PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32980921/
タイトル:Reverse J-shaped relationship between body mass index and in-hospital mortality of patients hospitalized for heart failure in Japan
<概要(意訳)>
目的:
いくつかのエビデンスでは、心不全(HF)患者の転帰とBMI(ボディマス指数)は逆相関がある、つまり、肥満パラドックス(BMIが高い方が予後は良い)が示されている。
しかしながら、日本におけるHF患者の転帰とBMIとの関係はよく分かっていない。
本研究では、日本における「HFで入院した患者の院内死亡率とBMIとの関係」、および「入院時のBMIが入院したHF患者のリスク層別化に有効かどうか」を調査することを目的とした。
方法:
2010年1月から2018年3月の間にHFで入院した407,722例の患者(20歳以上、NYHA≧Ⅱ度)を全国の入院患者データベースを使用して調査した。
BMI<12.5 kg/m2またはBMI>60 kg/m2の患者は除外した。
HF患者は、BMI(kg/m2)カテゴリーにより、
低体重(BMI<18.5)の患者66,342例(16.3%)、
正常(18.5-24.9)の患者240,801例(59.1%)、
前肥満(25.0-29.9)の患者76,954例(18.9%)、
肥満(≥30.0)の患者23,625例(5.8%)の4つに分類した。
結果:
前肥満(平均77歳)および肥満(平均68歳)の患者は、より若く、男性(57-61%)の割合が高かった。
心不全の重症度は、低体重(NYHA Ⅳ度 35.8%)の患者でより高かった。
一般化推定方程式に適合した多変量ロジスティック回帰分析により、
低体重(BMI<18.5)の患者は、正常体重(18.5-24.9)の患者と比較して、院内死亡率が有意に高いことが示された[オッズ比1.50(95%CI 1.45-1.55)、p<0.001]。
一方で、前肥満(25.0-29.9)の患者[オッズ比0.80(95%CI 0.77-0.83)、p<0.001]と肥満(≥30.0)の患者[オッズ比0.90(95%CI 0.84-0.97)、p=0.007は、正常体重の患者と比較して、院内死亡率が有意に低いことが示された。
Heart Vessels. 2021 Mar;36(3):383-392.
制限付き3次スプラインでは、BMIと院内死亡率の間に逆J字型の関係を示し、スプラインの下限はBMI 26 kg/m2前後となった。
BMI 25 kg/m2の患者と比較した、院内死亡率のオッズ比[OR(95%CI)]はそれぞれ、
BMI 18.5 kg/m2:1.57 (1.52–1.62)
BMI 22 kg/m2:1.15 (1.11–1.18)
BMI 30 kg/m2:1.05 (1.01–1.08)
となり、BMIが12.5から25にかけて「院内死亡率のオッズ比」は「低下」、BMI 25-29は「プラトー」、BMI 30を超えると「上昇」することが示された。
この逆J字型の関係は、年齢別(70歳未満/以上)のサブ解析においても同様の結果が示された。
Heart Vessels. 2021 Mar;36(3):383-392.
結論:
日本における心不全で入院した患者の院内死亡率は、正常体重の患者と比較して、低体重の患者でより高く、前肥満および肥満の患者でより低いことが示された。
さらに、制限付き3次スプラインでは、BMIと院内死亡率の間に逆J字型の関係が示された。
我々の調査結果は、BMIによる心不全で入院した患者のリスク層別化に有益であろう。