2型糖尿病における血糖降下薬治療の中止率に対する運動量の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32007295/ 

タイトル:Dose-Response Effects of Exercise on Glucose-Lowering Medications for Type 2 Diabetes: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial

<概要(意訳)>

目的:

2型糖尿病患者の「運動量と血糖降下薬治療の中止率」に相関関係があるかどうかを調査する。

方法:

我々が研究した「2型糖尿病患者の血糖コントロールに対する強化ライフスタイル介入の影響(2015年4月29日~2016年8月17日)」データの2次分析を行った。

インスリン非依存性の2型糖尿病患者は、強化ライフスタイル介入(U-TURN)群と標準治療群に無作為に割り付けられた。

両群ともに、ライフスタイルのアドバイスとガイドラインに準じた医療行為を受けた。

さらに、強化ライフスタイル介入群は、運動時の監視モニタリングと食事カウンセリングを受けた。

無作為に割り付けられた98例の被験者の内、92例(U-TURN群:61例、標準治療群:31例)が分析対象となった。

U-TURN群の被験者は、12ヶ月の間に完了した運動の累積量に基づいて、三分位[下位群:21例、中位群:20例、上位群:20例]に層別化された。

主要評価項目は、「血糖降下薬を中止した割合(%)」とした。

副次評価項目は、「HbA1c(%)の変化、血糖降下薬を減量した割合(%)、血糖降下薬を強化した割合(%)」とした。

結果:

ベースラインの標準治療(31例)群と強化ライフスタイル介入(下位群:21例、中位群:20例、上位群:20例)群における、平均年齢、罹病期間(中央値)、平均HbA1cは、それぞれ、

標準治療群:56.8±8.3歳、6.0[3.0-9.0]年、6.7±0.9%

U-TURN下位群:52.3±8.5歳、4.0[4.0-6.0]年、6.5±0.66%

U-TURN中位群:53.7±10.1歳、4.5[2.0-7.3]年、6.7±0.97%

U-TURN上位群:53.8±8.9歳、4.5[2.8-7.3]年、6.8±0.86% であった。

Mayo Clin Proc. 2020 Mar; 95(3):488-503

強化ライフスタイル介入(下位群:21例、中位群:20例、上位群:20例)群における、

12ヶ月の間に完了した運動累積量の中央値は、それぞれ、

U-TURN下位群:178[IQR:121-213]分/週

U-TURN中位群:296[IQR:261-310]分/週

U-TURN上位群:380[IQR:355-446]分/週 であった。

Mayo Clin Proc. 2020 Mar; 95(3):488-503

主要評価項目の「血糖降下薬を中止した割合(%)」は、それぞれ、

標準治療群:16%(5/31人)

U-TURN下位群:48%(10/21人)

U-TURN中位群:60%(12/20人)

U-TURN上位群:70%(14/20人)となり、累積運動量の増加に伴い、血糖降下薬の中止割合が増加した(交互p=0.003)。

また、標準治療群と比較した、U-TURN各群のオッズ比は、それぞれ、

U-TURN下位群:OR 12.1 (1.2-11.9)、p=0 .03

U-TURN中位群:OR 30.2 (2.9-318.5) 、p=0.005

U-TURN上位群:OR 34.4 (4.1-290.1)、p=0.001 となった。

副次評価項目の「HbA1c(%)の変化」は、それぞれ、

標準治療群:0.15% (-0.2 ~0.5)

U-TURN下位群:-0.2% (-0.5~0.2)

U-TURN中位群:-0.6 %(-0.9~-0.3)

U-TURN上位群:-0.6 %(-0.8~-0.3) となり、U-TURN群で血糖降下が認められた(交互p=0.007)。

また、標準治療群と比較した、U-TURN各群の平均HbA1c低下は、それぞれ、

U-TURN下位群:-0.3 (-0.9~0.3) 、p=0.29

U-TURN中位群:-0.7 (-1.3~-0.1) 、p=0.02

U-TURN上位群:-0.7 (-1.2~-0.2) 、p=0.008 となった。

副次評価項目の「血糖降下薬を減量した割合(%)」は、それぞれ、

標準治療群:29%(9/31人)

U-TURN下位群:57%(12/21人)

U-TURN中位群:95%(19/20人)

U-TURN上位群:80%(16/20人)となり、累積運動量の増加に伴い、血糖降下薬の減量割合が増加した(交互p=0.003)。

また、標準治療群と比較した、U-TURN各群のオッズ比は、それぞれ、

U-TURN下位群:OR 3.7 (0.3-41.4) 、p=0.29

U-TURN中位群:OR 48.0 (2.5 -928.7) 、p=0.01

U-TURN上位群:OR 10.6 (1.2-91.5)、 p=0.03 となった。

副次評価項目の「血糖降下薬を強化した割合(%)」においては、4群間で差は認められなかった(交互p=0.15)。

Mayo Clin Proc. 2020 Mar; 95(3):488-503

また、その他評価項目である「食後血糖値、体脂肪、体重、BMI、最大酸素摂取量、トリグリセリド」等に対しても、強化ライフスタイル介入(U-TURN)群のリスク低下の相関が認められた(交互p<0.05、全て)。

結論:

罹病期間10年未満のインスリン非依存性2型糖尿病患者に対して、ライフスタイル(運動量)を強化することは、血糖降下薬治療の中止に関連していた。

また、食後血糖値、体脂肪、体重、BMI、最大酸素摂取量、トリグリセリド等の心血管リスク因子に対するリスク減少にも関連していた。

これらの知見を更に支持するための将来的な大規模臨床試験が必要だろう。

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