PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32199751/
タイトル:Changes in characteristics and outcomes in Japanese patients with heart failure from the 2000s to the 2010s: The HIJ-HF cohorts
<概要(意訳)>
背景:
日本の心不全(HF)入院患者は、高齢者の人口増加に伴い、増加している。
2000年~2010年に入退院したHF患者の特徴と臨床転帰の変化を左室駆出率(LVEF)に基づいて調査した。
方法:
日本の心不全コホート研究であるHIJ-HF I(2001-2002年に入退院したコホート)とHIJ-HF II(2013–2014年に入退院したコホート)に登録された患者を本研究の対象とした。
左室駆出率により、LVEF <40%(HFrEF)、40〜49%(HFmrEF)、および≥50%(HFpEF)の3群に分けて調査した。
一次評価項目は、「全ての原因による死亡」、二次評価項目は、「心不全悪化による再入院」とした。
結果:
調査対象となった各人数は、HFrEF(EF<40%):n=1,248(HIJ-HFⅠ)、n=412(HIJ=HF2)、HFmrEF(EF 40~49%):n=587(HIJ-HFⅠ)、n=248(HIJ=HF2)、HFpEF(EF≧50%):n=973(HIJ-HFⅠ)、n=496(HIJ=HF2)であった。
HFrEFの割合は、「HIJ-HF Iの44%からHIJ-HF IIの36%に減少」し、HFpEFの割合は、「HIJ-HF Iの35%からHIJ-HF IIの43%に増加」し、HFmrEFの割合(21%)は不変であった。
年齢(中央値)は、HIJ-HFIからHIJ-HFⅡにかけて、HFmrEF(72歳vs 76歳)とHFpEF(72歳vs 80歳)群で有意に高くなり、HFmrEF(70歳vs 70歳)群では不変であった。
冠動脈疾患の割合は、HIJ-HF IからHIJ-HF IIにかけて、HFmrEF(33%vs 44%)とHFpEF(18%vs 25%)で有意に増加した。
また、腎機能障害(血清クレアチニン≧1.5 mg / dL)の割合も、HIJ-HF IからHIJ-HF IIにかけて、HFmrEF(25%vs 34%)とHFpEF(16%vs 28%)で有意に増加した。
弁膜症の割合は、HIJ-HF IからHIJ-HF IIにかけて、HFrEF(11%vs 18%)とHFmrEF(22%vs 29%)で有意に増加した。
治療薬の変化に関しては、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ベータ遮断薬、スタチン、アミオダロン、エリスロポエチンの使用頻度は増加し、硝酸薬とジゴキシンの使用頻度は、HIJ-HF IからHIJ-HF IIにかけて、3群間で共通して有意に減少していた。
各コホートの追跡期間は、HIJ-HF I:37 [27–46]ヶ月、HIJ-HF II:20 [5–25]ヶ月であった。
年齢、性別、NYHA分類、心房細動、心室細動、高血圧、糖尿病、脂質異常症、腎機能障害で調整した、カプランマイヤー生存曲線では、全ての心不全サブグループのHIJ-HF IとHIJ-HF IIにおける「全ての原因による死亡」で有意な差はなかった。
競合リスクモデルに基づく生存時間解析では、全ての心不全サブグループのHIJ-HF IとHIJ-HF IIにおける「心臓死」で有意な差はなかったが、HFrEF(p=0.001)とHFpEF(p=0.031)群で「心不全悪化による再入院」は有意に減少していた。
多変量回帰分析は、HFの悪化による再入院の発生率がHIJ-HF IIの患者の方が、LVEFグループによる有意な相互作用のないHIJ-HF Iの患者よりも有意に低いことを示しました。
結論:
本研究において、2000年から2010年に入退院した心不全患者では、HFpEFの割合が増加し、年齢層が高くなっていた。
また、ガイドラインで推奨されている薬物療法の頻度は増加していたが、生存率は全ての心不全サブグループで有意な改善は示さず、心不全悪化による再入院は減少していた。
【参考情報】
生存時間解析における競合リスクモデルの総説