2型糖尿病における不整脈の新規発症リスクとSGLT2阻害薬の関連



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32503541/ 

タイトル:The association between SGLT2 inhibitors and new-onset arrhythmias: a nationwide population-based longitudinal cohort study

<概要(意訳)>

背景:

ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤の臨床試験では、心血管保護効果と心不全による入院リスクの減少が示されている。

しかしながら、SGLT2阻害薬と不整脈の発症リスクとの関連を調査した研究はない。

本研究では、SGLT2阻害薬が不整脈の新規発症(new-onset arrhythmias: NOA)と全ての原因による死亡(全死亡)に与える影響を評価(ITT解析)した。

方法:

本研究は、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)を使用して集団コホート研究を実施した。

2004年1月から2017年12月の間に、2型糖尿病を新規発症した20歳以上のSGLT2阻害薬服用患者(n= 79,150、服薬期間≧30日)を「罹病期間、性別、年齢、併存症、治療薬」の傾向スコアがマッチングする非SGLT2阻害薬服用患者(n= 79,150)を比較した。

評価項目は、「全死亡、不整脈の新規発症(NOA)」とした。

結果:

追跡期間の中央値(Q1-Q3、最大)は、9 (4–14、21)ヶ月であった。

「全死亡」は、合計で1,046件[SGLT2阻害薬服用群(380件) vs 非SGLT2阻害薬服用群(666件)]発生し、SGLT2阻害薬服用群の「全死亡リスク」は、非SGLT2阻害薬服用群より、有意に低いことが示された[調整ハザード比(aHR)0.547(95%CI 0.482–0.621)、p=0.0001]。

 

「(全ての)不整脈の新規発症」は、合計で1,579件[SGLT2阻害薬服用群(721件) vs 非SGLT2阻害薬服用群(858件)]発生し、SGLT2阻害薬服用群の「不整脈の新規発症リスク」は、非SGLT2阻害薬服用群より、有意に低いことが示された[調整ハザード比(aHR)0.830(95%CI 0.751–0.916)、p=0.0002]。

 

「心房細動の新規発症」は、合計で271件[SGLT2阻害薬服用群(125件) vs 非SGLT2阻害薬服用群(146件)]発生し、SGLT2阻害薬服用群の「心房細動の新規発症リスク」は、非SGLT2阻害薬服用群より、低い傾向が示された[調整ハザード比(aHR)0.841(95%CI 0.662–1.068)]。

 

「上室性不整脈の新規発症」は、合計で121件[SGLT2阻害薬服用群(54件) vs 非SGLT2阻害薬服用群(67件)]発生し、SGLT2阻害薬服用群の「上室性不整脈の新規発症リスク」は、非SGLT2阻害薬服用群より、低い傾向が示された[調整ハザード比(aHR)0.815(95%CI 0.570–1.167)]。

 

「心室性不整脈の新規発症」は、合計で91件[SGLT2阻害薬服用群(41件) vs 非SGLT2阻害薬服用群(50件)]発生し、SGLT2阻害薬服用群の「心室性不整脈の新規発症リスク」は、非SGLT2阻害薬服用群より、低い傾向が示された[調整ハザード比(aHR)0.797(95%CI 0.525–1.208)]。

Cardiovasc Diabetol. 2020 Jun 5; 19(1):73.

また、感度分析により、「60歳以上」と「60歳未満」における「全死亡リスク」と「不整脈の新規発症リスク」は、それぞれ、

60歳未満の全死亡リスク:HR 0.47 (95%CI 0.35 – 0.63)、p<0.001

60歳以上の全死亡リスク:HR 0.57 (95%CI 0.45 – 0.72)、p<0.001

60歳未満の不整脈新規発症リスク:HR 0.81 (95%CI 0.67 – 0.99)、p=0.042

60歳以上の不整脈新規発症リスク:HR 0.83 (95%CI 0.68–1.01)、p=0.061

となり、全体と一貫した結果が示された。

Cardiovasc Diabetol. 2020 Jun 5; 19(1):73.

結論:

実臨床において、SGLT2阻害薬を服用している2型糖尿病患者は、SGLT2阻害薬を服用していない2型糖尿病患者と比較して、全死亡と不整脈の新規発症リスクが低いことが示された。

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