能な危険因子は、「高血圧、糖尿病、脂質異常症」とした。

Cox比例ハザードモデルを使用して、IS/SEリスクに対する各危険因子(性別、年齢、うっ血性心不全、高血圧、糖尿病、脳卒中、血管疾患、脂質異常症)の影響(調整ハザード比)を検討した。

結果:

平均3年の追跡期間中に、200例の虚血性脳卒中(IS)および全身性塞栓症(SE)が発生した(0.57人/100人年)。

 

多変量解析における各危険因子のIS/SEリスクに対する調整ハザードは、それぞれ、

性別:HR 1.20(0.85-1.69)、p=0.300

年齢:HR 2.02(1.49-2.73)、p<0.001

うっ血性心不全:HR 1.22(0.91-1.64)、p=0.192

高血圧:HR 1.41(1.04-1.92)、p=0.027

糖尿病:HR 1.08(0.70-1.67)、p=0.741

脳卒中:HR 1.26(0.96-1.64)、p=0.093

血管疾患:HR 0.82(0.48-1.38)、p=0.446

脂質異常症:HR 1.46(1.07-1.98)、p=0.016

となり、修正可能な危険因子における「高血圧、脂質異常症」、高齢者(65-74歳 vs 65歳未満)が有意なIS/SEリスクであることが示された。

 

抗凝固療法を受けている患者をワルファリンとDOACに分けて、各危険因子のIS/SEリスクに対する調整ハザードを算出したが、交互作用が認められず、全体と同様の結果が示された。

Heart. 2021 Feb;107(3):217-222.

また、修正可能な危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症)のIS/SEリスクに対する集団寄与危険割合(PAF)は、30.0%(95%CI 16.1-41.6)であった。

危険因子の高齢者(65-74歳)のPAFは、17.6%(95%CI 12.2-22.8)であった。

Heart. 2021 Feb;107(3):217-222.

結論: 

ワルファリンとDOACで抗凝固療法を受けている日本人心房細動患者の虚血性脳卒中(IS)および全身性塞栓症(SE)リスクの約3分の1は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの修正可能な危険因子が影響していることが示唆された。

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