日本人における心房細動発症のリスク予測モデル



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33627542/ 

タイトル:Risk Prediction Model for Incident Atrial Fibrillation in a General Japanese Population – The Hisayama Study

<概要(意訳)>

背景:

心房細動(AF)リスクの予測は、AFとその合併症を予防するのに役に立つ。

本研究では、一般的な日本人集団からの前向き縦断的データ(久山町研究)を使用して、AF発症の新しいリスク予測モデルを開発した。

方法:

1988年から2012年の間に、AFの既往歴が無い40歳以上の合計2,442例が追跡調査された。

AFの発症は、健康診断での12誘導心電図と、診療所または病院での医療記録によって確認された。

AF発症のリスク予測モデルは、Cox比例ハザードモデルを使用して開発された。

結果:

追跡期間(中央値:24年、四分位範囲:15〜24年、46,422人/年)の間に、合計230件のAFが発症した。

その内訳は、95件が健康診断の12誘導心電図(ECG)により検出され、、135件が診療所または病院で診断された。

潜在的な危険因子からAFを発症するハザード比を年齢と性別で調整すると、「高齢、男性、収縮期と拡張期血圧の上昇、ウエスト周囲の拡大、eGFRの低下、異常な心雑音、ECGでのR波増高(左室肥大疑い)、AF以外の不整脈」は、AF発症のリスクと有意な関連が示された。

これらの危険因子は、Fully adjustedモデル(収縮期血圧とBMIと強く関連する拡張期血圧とBMIを除外)で調整しても、男性(p=0.12)とR波増高(p=0.18)を除く、「高齢、収縮期の上昇、ウエスト周囲の拡大、eGFRの低下、異常な心雑音、AF以外の不整脈」は、AF発症のリスクが有意なままであった。

また、男性と女性の間で、これらの危険因子に不均一性が認められなかったため、男女合同のAF発症のリスク予測モデルを開発することにした。

AF発症のリスク予測モデルの予測因子として、「年齢(参照:40-49歳)、性別(参照:女性)、収縮期血圧(参照:<120mmHg)、ウエスト周囲(参照:男性<85、女性<90cm)、eGFR(参照:≧60)、異常な心雑音(参照:−)、R波増高(参照:−)、AF以外の不整脈(参照:−)」の8つの変数が選択された。

予測因子の各スコアは、「年齢:40-49歳(0点)、50-59歳(4点)、60-69歳(8点)、70-79歳(14点)、80歳≧(14点)」、「性別:女性(0点)、男性(3点)」、「収縮期血圧:120<(0点)、120-129(1点)、130-139(2点)、140-159(2点)、160-179(4点)、180≧(5点)」、「ウエスト周囲径:男性<85、女性<90cm(0点)、男性≧85、女性≧90cm(2点)」、

「eGFR:≧60(0点)、45-59(2点)、45<(7点)」、「異常な心雑音:なし(0点)、あり(4点)」、「R波増高:なし(0点)、あり(2点)」、「AF以外の不整脈:なし(0点)、あり(4点)」となった。

10年後のAF発症のリスク予測モデルの妥当性は、C統計量とGreenwood-Nam-D’Agostinoχ2検定によって評価した。

C統計量は、0.785(95%CI 0.731–0.840)と優れた識別能力を持っていた。

Greenwood-Nam-D’Agostino検定によって、良好なキャリブレーションが統計的に確認された(χ2=1.27、自由度=4、p=0.87)。

この予測モデルの合計スコアは、0~41点であり、10年後のAF発症リスクは「0点:0.319%、10点:1.639%、20点:8.189%、30点:35.698%、41点:93.210%」となり、漸増的な増加を示した。

Circ J. 2021 Feb 23. doi: 10.1253/circj. CJ-20-0794.

結論:

久山町研究データ(1988年~2012年)から得られた、心房細動発症の新しいリスク予測モデルは、一般的な日本人集団の将来(5年後、10年後)における個々のAF発症リスク評価で良好なパフォーマンスを示した。

このモデルには、一般的に使用される臨床パラメータが含まれているため、AF関連の合併症リスクの減少など、AFを注意深く評価するのに役立つだろう。

 

【参考情報】

心電図の読み方

https://www.miyake-naika.or.jp/05_health/shindenzu/shindenzu_03.html 

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